Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

日本のサステナブルはそんなにダメなのか、鹿児島サーキュラーヴィレッジ大崎町の取り組み

 

 「天然資源の利用を最小限に」、「ごみという概念をなくすために資源化」、そんなことができれば、地球温暖化の抑制にも役立ち、サステナブルな世界に近づくのではないか、人それぞれに何かしらの動機があって、何か行動を起こしたりするのだろう。

 こうしたことにおいては、これが正解というような絶対的な定義はないのではなかろうか。そうであるなら、色々な取り組みがあってもよさそうものだ。

 しかし、なぜかいつも「日本の取り組みは.....」と卑下することが多くなる。

サステイナブルの本場オランダから残念な日本企業への提言

カーボンニュートラルな社会への転換が世界の共通課題となり、日本企業も転換を迫られている。すでに取り組みをはじめている企業も少なくないが、残念ながら「変革」よりも「対応」の色合いが濃く、「SDGsウォッシュ」と揶揄されることも多い。 (出所:NEWSPICKS)

 いささか聞き飽きたような気もする。本当にそうなのだろうか。確かに、ウォッシュと思われるケースも散見するが、それでも何かしらの貢献はあるのではなかろうか。

 

 

 鹿児島県の大隅半島に人口13,000人ほどの自治体、大崎町がある。そこでは、1998年からリサイクル活動を始めたという。その理由は、焼却処理場を持たず、出たごみは全て埋め立てにより最終処分をしていたことによる。

 1990年から始まった埋立処分場が、当初計画していたよりも多くのごみにより、予定されていた計画期間を待たずして埋立処分場が満杯になる恐れが出てきた。このことがきっかけで、大崎町では新たなごみの処分方法の検討をすることになったという。そして、選択したのが、ごみの減量化による既存の埋立処分場の延命化だったという。

1998年、ごみの分別・回収の取り組みは資源ごみ(缶・ビン・PET)の三品目からスタートします。その後徐々に分別品目を増やし、2001年から試験的に生ごみの回収を開始、2002年には民間の有機物堆肥化工場が稼働を開始し、2004年には有機物(生ごみ・草木)の埋め立てが全面禁止となります。そして、その後も細かい変更を重ね、現在では27品目に分別され回収されています。その結果、1998年と比較し2017年には約84パーセントの埋め立てごみを削減しています。(参考:大崎町)

osakini.org

 大崎町にあるリサイクルセンターでも、流行りのアップサイクルが取り入れられれば、もう少し注目度があがるのかもしれない。それでも、一時は、あと数年で満杯になると言われていた埋立処分場が今後50年は供用可能になったという。

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(資料:大崎町)

 そればかりでなく、分別回収されたごみはリサイクルされる際に再生可能な資源として業者に売却されることで、大崎町にはおよそ760万円の売却益をもたらし、町の事業に活用されているという(平成28年度)。

 不完全かもしれないが、立派なサーキュラーエコノミーなのではなかろうか。

 

 

 大崎町での経験はインドネシアでの廃棄物の減量化にも活かされているという。そして、現在ではインドネシアでの先駆けになったデポック市、バリ州に加えて人口1千万人に迫るジャカルタ州でも大崎町のリサイクルシステムの導入に関して、実証の取り組みが行われているそうだ。

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(資料:大崎町)

 大崎町は8月、Yahooの地域カーボンニュートラル促進プロジェクトにおいて、企業版ふるさと納税の寄附先に選定されたとそうだ。

Yahoo! JAPANによる本町への企業版ふるさと納税について|鹿児島県大崎町

 大崎町はこの寄附を活用し、「大崎システム」のCO2削減量の数値化及び他地域への展開可能なプログラム開発を行い、脱炭素化の促進を目指すという。そして、カーボンニュートラルを含むサーキュラーエコノミーの実現を通じて、大崎町民のより快適な暮らしの実現を目指し、また、今までになかった循環型社会を担う仕事や雇用を生み出すことを目的にしている。

 国内のこうした活動にもっと注目が集まってもいいのかもしれない。

 

【サステナブル 古い技術を活用】帆をはり風力を補助にする貨物船、パンタグラフを載せ走る電動トラック

 

 大航海時代、世界の海を帆船が埋め尽くしていたという。そんな時代へ回帰することになるのだろうか。

 K-Line 川崎汽船が、凧の力を推進力の補助に使った船で、2021年末をめどに欧州近海でトライアル航海を実施するという。

凧で船舶をけん引!川崎汽船が今年末にトライアル航海へ!川崎汽船が仏エアシーズと共同開発|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社

 ニュースイッチによれば、川崎汽船は仏エアシーズと共同で開発を進める自動カイトシステム「Seawing(シーウィング)」を、小型貨物専用フェリーに搭載するという。航路にもよるが、現状比20%以上の二酸化炭素削減効果が期待されるそうだ。

 

 

 商船三井大島造船所と「硬翼帆式風力推進装置」の開発を進め、2022年中に硬翼帆を1本実装した新造船の運航開始を目指しているそうだ。

ウインドチャレンジャーが設計基本承認を取得 ~温室効果ガス削減を狙い「帆」をもつ日本初の大型商船実現へ~ | 商船三井

 商船三井によれば、硬翼帆式風力推進装置とは、風力エネルギーを伸縮可能な硬翼帆によって推進力に変換して利用する装置だという。

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(画像:商船三井

 1本帆によるGHG削減効果は日本-豪州航路で約5%、日本-北米西岸航路で約8%を見込むが、将来的には複数の帆を実装し、他のGHG削減対策と組み合わせていくことも検討するという。

 

 

 1882年、ドイツで世界初のトロリーバスが540メートルの区間で走ったという。

トロリーバス」とは、道路上空に張られた架線から取った電気を動力として走るバスのことをいう。「トロリー」とは集電装置を指す。

 そのドイツで、トロリーバスを模してのことか、高速道路に架線を敷き、電気駆動のトラックへパンタグラフを通して給電し走らせるという。

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(画像:Continental

 JETROによれば、この「Eハイウエー技術」を開発したのは独シーメンス・モビリティー。これに自動車部品大手の独コンチネンタルが加わり、集電装置であるパンタグラフを共同で開発、製造するという。

走行中のトラックへ給電可能な道路の普及目指す(ドイツ) | ビジネス短信 - ジェトロ

 ドイツ連邦政府主導の専門家会議が、2030年までに高速道路の4,000キロに給電可能な架線の設置を推奨しているそうだ。

ドイツ国内の高速道路全長1万3,000キロのうち、交通量の多い4,000キロ区間で長距離トラック輸送に必要な燃料の約3分の2が消費されているためだという。交通・デジタルインフラ省の調査によると、ドイツの高速道路の基幹区間4,000キロを再生可能エネルギー由来の電気により電化した場合、CO2排出量を年間1,000万~1,200万トン削減できるという。 (出所:JETRO

 ドイツではトロリーバスがまだ都市交通として活躍しているという。架線を敷く手間と送電ロスもあっても、電動車に個別にバッテリーを搭載するより、効果が大きいのかもしれない。

 まして、バッテリー製造には多量のエネルギーを必要とし、またレアアースなどの資源が必要となる。

 

 

 様々な最新テクノロジーが開発され、SFのような世界のような未来がやって来るのではないかと想像していた。逆に、古き良き時代に回帰するような流れがあっても良さそうな気がする。案外その方が、燃料供給が不要になったり、回数が減るなどして、トータル的には効率的なのかもしれない。風の力など自然エネルギーの活用がもっとあってもいいのだろう。

 

スタバが環境保護団体と開発した新しい店舗の展開が拡大、来年には日本にも登場

 

 WMO 世界気象機関が、「2050年に世界で50億人以上の水の確保が困難になる恐れがある」との予測を発表したそうです。

2050年に50億人が水の確保困難に 世界気象機関 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News

 WMOの報告書によれば、地球上の水のうち使用可能な淡水はわずか0.5%で、過去20年間で地表水、地下水、雪や氷を含めて陸地に蓄えられている水の量が1年に1センチの割合で減少しているといいます。

 南極とグリーンランドが、最も多くの水を失い、人口の多い低緯度地域の多くでも、大幅に水が減っているそうです。

 AFPによれば、WMOのターラス事務局長が「気温の上昇は、世界的および地域的な降水量の変化をもたらし、降雨パターンや農耕期の変化にもつながり、食糧安全保障や人間の暮らし、健康に大きな影響を与える」と警告しているといいます。

 

 

 米スターバックスは2018年、WWF 世界自然保護基金と共同で、炭素排出量、水使用量、埋め立て廃棄物の削減を実現する「Greener Store Framework」を開発しました。

 米スタバによれば、このフレームワークを利用し、米国とカナダに2,300を超える「Greener Stores」が誕生し、2025年までに世界中で10,000の「Greener Stores」を新たに建築、または改装するという目標を立てているそうです。

 この計画の推進にあたり、北米以でも展開が始まるといいます。

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(画像:Starbucks

「Starbucks Greener Stores accelerate global movement towards a more sustainable future」(Starbucks) 

 北米で展開されている「Greener Stores」の店舗では、以前の店舗デザインと比較してエネルギー消費量を30%削減することができ、年間3万世帯以上の電力使用量に相当する電力を節電できるそうです。また、水に関しては様々なテクノロジーを利用することで、使用量を年間30%以上削減し、13億ガロン/年以上節水したといいます。その直営店の90%では、リサイクル、堆肥化、「Starbucks FoodShare」などで、廃棄物をごみとせず、循環利用しているそうです。  

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(画像:Starbucks

 いよいよ、この取り組みが北米以外でも始まり、その新しい「GreenerStores」が上海にできるそうです。特に循環性に重点を置いた店舗になるといいます。

 そして、この取り組みはさらに拡大し、来年には日本、英国、チリにもオープンするといいます。今から楽しみになります。

 

 

スタバのサプライチェーン グリーン化

 スターバックスのこうした取り組みは店舗ばかりでなく、サプライチェーンにも及んでいます。

ネットポジティブ」の活動においては、カーボンニュートラル グリーンコーヒーの実現を公約とし、そのグリーンコーヒー処理での水の使用量を2030年までに50%節約することを約束しています。また、コーヒーの焙煎においては、世界最大級のスターバックスのカーソンバレー焙煎工場と流通センター用に1メガワットの太陽光発電の設置を完了させたそうです。この太陽エネルギーは、焙煎工場と配送センターの電力のほぼ3分の1が提供できるといいます。

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(写真:Starbucks

 スタバは、何か画期的なアイデアや新しいテクノロジーを導入したわけではなく、今ある、そして、今できることを組合せ、「ネットポジティブ」という使命に向かって、行動を続けているようです。

 大切なことは、目新しいものに飛びつくのではなく、今あることを融合、調和させることだったり、地球温暖化の抑制に役立つ目標をやり遂げようという強い意志なのかもしれません。環境保護団体 WWF 世界自然保護基金との協働はその現れのような気がします。

 

エネルギー価格上昇に、供給網の問題、景気減速と物価上昇が同時に進む「スタグフレーション」なのか

 

 足元の経済が少し心配になります。昨日6日の日経平均株価は8営業日連続で下落し、円安に国債安のトリプル安になったといいます。

世界の物価上昇、秋にピーク 来年半ばにコロナ禍前水準に | ロイター

 IMF国際通貨基金が、世界経済見通しの一部を公表し、消費者物価の上昇が今秋にピークに達し、2022年半ばまでにコロナ禍前の水準に緩和するという見通しを示したといいます。それと同時に、供給不足に伴う物価上昇がより長期間持続し、インフレ期待を不安定化させるリスクが存在すると指摘したそうです。

先進国では秋に物価上昇率が3.6%に高まった後、来年中ばまでに2%近辺まで、新興国および途上国では6.8%に達した後、約4%にそれぞれ低下すると予想した。 (出所:ロイター)

 今まで日本経済は世界から切り離されていたかのように、物価上昇から無縁でしたが、こうした流れに巻き込まれることになるのでしょうか。コロナ渦からの回復期なだけに少々気になります。

 

 

 IMFのゲオルギエワ専務理事が講演で、アメリカや中国の景気回復が減速していると指摘、今年の世界経済全体の成長率の見通しをプラス6%から下方修正すると明らかにしたそうです。

「多くの国でインフレ率が急速に上昇している。世界の食料価格はこの1年で30%以上値上がりし、エネルギー価格の上昇も合わさって、貧困家庭の負担が重くなっている」と述べ、世界的な物価上昇に警鐘を鳴らしました。 (出所:NHK

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 NHKによれば、金融市場などでは、物価の急上昇について新型コロナの影響に伴う供給網の混乱がおさまれば次第に落ち着くという見方がある一方、景気の減速と物価の上昇が同時に進む「スタグフレーションの前兆ではないかという指摘も出ていて、物価上昇が長期化することへの警戒感が強まっているといいます。

今の時代のスタグフレーション

「これは世界的な問題だ」

 企業は「非常に複雑な供給網」の先行きがほとんど見えず、混乱は予想より大幅に長引く可能性があると指摘する。供給網の問題がさらに6~12カ月続くと同時に、雇用の安定が続くなかで消費者が欲しいものにお金を出そうとするなら、「スタグフレーションの微臭が悪臭のようになっていくかもしれない」という。 (出所:日本経済新聞

新型コロナ: [FT]混乱する供給網 近づくスタグフレーション: 日本経済新聞

 日本経済新聞によれば、米連邦準備理事会(FRB)と英イングランド銀行が先週、早期利上げの可能性を示唆したことで、ここ1週間半の債券相場の大きな下落に拍車がかかったといいます。しかし、年初の「リフレーション」トレードとは異なり、金融の引き締めに成長の加速が伴うとみる株高にはつながっていないそうです。

 エコノミストや投資家の予想などあてにならないかもしれませんが、懸念はあるのでしょう。

 世界が標榜したはずの「サスティナビリティ」の精神を取り戻し、消費が抑制されば、それで経済が安定するということないのでしょうか。

 

 

 明日、新首相が所信表明するそうです。新型コロナウイルスと共生する社会に変革し、「新しい資本主義」を実現する決意を表明するといいます。

コロナ共生社会へ変革、岸田首相 国民と対話も、所信表明原案判明 | 共同通信

 NHKによれば、「新型コロナという国難を国民と共に乗り越え、新しい時代を切り拓き、心豊かな日本を次世代に引き継ぐために全身全霊を捧げる」とし、「成長と分配の好循環」と、新型コロナとの共生が前提の新しい社会の開拓などにより、「新しい資本主義」を実現するとしているそうです。

 わかりやすく理解はでき、論理もありそうですが、新型コロナという一過性のものが、動機でいいのでしょうか。新型コロナが国難ではないという気はありませんが、地球温暖化の問題はもっと長くつきあわなければなりません。仮に新しい資本主義を目指すなら、長期の課題である気候変動やSDGs原発事故からの回復が起点になるのではないでしょうか。古い資本主義の問題はそういうところにあったのではないでしょうか。

 信念なのかもしれませんが、少々独善的に聞こえてしまいます。

 

航空業界に、資源大手、CO2排出が多い産業でカーボンニュートラル宣言が相次ぐ 

 

 世界の脱炭素は確実に前進しているのだろうか。COP26を前に、その動きが慌ただしいようだ。

 世界の大手資源企業28社が ICMM 国際金属・鉱業評議会で、2050年までに温室効果ガスの直接(スコープ1)・間接(スコープ2)の排出量を実質ゼロにする目標を掲げたという。

世界の資源大手、2050年までの温室効果ガス実質ゼロを表明 | ロイター

 ロイターによれば、ICMMは、「加盟企業の共同誓約は、われわれの歴史にとって重要な瞬間だ」と表明したそうだ。また、スコープ3(鉄鋼メーカーなど顧客の排出量)の目標は「2023年末でなくても、できる限り早急に設定する」としたという。

 脱炭素に後ろ向きと思われがちな業界が方向転換することは心強い。どれだけ前倒しできるか、そんなことにも期待が膨らむ。そのためには技術開発の継続とその実用化が求められる。

 

 

 IATA国際航空運送協会が、2050年までにカーボンニュートラル、温暖化ガスの排出量を実質ゼロとする目標を年次総会で採択したそうだ。

 石油由来の従来のジェット燃料から、バイオ原料などを使った持続可能な航空燃料(SAF)への切り替えを加速し、エネルギー業界や各国政府との連携も模索するという。

50年に温暖化ガス排出ゼロ、IATAが表明 環境燃料拡大: 日本経済新聞

IATAは50年に燃料全体に占めるSAFの割合を65%まで高める必要があるとのロードマップを示した。現状では2%にも満たない。SAFの生産量を現状の約4500倍に増やす必要がある。SAFの価格は現状でジェット燃料の4倍ほど高いが、「どこかの時点で従来燃料より安くならないといけない」。(出所:日本経済新聞

 国内でも、ユーグレナ社など数多くの企業がSAF事業に乗り出している。大規模設備が完成し、量産効果でコスト低減を図ることが可能と言われている。航空業界全体で、SAFへの切り替えに舵を切れば、設備投資への懸念はなくなり、事業化が加速するのだろうか。

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 ナショナル ジオグラフィックが、ランザテック社のSAFの技術を紹介する。

 中国の製鉄所から排出される、炭素をたっぷり含んだガスを燃料に変える技術を開発した。回収したガスにウサギの体内で発見された分解力の強い微生物を混ぜ、さらに水と栄養物を加えて発酵させるとエタノールが発生するという。 (出所:日経スタイル)

 

 

 航空機による気候変動への影響は大きいといわれる。

 ナショナル ジオグラフィックによれば、「1時間当たりの環境負荷で見ると、1人の人間による行為のなかで、飛行機に乗っていること以上に地球の健康を損ねるものは、ほとんどない」と、米航空宇宙局(NASA)の気候科学者ピーター・カルマス氏が述べているそうだ。

空の旅は変わるのか 脱炭素目指す航空技術の最前線|NIKKEI STYLE

 水素の活用や航空機の電動化に期待がかかる。しかし、SAFへの期待は大きい。

その理由は明快だ。航空機の寿命は20年から30年なので、現役の数千機はまだまだ空を飛び続ける。その動力源となるのは、こうした液体の航空燃料だからだ。 (出所:日経スタイル)

 しかし、SAFにも弱点はある。可食物をその原料にすれば、反感を買うことになりそうだ。SAFのために、食料が流用されるようではあまり意味がない。さらに食糧生産が必要になり、別の環境破壊の問題を引き起こしかねない。

 ミドリムシ、これまでは可食物とはみなされていない。このミドリムシで空を飛ぶといったのはユーグレナ社だった。

 ミドリムシを大量培養し、それをバイオ燃料の原料とする。その事業化のために、食品や化粧品にもミドリムシが利用され、その他にも肥料やプラスチックスの原料なども検討、研究されている。しかし、新しいことは一気に花開くことはない。

 ユーグレナ社1社で空の脱炭素の問題を解決することはできない。多くの企業が関心をもち、協力していかねばならない。そういう環境が整い始めていないだろうか。

 

急落する株価、近づくCOP26「気候変動枠組条約締約国会議」、不安を感じる新しい成長戦略

 

 政権が変わったというのに、株価が急落している。

 昨日の米国株式市場の流れもあるのだろうが、それにしても、開始早々900円近く値を下げているようだ。

 世界的なエネルギー不足が懸念され、原油先物の値が上がっている影響があるという。昨日の新首相の記者会見がもう少し違う内容であれば、影響を少しやわらげることはできなかっただろうか。これだけ値を下げたということは、まったく期待されていないことの現れなのかもしれない。

 前の政権がカーボンニュートラル宣言を行い、産業界が脱炭素に突き進み始めた。それもこれも気候変動対策への対応であり、世界的な潮流に従った国際協調路線であった。

 その流れにあって、総選挙が優先され、日程がだぶるCOP26(気候変動枠組条約締約国会議)など重要な国際会議の場にはオンライン出席になる予定だという。それでは、株価が何ら反応しないことも理解できない訳ではない。

 

 

 OECD経済協力開発機構が、G20(20カ国・地域)に対し、低炭素経済への移行でESG(環境・社会・企業統治)分野の格付けや投資が効果的に機能する体制を整えるため、さらなる対応が必要だとの報告書をまとめたという。

ESG格付け・投資に改善余地、OECDがG20に向け報告書 | ロイター

 ロイターによれば、今月のG20会合に先立ち公表された報告書には、国際的な気候目標を達成する上でESG投資は有効だが、「かなりの課題」を克服する必要があると指摘しているという。特にESGの問題を評価する手法が多岐にわたり、データが一貫性に欠け、格付け手法が比較可能ではない点が課題だとしているそうだ。

報告書は「ESGの格付け・投資に関連するこうした相反する動きと課題は、市場の一体性と投資家の信頼を損ね、投資の決断がどこまで環境・気候に影響を及ぼすのかが見えにくくなる恐れがある」と指摘。「長期的な価値と低炭素経済への移行を支える具体的な進展を実現する上で必要になる資本配分のペースと規模が、こうした課題によって最終的に抑制されかねない」と述べた。 (出所:ロイター)

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 OECDは、カーボンニュートラル(排出量実質ゼロ)に向けた道筋についての情報が「不十分」なことや、カーボンプライシングや再生可能エネルギーに関する政策が不明瞭なこと、また投資家が特定の気候目標に沿うポートフォリオを構築するための商品や測定手段が不足していることも、投資を妨げる要因になっていると指摘しているそうだ。

「全体としては、今の市場の分断を改善し、投資家の信頼と市場の一体性を強化する方向に、ESGと気候移行関連の慣行を前進させるには、国際協力の拡大が必要だ」と報告書は述べているとロイターが報じる。

 

 

 コロナ渦が少し落ち着き始めたと思えば、強すぎた経済回復でエネルギー不足が顕在化する。これから冬を迎えるというのに不安をおぼえる問題だ。

 政権が変わったのだから、新たな成長戦略も仕方ないのかもしれないが、独善的になるのも困りものような気がする。

新しい資本主義の実現

富める者と富まざる者、持てる者と持たざる者の分断を防ぎ、成長のみ、規制改革・構造改革のみではない経済を目指すための「成長と分配の好循環」と、デジタル化など新型コロナによってもたらされた社会変革の芽を大きく育て、「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとした、新しい資本主義を実現していく。

そのための第一歩として、成長戦略については、(1)科学技術立国、(2)デジタル田園都市国家構想、(3)経済安全保障、(4)人生100年時代の不安解消に向けた社会保障改革に取り組む。 (出所:首相官邸公式ページ

「新しい資本主義」という言葉は新鮮味があるのかもしないが、その中身がデジタル化では陳腐なものかもしれない。前に戻ってしまった印象すらある。

 今月8日は新首相の所信表明があるという。もう少し工夫が必要なのかもしれない。国際社会から置いてけぼりにされるのはもうこりごりだ。

 

【サステナをもう一度点検する】欧州での天然ガス高騰はグリーンリカバリーの躓きか

 

 イギリスが大混乱のようです。JIJI.COMによれば、キャベツなど野菜の収穫作業員の求人では時給が30ポンド(約4500円)に高騰しているといいます。タンクローリーの運転手が足りず、各地のガソリンスタンドで燃料不足によるパニック買いが起き、運搬の代行に政府が軍を出動させる事態に発展しているそうです。ブレグジットの後遺症に、コロナの影響で、英国が深刻な人手不足に陥っているといいます。

野菜収穫に時給4500円 軍が燃料運搬、人手不足深刻―英:時事ドットコム

一部地域では食品などの運搬に支障を来し、スーパーの棚が空っぽになった。食品加工業や農業でも労働者が不足し、中部ボストンでは野菜の収穫作業員に時給30ポンド、年収換算で6万2000ポンド(約930万円)が提示されたほどだ。 (出所:JIJI.COM)

 

 

 英政府はEU離脱の影響をかたくなに否定しているそうですが、たまらずビザの発給要件緩和に方針転換したといいます。

 ふと疑問に感じるのは、コロナ期間中には、こうした問題が生じていないであれば、やはりコロナ後の経済回復がトリガーになったということなのでしょうか。いちど収縮した経済に合わせた体制から、急激に物品が動くようになって、物流をはじめあちらこちらで人手で不足ということなのでしょうか。

 コロナ期間中に不足がなかったのであれば、急激な回復ではなく、もう少し回復がゆっくりであったなら、このような事態は避けられたのかもしれません。仮にそうであれば、コロナ前までは、ムダばかりで過剰消費だったような気がします。

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 英国を始め欧州で天然ガスが高騰しているそうです。朝日新聞によれば、新型コロナからの景気回復で、エネルギー需要が増加、それに加え、気候変動対策で、火力発電の燃料の比重を石炭から天然ガスに移してきたことも後押しているといいます。

欧州で天然ガス急騰 日本の電気料金への波及懸念強まる:朝日新聞デジタル

 一方、天然ガス供給元のロシアは、欧州各国との契約を履行しているそうですが、輸出量は2019年水準より低いといいます。経済が回復し在庫量が減り、これから冬に向かうということで、これまでの契約以上に天然ガスを買い増す必要が生じているのでしょうか。

 欧州がコロナ渦からの経済回復をグリーンリカバリーと称して、環境政策を強化しようとしたことが何か皮肉のようにも見えてしまいます。何事も思い描いた計画通りには進まないのかもしれません。計画に見合った心構えも必要ということなのでしょう。

 

 

 緊急事態宣言が解除され、また、新政権も誕生することで、経済回復に期待が膨らみます。この週末も、宣言解除を謳歌しようと多くの人出があったようです。しかし、欧州での混乱ぶりを垣間見ると、急激な回復はコロナ渦と違った混乱のもとになるのかもしれません。コロナ渦で苦しい思いをした人々を思えば、急ぎたくなるものですが、漸進、ゆっくりと、長く持続する回復のほうがよいのではないかと感じます。

 この10月から様々なモノとサービスの価格が値上がりになっています。また、11月からは、電気などのエネルギー価格も値上げになるといいます。急ぎ過ぎれば、こうした動きに拍車がかかるのかもしれません。日銀の物価目標2%に近づくのかもしれませんが、それで混乱するようでは困ったことになります。

 先行した欧米中が混乱して躓くなら、同じ轍を踏むことはないはずです。元々出遅れているなら、ゆっくりと経済回復いていくことを目指し、そのなかでミニマルとか、足るを知るようなサステナブルな素養、心構えを身につけていく方がよいのではないかと思います。