Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

ナイロンも植物由来に、ファッションはサステナブルになるのか

 

 植物由来の新たなナイロン繊維を東レが開発し、事業化を始めたという。植物のヒマのセバシン酸、トウモロコシのペンタメチレンジアミンを原料としているそうだ。

植物由来100%のナイロンが誕生 サステナブルなアウトドア向け素材を東レが開発

 Fashionsnap.comによれば、まだ原価は高く、3〜4割高で、「今後の生産量によってコストを抑えていきたい」と、東レが話しているという。サステナブルな素材として、アウトドア向けなどに提案していくそうだ。

石油から植物由来へ

 従来のナイロンなどの合成繊維は石油由来だった。資源枯渇や地球温暖化などの問題が指摘されるようになり、持続可能な原料への転換として、植物由来化が進められている。

 何の疑問もなく、いずれそうなっていくのだろうかと思ったものだが、いよいよ現実に始まると聞くと、原料、植物の確保問題が気がかりになる。

 

 

 よかれと思ったことが後々問題になることは常にあるものだ。バイオエタノール、パーム油、そうしたものがその好例ではないだろうか。

 地下深くから石油を採掘することも、地表に生える植物を利用することも資源の利用という意味においては同じことだ。厄介なことに植物利用は食糧問題に関連し、場合によっては森林問題にも影響している。植物自体はサステナブルかもしれないが、それを利用する産業が必ずしもサステナブルとは限らない。

衣服は捨てるものにあらず

 フランスでは2022年1月から、衣類や繊維、電子・電気機器など家電について、売れ残った製品をリサイクルや寄付によって処理することを義務付ける法律が施行となったそうだ。これは2020年2月に公布された循環経済に関する法律によるもので、過剰な生産、不適正な在庫管理による無駄な廃棄物の削減を目指し、循環経済:サーキュラーエコノミーを促すものだという。

世界初の「衣服廃棄禁止令」がアパレルに迫る変革 | お金が集まる・逃げるSDGs | お金が集まる・逃げるSDGs | 週刊東洋経済プラス

 東洋経済プラスによれば、アパレル大手のアダストリアは、フランスを皮切りに、世界的に同様の流れになると推測し、「各企業に一定のインパクトがあり、サステナビリティの観点からきちんと対応する姿勢が求められるようになる」と予測しているという。

 

 

売り切るアパレル

 実際、アダストリアは在庫の焼却処分を行わないことを決め、売れ残り品を減らすための活動を始めたという。

 在庫回転率の向上に最優先で取り組みはじめ、期末の在庫消化率が約95%となり、仕入れた製品の大半を1年以内に売り切れるようになったそうだ。

型番ごとの売れ行き動向を日々管理し、在庫が減らない商品は夏や冬のセールシーズンなどを待たずに値引きをかける。

動きが悪い商品の価格は早めに下げ、在庫水準に応じて商品別の値引率も早期に調整する。在庫をつねに軽い状態に保って過剰な生産も抑えることで、人気商品まで安売りする大規模なセールは減らし、業界では年始恒例の福袋販売も3年前に廃止した。(出所:東洋経済プラス)

 在庫品の廃棄を減らすため、商品をできる限り期中に売り切る仕組み作りが各社共通の課題となると東洋経済プラスは指摘する。

 

 

 作る側の努力と使う側の工夫で、ほんとうに捨てなければならないものを減らすことができればいいのだろう。長く着る、修理して着る、何か別なものに再利用する、アップサイクルする、そんなちょっとした工夫でモノは有効活用されていくものだ。

ファッションの未来

 一方、ファーストリテイリングが2022年から中途採用の年収を最大10億円に引き上げ、デジタル化やEC 電子商取引サプライチェーンに精通した人材を募集するそうだ。

ファストリ、中途人材に年収最大10億円 IT大手と競う: 日本経済新聞

「新たな価値を生んだり、事業を白紙から考えたりできる人」を求め、「ZARA」のような同業を競合とせずに、これからは衣服販売にも進出するアマゾンなどを競合と想定し、収益構造を変え、新たな事業モデルを構築を目指すとそうだ。

「どんなにデータを駆使しても、ファッションにおいて確実に売れるものを作るのは至難の業。その過程で生まれるブレや無駄が、ファッションにおける楽しみだ」と、とあるアパレル関係者の声を東洋経済プラスが紹介する。

 そんなことを楽しみにしていたファッション業界に変化があってもいいのだろう。いつまでも同じ価値観をおしつけるばかりでファッションといえるのだろうか。

 ファッションとは、流行りのスタイルや文化を意味する。自己を主張し、変化や新しさへの勇気を好む半面、慣習に従い、それを模倣することによって社会から逸脱することを避け、社会に順応しようとするという。

 

「参考文書」

植物から生まれた新たなナイロン繊維の開発、販売開始 ~100%植物由来のナイロン繊維「エコディア®N510」~ | ニュース一覧 | TORAY

非食品の売れ残り製品の廃棄禁止法案を準備(フランス) | ビジネス短信 - ジェトロ

【デジタルとSDGs】1次産業を人々が集う魅力ある職業にできないだろうか

 

 デジタル社会、炭素中立社会への変革を円滑に進めるためには、 スキル向上、再教育の充実、副業の活用といった人的投資の充実が鍵と首相が17日、施政方針演説で述べていました。

【全文】 岸田首相 初の施政方針演説 | NHKニュース

 気候変動問題への対応について、「新しい資本主義の実現」においても克服すべき最大の課題といっています。

 そして、2050年のカーボンニュートラルの目標実現に向け、単に、エネルギー供給構造の変革だけでなく、産業構造、国民の暮らし、地域の在り方全般にわたる、経済社会全体の大変革に取り組むといいます。

 しかし、まだその内容はエネルギー分野に偏っているとの印象を拭えませんでした。この先、「クリーンエネルギー戦略」をまとめ示すそうです。それによって日本の目指すべき方向が見えてくるのでしょうか。

 

 

デジタル田園都市国家構想とSDGs

「高齢化や過疎化などに直面する地方においてこそ、スマート農林水産業などにおいてもデジタルサービスを活用できるようにする」と首相はいいます。

5G基地局を信号機に併設するなど多様な手法で民間投資を促し、自動運転や、ダイナミックな交通管制、ドローンなど、未来のサービスを支えるインフラを整備します。

デジタルサービスの実装に向けて、規制・制度の見直しを進めます。

単なる規制緩和ではなく、新しいルールを作ることで、地域社会に新たなサービスを生み出し、日々の暮らしを豊かにすることを目指します。(出所:NHK

 これまでもデジタル、デジタルと何度も聞かされきました。そうは言いつつも、いつも分厚い規制に阻まれ、一向に進んだ印象がありません。どちらかといえば、既得権益保護しているようにさえ見えていました。

例えば、「運転者なし」の自動運転車、低速・小型の自動配送ロボットが公道を走る場合のルールや、ドローン、AIなどの活用を前提とした産業保安のルールを、新たに定めることで、安全を確保しながら、新サービス展開の道を拓きます。(出所:NHK

 どれもこれも必要なことかもしれません。必要に合わせて整備できればいいのでしょう。今さら、これらで世界を相手に競争するには出遅れているのですから。

 

 

 それよりは、SDGsウエディングケーキの底辺を為す、目標6,13,14、15、それに加え、目標2を対象に、優先的にデジタル化を進めてみてはどうでしょうか。

(資料:stockholm resilience centre)

 1次産業が魅力的な職場になれば、地方も活性化し、もしかしたら、生態系維持に役立ち、自然環境保全につながるかもしれません。

模索始まる持続可能な農業

 JIJI.comによれば、地球環境に優しい農業への転換が各地で始まっているそうです。政府は、2050年までに化学農薬の使用量を半減、化学肥料は30%減とする目標を掲げ、これに呼応するように、持続可能な農業の実現へデータやITを活用した効率化で環境負荷軽減に取り組む農家が増えてきたといいます。

動きだす「持続可能な農業」 データ活用し環境負荷軽減:時事ドットコム

地球温暖化で気温や湿度が上昇して病気や害虫の発生が増える中、「農薬や化学肥料を一切使わないのは非現実的」という。その上で、環境への負荷が大きい農薬や廃棄物をどこまで減らせるか。データ収集による効率化で、種苗や農薬の費用を平均の半分~3分の1まで縮小させた。(出所:JIJI.com)

 これ以外にも、ドローン利用による農薬散布でも農薬、肥料の削減の動きもあるそうです。農水省によれば、ドローンによる農薬散布⾯積は約12万haに達し、これまでの約6.5万haから約2倍に拡⼤しているといいます。ドローンによるピンポイントでの農薬散布を⾏うことで、動⼒散布機械に⽐べて散布量を30〜50%削減することができ、作業時間も 50〜75%削減できるまでになったといいます。

 

 

農業による気候変動対策「カバークロップ」

 米国では農務省の新たな保全プログラムが始まり、2030年までにカバークロップの作付け面積を3000万エーカーに倍増することを目指すそうです。

カバークロップは、作物を作らない期間に土壌侵食の防止などを目的に栽培される作物のことで、これにより土壌が改善するほか、炭素を吸収・貯蔵することができるといいます。

米、カバークロップ作付け面積倍増へ 気候変動対策で | ロイター

 ロイターによれば、農務省傘下の自然資源保全局(NRCS)が、3800万ドルを投じて11州で農家のカバークロップ作付けを支援するそうです。

 日本でも取り組むことができるかは不明ですが、こうしたことで農家の収入増にもつながればいいのでしょう。

「今年をスタートアップ創出元年とし、5か年計画を設定して、大規模なスタートアップの創出に取り組み、戦後の創業期に次ぐ、日本の「第2創業期」を実現する」と、首相が述べたそうです。都会だけが創業の地とならないよう、1次産業にもその門戸を開いたらどうでしょうか。

 

「関連文書」

アングル:米農家、炭素を吸収する「カバークロップ」に着目 | ロイター

 

プラスチックをなくせるか、東京湾にも堆積するマイクロプラスチック

 

 東京湾の海底に長い年月をかけ、マイクロプラスチックスが堆積しているといいます。

大きさは肉眼では見えない100 ~ 200μm(マイクロは100万分の1)が最多。個数は河口に近い方が多く、新しい地層ほど増える傾向にあった。(出所:東京新聞

 東京新聞によれば、東京農工大の高田教授の調査で明らかになったといいます。

東京湾の海底にプラごみの山 1964年東京五輪頃から堆積 魚介類や人への影響懸念:東京新聞 TOKYO Web

 材質は、レジ袋に使われるポリエチレン、菓子袋として利用が多いポリプロピレンとポリエチレンの複合素材、食品トレーなどのポリスチレンが多かったといいます。

 プラスチックスごみの多くが河川を経由して海へと流れ込み、それらがマイクロプラスチックとなり、堆積していったということでなのでしょうか。

 

 

海外の河川で始まるプラごみ回収プロジェクト

 プラごみ問題は世界においても同様で、世界各地の河川で、プラごみ回収の新しいプロジェクトが立ち上がり、プラスチックスが海に到達する前に収集することを目指していると、英ガーディアン紙が紹介しています。

Meet Mr Trash Wheel – and the other new devices that eat river plastic | Pollution | The Guardian

 非営利団体の「The Ocean Cleanup」が太平洋でプラごみ収集し、いくつかの河川においても同様に収集を続けています。この他にも、米国ボルチモアでは、「The Ocean Cleanup」が使用するごみ収集機に似た装置が稼働を始め、1日に17トンが収集されているといいます。ドイツ、英国、ポルトガル、様々な国で、色々な回収装置が開発され、稼働しているそうです。

f:id:dsupplying:20211126061724p:plain

(写真:The Ocean Cleanup)

 ただ、こうした装置を開発する関係者は、「私たちが直面する最大の課題の1つは、水路のプラスチック汚染に関する規制の欠如と、問題に対する所有権と責任の欠如です」といっているそうです。

「プラスチックはまだ正式に水質汚染物質と見なされていないため、河川におけるプラスチック汚染の問題を解決する緊急性は、先見の明のある政府にかかっている」と言っているともいいます。

 

 

 プラごみを回収する人が一方で、それより多くのプラごみが海洋に流出し続け、それが人知れず、どこかに堆積していく現実。

 日本では4月、プラスチック資源循環促進法が施行され、使い捨てスプーンなどのプラスチックスの削減が事業者に義務付けられるといいます。

「海のプラごみ汚染を改善する一歩にできるかは、消費者の行動にもかかっている」と東京新聞は言います。これだけで十分なのでしょうか。

 プラスチックスが発明され、その利便性から瞬く間に普及拡大しました。「プラスチックスの時代」といわれた時期があり、何から何までプラスチックスへの置き換えを進めた結果です。

 無くした方が良いことは理解できても、容易くプラスチックスのなかった時代に後戻りすることはできるのでしょうか。まさしく難しい問題です。

プラスチックスを分解する酵素

 IDEAS for GOODによれば、スウェーデンのチャルマース工科大学の研究者たちが2021年10月、プラスチック汚染が深刻な地域ほどプラスチックを分解する酵素の量が多く、その種類も多いことを発見したそうです。

プラスチックを食べる細菌、世界中で出現。ごみ問題の救世主となるか | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD

 それによれば、地中海や南太平洋などプラスチックス汚染が深刻な場所にほど、多くのプラスチック分解酵素が存在することがわかったといいます。

研究者たちはこの研究が、プラスチック汚染が微生物生態系に与える影響が測定可能であることを示す証拠になるとして、重要視している。また、この研究は、プラスチックが自然界で分解されるメカニズムに関する詳しい情報を提供したり、新しいプラスチック分解酵素を発見できる場所を示唆したりしている点において有用だという。(出所:IDEAS FOR GOOD)

 こうしたバイオテクノロジーの発展を待たないとプラスチックス問題の解決はないのでしょうか。

 

増える輸入材を利用したバイオマス発電、再エネ買い取りはほんとうに正しいのだろうか

 

 あちらこちらでバイオマス発電所が立ち上がっては、発電がはじまっているようである。東芝のグループ会社で、発電事業を行う九州のシグマパワー有明も1月11日、福岡県大牟田市で2基目のバイオマス発電所を稼働させたという。

f:id:dsupplying:20220116100906p:plain

(写真:東芝

 東芝によれば、この発電所の合計発電出力は44.2MWで、一般家庭約7万世帯分に相当する電気を供給できるという。この発電所でも燃料にはPKSヤシ殻が使用されるそうだ。

 バイオマス発電、光合成によりCO2を吸収して成長するバイオマス資源を燃料とした発電はこれまで取扱上、CO2を排出しないものとされ、再生可能エネルギーとみなされてきた。

 

 

 ここ最近、急激にバイオマス発電が伸長しているのではなかろうか。だだ、2023年頃になると、大規模な木質バイオマス発電所の新設が鈍るとの予測があるという。理由は、FIT制度(固定価格買い取り制度)の見直しによるという。

バイオマス発電の問題点

バイオマス白書2021」によれば、2023年度以降早期に、ある規模以上のバイオマス発電所を「FIP制度」のみ認めることを目指して調整が進んでいるそうだ。

バイオマス白書2021|トピックス|FITバイオマス発電をめぐる変化|1 FITバイオマス発電をめぐる制度の変更と課題

 これまでバイオマス発電は、FIT制度により2020年9月時点で、709カ所822万kWのバイオマス発電所が認定されてきたという。その上、その認定容量の9割弱が主に輸入バイオマスを燃料とする一般木材バイオマスの区分となっているそうだ。

一般木質バイオマス発電の認定量の半分に当たる370万kWの発電所が稼働した場合、約6.5兆円の国民負担が生じるが、輸入バイオマスであるため地域経済への恩恵は限られ、エネルギー自給とならない

さらに、天然林を伐採した全木ペレットなども含まれ、遠距離を輸送することから温暖化対策効果にも疑問が持たれている。(出所:「バイオマス白書2021」)

 「バイオマス白書2021」は、「土地利用転換を伴うバイオマスは、石炭以上の排出となる」ことを指摘、こうしたことなどから、「天然林を伐採した木材由来燃料はFIT対象としない」、「天然林を転換した植林地からの木材由来燃料についても、炭素ストックの減少や生物多様性の損失の観点から、FITでの支援対象から外すべき」という。

 その上で、FIT一般木質バイオマス発電(1万kW以)に関し、GHG基準が検討中であることをふまえ、開始期限を当面、延長する。未稼働の輸入燃料による木質バイオマス発電は、できるだけ稼働しないよう誘導すべきと提案する。

 

 

 ここ最近、バイオマス発電の稼働が増えるのは、こうしたバイオマス発電に対する規制強化の動きがあるためなのだろうか。

 規制強化の背景には何があったのだろうか。これまでの知見が不足していたということなのだろうか。それとも規制強化せざるを得ない、制度を悪用した燃料利用が増えたということであろうか。

林業の再生、早生樹資源の有効活用

 東京農工大学バイオマス発電所など使用する燃料に使う木材を従来より早く生産できる林業の実現を目指し、実証研究を始めたという。

早生樹資源の有効活用による「カーボンニュートラル社会と林業再生」実現(ジャパンインベストメントアドバイザー)

 戦後、造林されたスギやヒノキの人工林が主伐期を迎え、伐採後の再造林が課題となっているという。再造林の種別とし、成長速度が速い樹木である「早生樹」を利用した森林の造成が注目され始めているそうだ。春先の花粉症を思えば、それはそれでいいことなのかもしれない。

「早生樹」とは、「早く」「成長する」「樹種」の総称で、一般的には、スギやヒノキに比べて初期の樹高成長量や伐期までの材積成長量大きな樹種を指すそうだ。

10年から25年位の比較的短伐期での収穫が可能で、センダン・ユリノキ・チャンチンモドキ・コウヨウザン等の種類があります。(引用:近畿中国森林管理局

 ジャパンインベストメントアドバイザーによれば、この共同研究では、森林科学・木質バイオマス科学の観点から、早生樹を活用した「スギやヒノキ人工林伐採後の再造林手法」、「カーボンニュートラル等の脱炭素社会」の構築を目指すという。

 また、輸入のバイオマス燃料によらない、国産木質バイオマスエネルギーの安定供給、「脱炭素社会に貢献する新しい林業」の有り様を確立するという。

 

 

 カーボンニュートラルの実現のためには、再生可能エネルギーの普及は欠かせない。その目的とは裏腹に、制度を悪用し、効果も不確かなものが普及拡大することに危惧を感じる。

 バイオマス発電、確かな議論を進め、GHG温室効果ガス低減効果を検証し、SDGsに則り、燃料供給を含め、持続可能な産業にしていかなければならないのだろう。

 日本の国土の約7割を森林が覆っている。豊かな資源であると同時に豊かな自然でもある。その維持のためには、持続可能な林業も欠かせない。

 

「参考資料」

近畿中国森林管理局における早生樹造林の取組:近畿中国森林管理局

シグマパワー有明「大牟田第一・第二発電所」の運転開始 | 東芝エネルギーシステムズ株式会社

【社説】バイオマスエネに力を注ぐ専門商社 | 化学工業日報

今年度のバイオマス持続可能性WGの進め方 令和3年6月(資源エネルギー庁)

大企業が抱く淘汰される恐怖が、歪んだ社会を作っていないか

 

 成長と分配、その好循環で「新しい資本主義」を目指すのがこれからの日本なのだろうか。その実現を進める政権の看板政策について、日本経済新聞日立製作所など企業トップにインタビューした。

経財相×日立・三菱商事・DeNA 新しい資本主義で対談: 日本経済新聞

「企業の内部留保が積み上がっているのになぜ賃金を上げられないのか」

と問われた日立製作所の東原会長は「日立だけで言うと、今後5年先を見たときにグローバルで勝てないと淘汰されるという恐怖感がある」と答える。

 こうした経営者のマインドが賃上げへの障壁になってきたのだろうか。

 

 言いがかりのようにも聞こえるが、東原会長の言葉からすれば、これが現実で、トヨタを世界一から追い落とそうとし、その口実を探しているということなのかもしれない。

 山口氏が指摘する通り、国の政策の問題もあるのだろうが、国がみなが思う方向に変わることがあるのだろうか。仮に変われば、それですべての問題が解決に向かうのだろうか。

 

 

 そのトヨタ自動車の前身は、豊田自動織機。その中に自動車部が設立され、自動車づくりがはじまったことが後のトヨタ自動車となる。しかし、戦後のトヨタは人員整理をせざるを得ない苦しい状態にあったという。

大野耐一が作り上げたトヨタ生産方式には、2人の先人の叡智が生かされていた【前編】 | 経営トップの仕事 | ダイヤモンド・オンライン

 ダイヤモンドオンラインによれば、当時のトヨタの生産性はフォード、GMの1/8しかなかったそうだ。

「3年以内に追い付け。それが出来なければ、日本の自動車産業は成り立たない」という指示が豊田喜一郎氏から、トヨタ生産方式の生みの親 大野耐一氏に出たという。

トヨタ生産方式の原点は、自分の目で見ての「見える化」で、目で見て、自分が判断してやることだと言える。(出所:ダイヤモンドオンライン)

 これが今のトヨタの源流といってもいいのだろうか。

 一方、豊田自動織機は会社名の通り今も自動織機を作っているが、この他にも「トヨタL&F」のブランドで、フォークリフトや自動倉庫、無人搬送車の開発から販売まで、多岐にわたる事業を展開しているという。

 

 

 その豊田自動織機が自社工場で排出される二酸化炭素と水素を反応させるカーボンリサイクル技術の「メタネーション」の実証試験を始めるという。

 民間ベースでカーボンリサイクル技術の取り組みが進めば、工場における有力なガスの脱炭素化につながる可能性が高いとニュースイッチはいう。数年かけて規模を10―50倍に引き上げ、将来は全工場への技術導入を目指すそうだ。

ボイラで発生する排ガスから回収したCO2を利用する。当初は1時間当たり5キロワット時の熱量のメタンを生成してボイラで活用する。

高浜工場にはすでに太陽光発電による電力で水を電気分解して水素を生成する施設があり、この「グリーン水素」を使ってメタンを合成する。できたメタンは再度ボイラで利用する。工場から発生したCO2を燃料にして蒸気をつくり、それを工場に戻す形でのエネルギー循環を想定する。(出所:ニュースイッチ)

 ニュースイッチによれば、メタネーション実証は自社の低炭素化の動きを加速する目的に加えて、自社技術の応用範囲や、脱炭素に関連する一部技術の内製化の可能性を探る狙いもあるという。

 頼れない国もまた事業環境ということなのかもしれない。そうなれば、まずは自から問題解決を図るしなないのだろう。それが、これまでのトヨタの歴史なのだろう。

 シンプルに捉えれば、コアとなる経営手法が確立されていて、なおかつそれが実践され、顧客志向を徹底していく。

 ただ、まだトヨタにも力足らずのところもあるのだろう。トヨタのような企業があともう2~3社あれば、雰囲気は変わっていくのだろうか。

 

 

 余談だが、ファーストリテイリングの柳井社長も大野耐一氏の「トヨタ生産方式」を買って読み、学ばれたという。

 ただ熟読されたけれど、何が書いてあるのかよくわからなかったそうだ。その後、柳井社長は『トヨタ物語』という本を読んで、その内容が納得できたといいます。

ユニクロ柳井社長「僕がトヨタという"ベンチャー企業"から学んだこと」 自分なんてぜんぜん甘かった | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

確かに、生産でも販売でも、現場には文字にできない重要なことがいくつもあるんです。働く人間の意識、心構え、チームワーク。そういったものは文字にすることができないし、ビデオに撮ってもわからない。指導者が現場に行って、やって見せて、そして、自分の言葉で伝えなくてはならない。大野さんはそうやってトヨタ生産方式を伝えたのでしょう。(出所:プレジデント)

「この本は生産方式を解説する本ではない。ここに書いてあるのはトヨタの本質です」と柳井社長はいう。

 

鮮度もカーボンフットプリントも、農産物や魚の流通にそんなしくみはできないだろうか

 

「気候変動対応に遅れ、中小企業の大半がCO2排出量削減目標設けず」とNHKが報じています。

 それによると、中小企業の大半が二酸化炭素の排出量の削減目標を設けるなどの対応を取っていないことがりそなホールディングスの調査でわかったといいます。

中小企業の大半が気候変動対応に遅れ CO2排出量削減目標設けず | 脱炭素社会への動き | NHKニュース

気候変動対応を含む持続可能な開発目標=SDGsを取り入れた経営への課題を尋ねたところ、売り上げが50億円未満の企業の27%が「何をすべきか分からない」と答えたということです。(出所:NHK

大企業の間では、脱炭素などに向けた取り組みが進んでいるが、今回の調査で中小企業の対応の遅れが浮き彫りになったとNHKは指摘しています。

 

 

 一方、日本農業新聞がまとめた今年の農畜産物トレンド調査では、「持続可能性」が1位にあがり、環境に優しい取り組みが新たな商流をつくるといいます。

 また、「地産地消・国産志向」も急上昇し、昨年の圏外から6位に躍進したとそうです。商品価値を高められ、地域性のある国内産品への期待が集まるといいます。

22年農畜産物トレンド調査 「持続可能」へ移る商流 若者に訴求期待 「地産地消」も急伸 / 日本農業新聞

22年のキーワード(複数回答)は、今回新たに加えた「持続可能性」が49%で最多だった。

持続可能な開発目標(SDGs)、倫理的な消費行動(エシカル消費)などが浸透し、「環境など社会の課題を解決する商品が選ばれる」(乳業メーカー)と注目度が高く、若い人にも訴求できるテーマとみる。

「安さだけでは農産物の生産は続かない」(米穀店)と持続可能性のある取り組みで高付加価値化を探る業者もあった。(出所:日本農業新聞

 農畜産物がどんな地域で、どのようなこだわりを持って生産されたかの情報や物語性は武器になり、環境配慮の取り組みもアピール材料という。また、国内農家が消費ニーズをつかむには流通業者との協業が欠かせないと指摘、産地は流通業者との連携を高度化し、発信を強化すべきといいます。

 製造や流通、中食・外食といった各段階で価値を高め、国産が消費者に選ばれるようにしたいと、日本農業新聞のこの結果を解説しています。

 

 

 農業に限らず、物品を扱う産業においては流通が大きな役割を果たしています。流通が起点となって、SDGsや脱炭素の動きが活性化すれば、さらに広がりをみせることにならないでしょうか。

採れたての鮮度とカーボンフットプリント

 ANAホールディングスのグループ社員が、仲介業「日本産直空輸」を始め、新鮮な野菜や魚を各地の農家や漁師から直接仕入れ、旅客機で運んで、採れたての鮮度で首都圏のスーパーなどで販売するそうです。

ANAグループ社員提案制度により「株式会社日本産直空輸」が誕生|プレスリリース|ANAグループ企業情報

 ANAによれば、今回立ち上がった「産直空輸」では、従来の産地、卸売り、空輸、地上運送、小売り、消費者とつながる流通を、鮮度の価値を最重要視する流れに変革し、全体を一気通貫でコーディネートするといいます。

 旅客機貨物の空きスペースを活用し、既存の流通に乗らない少量生産の農産物、首都圏ではなかなか出回らない希少品や、地方に眠る逸品なども扱うことができるそうです。

f:id:dsupplying:20220113111153p:plain

(写真:ANAホールディングス

 1次産業の持つ真の価値を最終消費者まで届けるには、全体をトータルにコーディネートする事業が必要であり、今回の事業化によって、従来の一次産業を活性化して儲かるビジネスにすることにつながるとANAは指摘します。

 一次産品はついつい「鮮度」を価値とします。これからはそれだけではなく、「カーボンフットプリント(炭素の足跡)」も価値に加え、それを消費者に伝えていくことも大切なことにならないでしょうか。そうしたことがまた農家のモチベーションにつながるようなしくみ作りも求められているような気がします。

 

マングローブ林を大規模に効果的に保護再生する中国から学べることはあるか

 

 中国はまことに不思議な国である。大量な二酸化炭素を排出し、世界と対立するような人権問題を起こしはするが、その一方で、森林再生、緑化については積極的で、その規模の大きさとスピードには驚くことさえある。

中国のマングローブ林保護修復事業の効果は著しい 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

 AFPによれば、中国のマングローブ林保護修復事業が着実に推進されているようで、その効果が著しいという。

 中国は世界でマングローブ林面積が純増加した数少ない国の一つとなった。第3回全国国土調査のデータによると、中国のマングローブ林面積は現在40万60ムー(約270平方キロメートル)を保有するという。(出所:AFP BB NEWS) 

 そればかりでなく、広東省で展開された「湛江マングローブ林造林プロジェクト」が、市場取引メカニズムの役割を果たし、5880トンもの中国初のブルーカーボン取引プロジェクトになり、マングローブ資源の生態系保護と経済効果のウィンウィンの目標を実現したそうだ。

 

 

 マングローブ林の保護活動が、観光資源の開発につながり、過去において、潮干狩りのための破壊行為から、今ではエコ教育、楽しみながら学ぶ方式に転じ、観光時間の延長、観光体験の向上、観光収入の増加にもつながっているという。

 また、生態系の修復と漁業資源の増養殖を結びつけることも模索しているという。

廃棄されたエビ池をマングローブ林に修復し、天然の生産力と餌を利用し、林下の経済生物を増殖させ、持続可能な資源の採捕の実施により、生態系の継続的改善と経済生物の連続産出を実現できるという。(出所:AFP BB NEWS)

 AFPによれば、マングローブ林を保護修復し、その生態系の機能を十分に発揮すれば、生態系の優位性を経済優位性に転換させ、マングローブを「黄金樹林」にできるとみている専門家もいるそうだ。一見効率的かと思われた養殖も、自然サイクルに委ねる方法に敵わないということなのだろうか。

f:id:dsupplying:20220112115138j:plain

 これに反し、日本は停滞するばかりで、前に進むことが少なくなってはいないだろうか。

新しい資本主義と脱炭素

「新しい資本主義」の名の下、賃上げやデジタルなど多岐にわたる取り組みが求められるようになった。脱炭素も同様で、GX推進が大きな課題になっている。

 

 

 政府のこうした看板政策を担う山際経済財政・再生相に日本経済新聞がインタービューし、日本経済や企業の競争力引き上げへの課題などを尋ねた。また、脱炭素の鍵とみられる原発について、「東日本大震災から10年がすぎたが、原発について政府は議論を避けてきた」と問うた。

もちろん政治の責任ではあるが、一方で民主主義国家なので、いかに国民が理解していくか納得感をもっていけるかが大事だ。そのために結果として10年間かかっているのが長いのか短いかは後世が評価していくことだ。

原発を使わないとカーボンニュートラル達成できないのはコンセンサスだ。

メーカーは予見性をもってもらわないと計画が立てられない。予見性を持ってもらえるようなものにしないといけない。(出所:日本経済新聞

 原発ありきとしながら、いっていることは、他人事になっていないだろうか。事故を起こした東電は実質的には国有化されているのだから、他人事にせず、自ら予見性をもって、ことにあるべきではかろうか。原発議論を置き去りにして、現有火力の延命で逃げていてはエネルギーミックスの問題を含め、カーボンニュートラルの実現が危うくなる。

「八方ふさがりに見える日本に食いぶちはあるか。社会的課題の解決をビジネスの目的に据えればイノベーションのネタはいくらでもある」と日本経済新聞は指摘し、蓄電池については開発で先行しながら中国に追いつかれ追い越されたという。敵対するばかりでなく、中国に学ぶべきことが多々あるのではなかろうか。