Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

続く猛暑に、電力需給逼迫注意報の発令、改善しない電力事情に深刻さ増す異常気象

 

 梅雨明けを思わせるような天気が関東地方では続いています。天気図は真夏そのものです。ただ来週には太平洋高気圧の勢力がいくぶん弱まるとの予報もあるようです。梅雨明け宣言があるのか否か、気になるところです。(追記:梅雨が明けたそうです。史上最短の梅雨になるそうです)

もう梅雨明け? 厳暑続く 夜間も気温下がらず 万全な熱中症対策を 2週間天気(気象予報士 青山 亜紀子 2022年06月26日) - 日本気象協会 tenki.jp

 こうした異常気象も、これからは常態化していくのでしょうか。特効薬がないだけにこの先が思いやられます。

 

 

オーストラリアで発生した大森林火災のその後

 2019年、オーストラリアを猛烈な森林火災が襲い、生態系に甚大な被害を与えました。中でもコアラの被害は大きく、一部地域では絶滅が心配されるほど数を減らしたそうです。

「大火災で激変!コアラの今」 - ダーウィンが来た! - NHK

 昨日放映されたNHKの「ダーウィンが来た」に見入ってしまいました。森林火災から2年、現地取材で見えてきたのは、一変したコアラたちの暮らし。わずかに焼け残った木を巡って、森のあちこちで激しい争いが頻発、新天地を求めて町に進出したコアラも急増中」とNHKはいいます。その一方で、火傷を負うなどして傷ついたコアラを野生に戻そうと保護活動も続いているそうです。

 このオーストラリアでの森林火災も気候変動による異常気象、異常乾燥が原因の一つといわれています。ありきたりではあるのですが、被害を受けた自然を回復させると同時に、人為的によって生じた気候変動をどう食い止めていくのか、改めて考えさせられます。

 

 

電力需給逼迫注意報発令

 一方で、この酷暑というのに、電力需給は未だ安定せず、政府が初めて「電力需給逼迫注意報」を発令しました。27日午後3時から午後6時の時間帯、できる範囲での節電を求めているといいます。もちろん、冷房は適切に使いながらとの前置きはあるようです。

電力需給ひっ迫注意報 東電管内 午後 冷房使いながらも節電を | NHK | 熱中症

 NHKによれば、27日も晴天が見込まれ、正午時点では太陽光発電の出力は最大になる見通しといいます。ただ日が傾く午後5時時点では出力は3分の1以下に落ち込むそうです。東京電力では、「揚水発電」を最大限活用し、逼迫の回避を図るそうです。

 この酷暑に電力不足、それに加えて価格高騰では、論理が崩壊していないでしょうか。選挙目当てなのかはわかりませんが、「節電ポイント」など姑息なことを口にするのではなく、根本的な対策を速やかに実行し、きちんと説明責任を果たさなければ、身も心も耐えられそうにありません。

EVシフト

 自動車においてEVシフトが進むといわれています。しかし、EV電気自動車の燃料もまた電気で、単純に普及が拡大すれば、このままでは電力不足を助長しかねません。

 

 

 自動車業界はここ最近、水素やバイオディーゼルを使って自動車レースに参戦しているようです。

 フォーミュラEに軸足を傾けていたと思われた日産自動車も6月初旬に行われた「NAPAC 富士 SUPER TEC 24時間レース」に、二酸化炭素の排出量が実質ゼロの「カーボンニュートラル燃料」を使う車両で参戦したといいます。

日産、バイオ燃料でレース参戦 エンジン開発に生かす: 日本経済新聞

使用するのは廃棄食品、木材チップなどから製造したバイオ燃料だ。製造工程でも再生可能エネルギーを使用する。

ドイツのスタートアップ製の燃料を日本産業規格(JIS)に合わせて成分を調整した。エンジンも一部改良した。現時点ではレースに限定した使用を想定しているが、蓄積したデータやノウハウはエンジンを中心とする車両開発に生かす予定だ。(出所:日本経済新聞

 日本経済新聞によると、日産のグプタCOOがレース開始に先立ち、トヨタの豊田社長を訪問したといいます。豊田社長は日産の脱炭素の取り組みについて「大変心強い。日産とトヨタが良いライバルとして盛り上げていきたい」と応じたといいます。

(写真:日産自動車

 脱炭素からすれば、EVシフトの加速が求められるのでしょうが、その前に、現行のエンジン車を「カーボンニュートラル燃料」で使っていくことも、この電力状況からすれば、喫緊の課題なのかもしれません。

 年を追うごとに夏がやって来る楽しみよりも、恐さを感じるようになりました。

 業界の垣根を超えて、電力需給の改善、そしてエネルギー価格の改善を可及的速やかに取り組んでもらいたい、そう願わずはいられません。

 

「参考文書」

日産/NMC、富士24時間レースに参戦する「Nissan Z Racing Concept」を公開

「日産サクラ」、発表から3週間で受注11,000台突破

2022年富士24時間は180秒ペナルティを跳ね返したHELM MOTORSPORTS GTRが逆転勝利 | 国内レース他 | autosport web

 

結局誰が実行するのか、カーボンニュートラルに、DX デジタル変革

 

 ソニーが2050年にバリューチェーン全体におけるカーボンニュートラルの目標を、10年前倒し、2040年に変更したそうです。

 日経ビジネスによれば、取り組みが順調に進んでいたことから、実現可能性を精査して決断したといいます。

ソニーが脱炭素を10年前倒しする狙いとは:日経ビジネス電子版

 この10年前倒しはどのような過程を経て発表に至ったのでしょうか。

トップダウン至上命令だったのか、それともボトムアップでの提言を受けれてのことだったのか」。いずれにせよ、効率的に進めるのであれば、事業ラインとは別の専門チームを立ち上げ、管理推進していくことになるのでしょうか。

 実態を常に把握、進捗管理ができれば、目標の修正は容易いのでしょう。

 

 

 パナソニックは、2028年までに海外も含めた全ての生産拠点をCO2フリーにすると宣言しているといいます。

 一方、欧州委員会は電池メーカーに対し、製品ライフサイクル全体のCO2排出量カーボンフットプリントの把握と開示を義務付け、それが2024年から始まるといいます。また、カーボン・フットプリントの上限値の導入は27年に始まるそうです。この上限値が低く設定されれば欧州で電池だ売れなくなる可能性もあるようです。その前に、パナソニックも目標の修正を行ったりするのでしょうか。

パナソニックエナジー、ニッケルレス電池投入へ | 日経ESG

こうした潜在リスクを考えると、今からCFPを下げる手段を想定しておく必要がある。現状、鉱山から採掘したバージン材よりも、リサイクル材の方がCFPが低いことから、材料のリサイクル率を高めることが重要なポイントになる。(出所:日経ESG)

 こうした対応は誰が実行するのでしょうか。

 やはり専門部署が設けられて対応することになるのでしょうか。しかし、それは内容次第では事業ラインに大きく影響し、開発ばかりでなく営業を含めてシェアされるべきなのかもしれません。

サプライチェーン全体でCFPを下げなくてはならず、日本は電力のCO2排出原単位が欧州に比べて大きいため生産拠点として不利な条件にある。政府にはCO2排出原単位の低い電力供給をこれからも求めていく。(出所:日経ESG)

  いずれにせよ、規制に対応できなければ、事業を失ってしまいます。パナソニックは強い危機感を持っているといいます。小さなことから大きなことまで、企業総包みで対応していかないと、実現はできそうにありません。逃げることも言い訳することもできないのでしょう。

 

 

 一方、同じように事業に大きな影響を及ぼすと言われるDX デジタル変革はそうはうまくいかないようです。

うわべだけの「キラキラDX」にだまされるな、取り組むべきは大企業病の治療だ | 日経クロステック(xTECH)

 少し不思議なことのように思えてしまいます。記事は大企業病の弊害を指摘し、それは大企業ばかりでなく、公官庁を始め中小企業も大企業病を発症している組織は多数あるといいます。そして、この病気を平癒させるには、「アンラーニング」や「リスキリング」が求められるといいます。

いままで獲得した成功体験や知識をいったん手放し、新たな技術や知識を身に付けよう/身に付けさせよう。(出所:日経XTECH)

「どうもリスキリングのテーマがテクノロジーに偏り過ぎているきらいがある」と記事は指摘しています。確かにそうなのかもしれません。

 今この時代、角を立てることなく、みんなが協力して業務できるようにする、そんなスキルが求められているのかもしれません。

 

「参考文書」

欧州委、循環型経済に向けたバッテリー規制の改正案発表(EU) | ビジネス短信 - ジェトロ

 

ESG投資の人気も翳り始めたか、それでも企業はサスティナビリティを止められない

 

 脚光を浴びたESG投資も近頃では、人気が剥落しているのでしょうか。これまで3年連続で膨大な資金を呼び込み、40兆ドル(約5400兆円)という資産規模になったESGへの需要は足元で冷えつつあると、ブルームバーグがいいます。

衰えるESGの威光、個人投資家が距離-ゴールドマン事案も一因に - Bloomberg

サステナビリティーとは何か。

それは人によって意味するところが異なるが、個人投資家はこのことを知っているだろうか。彼らはサステナビリティーが良い事をするはずだと心の中で思っているかもしれないし、自分のお金が良い行いをし、リターンも得られるという広告を見かけるが、実際はどうだろうか。(出所:ブルームバーグ

 欧州が、環境に配慮しているように⾒せかけているグリーンウォッシングを⼀掃する⽬的で規制を強化しようとしているといいます。それによって、何か変化は生じることになるのでしょうか。

 

 

 そうはいっても、サスティナビリティの歩みを止める訳にはいきません。実際に、気候変動対策に貢献するかのように企業は様々な施策を継続しています。

 花王は、ケミカルリサイクルPET素材を使用したボトル容器の採用を順次拡大し、化粧品PETボトル容器の水平リサイクルの実現を目指すといいます。使用済み容器の回収、再利用についても検討を進めるといいます。

花王 | 花王、化粧品でプラスチックボトルの水平リサイクルをめざしケミカルリサイクルPET素材の採用を開始

 花王が採用するケミカルリサイクルPETは、JEPLAN(旧:日本環境設計)が保有するケミカルリサイクル技術「BRING Technology™」により開発されたものといいます。

 JEPLANによれば、PET樹脂製造におけるCO2排出量は、石油由来の原料からの製造と比較し約47%削減できるといいます。ただ、廃PETボトルを焼却し、石油由来のPET樹脂生産と比較した場合とのことです。単純に製造工程における比較するとどういう結果になるのか、気になります。

 これまでのようにごみを焼却処分することがなくなり、ごみは資源という概念が定着して、自然界へのごみの漏洩が最小化できれば、それはそれで価値あることかもしれません。

 

 

「JEPLAN」とは、旧日本環境設計が6月1日に社名を変更したことで誕生しました。社名変更の理由は自分たちが描く循環型社会の絵をさらに世界に広げるという意思表示もあるといいます。

日本環境設計がJEPLANへ社名変更 読み方は「ジェプラン」 - WWDJAPAN

 そのJEPLANは、リサイクルプロジェクト『BRING』を企画、運営し、子会社化したペットリファインテクノロジーがPETボトルのリサイクルを担っています。

循環経済(Circular Economy)を確立することを目的に当社が保有するケミカルリサイクル技術だけでなく様々なリサイクル技術の実証を行う技術開発拠点として、広く世界中の大学・研究技 術開発機関・関連事業者と連携し活用する予定です。(出所:ペットリファインテクノロジー㈱

 

 

 循環型社会、サーキュラーエコノミーを普及、定着させていくためには、『BRING』のような活動は必要なことなのかもしれません。事実、それによって賛同する企業や自治体も増えているようです。

JEPLANグループ:ペットリファインテクノロジーと長崎市が「ボトルtoボトルリサイクル」に関する実証事業を協働|株式会社JEPLANのプレスリリース

 売上をスケールさせていくことは、ベンチャー企業に求められることですが、そこばかりにこだわることなく、さらなるCO2排出削減や省エネ化、低コスト化への探求を続けてもらいたいものです。常に競争力の源泉はそこにあるのだから。そして、それはグリーンウォッシュという誤解を防止する最善の策になっていくような気もします。

 

 

「参考文書」

花王、ファンデーションの中皿にケミカルリサイクルPET素材を採用|花王株式会社(ニュースリリース)のプレスリリース

SUSTAINABILITY/サステナビリティ – 株式会社JEPLAN

PETリサイクルのJEPLAN、残さの再生で同業と協業: 日本経済新聞

 

進む円安、これを機に脱石油は進まないのだろうか

 

 また円安が進み始めたようです。136円のラインを超えました。輸入物価の上昇の悪影響が心配になるだけです。政府・日銀は相変わらずです。国債を刷っての物価対策がいいことなのでしょうか。選挙戦に入り、急激な政策変更もなさそうです。

 政策が変わらないのであれば、円安のメリットを活かす道を探さなければならないのでしょうか。改めて「脱化石燃料」を意識します。また、国内回帰もキーワードになるのでしょうか。

  最大限に再生可能エネルギーを活用し、乗用車やトラックのEV化を速やかに進め、脱プラに徹するべきということでしょうか。

 

 

進む食材の国産化

 一方で、小売りや外食、食品メーカーで、食材調達や加工を国内に切り替える動きが相次いでいるそうです。

 日本経済新聞によると、シャトレーゼは菓子に使うバターなどで国産品への切り替えを進め、セブン―イレブン・ジャパンも弁当などの鶏肉の一部をタイ産から国産に替えたそうです。

食材、国産へ切り替え相次ぐ セブンイレブンは鶏肉: 日本経済新聞

 為替の円安で輸入品の調達コストが高騰していることに加え、燃料高の影響を受けている物流費を考慮すると大きな差にはならないとの声もあるといいます。

 実際、シャトレーゼの場合、国産への切り替えで年1億~2億円ほどの調達コストの改善につながる見通しといいます。価格は据え置き、原料を見直すことで製造コストを抑えるそうです。

遅れる石油代替

 石油から精製される燃料やプラスチックスや繊維も厳しいのでしょうか。代替物がないわけではありませんが、すぐにそれに切り替えるのが難しそうです。

 航空ジェット燃料の代替となるSAF「持続可能な航空燃料」はいまだ供給能力が整わず、トラック輸送の軽油代替、バイオディーゼル燃料もしかりです。乗用車のEV化も進まず、船舶においても同じ状況ではないでしょうか。

 

 

厳しさ増すアパレル、プラ包装材

 ユニクロも値上げを発表しました。素材となる石油由来の合成繊維が軒並みに値上がりしていることが理由のようです。アパレル業界にとっても厳しい状況なのでしょう。

 原油が高騰すれば、繊維やプラスチックスの原料価格も高騰します。これに加えて、流行りになったリサイクル繊維の価格も上昇しているそうです。

 繊維ばかりでなく、同じ工程を踏んで製造される多くの商品の包装に使われるプラスチックスも同様です。

再生プラスチックス

 しかし、リサイクル原料の供給が改善すれば、状況は変わっていくのでしょうか。850万tも排出される日本国内の廃プラを原料に有効に使えるようになっていけばいいのかもしれません。

新法で増える需要のない再プラ、消費者の巻き込みがリサイクルの鍵に | 日経クロステック(xTECH)

 ただ日経XTECHは「一体誰が、何に使うのか」と指摘します。いまだリサイクル、再生プラスチックスに対し、品質が悪い、コストが高いというイメージがあるのでしょうか。記事は、ケミカルリサイクルに否定的のようです。

プラスチックの原料(モノマー)として使えるほどきれいな化学原料を得るには、廃プラを単一の材質ごとに分別する手間がかかる。その上、プラスチックの分解に必要なエネルギーも多くコストも高いため、現状、ケミカルリサイクルの活用は限定的だ。(出所:日経XTECH)

 しかし、現実には、日本製鉄の製造工程では、自治体で回収された廃プラ約20万トンがコークス炉で熱分解処理されて「再生油」に生まれ変わっています。

 この再生油から、軽質油と重油がとれ、軽質油からナフサを経て、各種プラスチックス原料が作られています。ケミカルリサイクルは、どの状態まで戻すかによって、その性質が大きく異なります。

 ただ製鉄では大量の二酸化炭素が排出され、その工程を利用し得られる「再生油」のCO2排出量をどう扱うかは議論の余地があるのでしょう。

 

 

コンビナートで作る再生石油

 ENEOS三菱ケミカル、鹿島臨海工業地帯に拠点を持つ石油と化学の業界の両雄がタッグを組み、ケミカルリサイクルの一種の「廃プラスチックの油化」を進めているといいます。

ENEOS・三菱ケミカル、脱炭素でコンビナート復権へ: 日本経済新聞

 こちらでは、英ムラテクノロジーの超臨界水技術を用い、高温高圧の超臨界水で外部調達した廃プラを分解し、再生油を作るといいます。いわば廃プラを原料にして石油に戻すといっていいのでしょう。

 こうして得られた再生油から石油同様にナフサ(粗製ガソリン)が精製され、それを三菱ケミカルの既存のナフサクラッカーを通すことで、プラスチックスや繊維の原料となる基礎化学品を得ることができます。日本経済新聞によると、2023年度から事業を始め、油化の処理能力は年間2万トンになるといいます。

 遠い異国の地で掘った石油を海上輸送してくるのか、国内で回収した廃プラを原料にして石油コンビナートで再生油を作る、そのどちらがいいのかと言えば、価格やCO2の排出、消費するエネルギーでいえば、まだ輸入に分があるのかもしれません。

 ただ国際情勢が変化した現在においては、こうした「再生油」という選択肢をもっていることに意味があるのではないでしょうか。

 

「参考文書」

東レ、合成繊維を値上げ 5月出荷分から1~2割: 日本経済新聞

真の循環社会確立に向けた化学産業界の取り組み(経済産業省)

ナフサ分解工場|石油化学工業協会

 

変革に動く企業、目の前の危機が現実化するときなのか

 

 これまで変化を求めていなかった企業がようやく変化に挑戦し始めている、そんな動きがあるのでしょうか。

「2000年代初めての国内投資ラッシュが訪れる可能性がある」そうです。

AI立国の勝ち目どこに 投資ブーム機に人育てよ: 日本経済新聞

東北や九州などで工場建設が相次ぎ、H形鋼の注文が1年前より10%増えている。

サプライチェーンの強化や円安などで国内の設備投資は今後数年はブームになる可能性がある。(出所:日本経済新聞

 海外に散った付加価値が国内に戻り、安定的な雇用が回復し、その流れが定着すれば、細った中間層の復活はあるのかもしれません。

 

 

 一方で、少子高齢化問題があり、人手不足は否めず、新たに建設される工場ばかりでなく、どの産業においても効率化、生産性向上は避け得ないのでしょう。

創業時から働いていたベテランさんが高齢化で次々と辞められていくわけですよ。

人手不足もさることながら、継承が難しい技術やノウハウがどんどん失われていくのにはまいった。やはり自動化するしかないと。(出所:日経ビジネス

 脱炭素に、デジタル化、自然災害リスクに防災、企業が取り組むべきことばかりが示され、その必要性は理解できても、本気の行動には至らず、見せかけに終わってしまう、そんなことがこれまでだったのかもしれません。

中小企業のAI活用、街中のオープンイノベーション

 人手不足が深刻化、慢性化すれば、事業の継続が難しくなります。企業にとって、これこそがもっと重要な課題ということなのかもしれません。

東京海上グループが作業着で「町工場」を訪ねて回るわけ - 日経ビジネス電子版 Special

「九州オルガン針」、工業用ミシン針の製造と精密金属部品の加工する九州の中小企業といいます。

 針の外観検査に自動検査装置を導入し、そこにAIが活用された事例を日経ビジネスが紹介しています。

目視検査ができる人を育てるのに10年はかかる。

人がいなくなると、その穴はすぐに埋められない。(出所:日経ビジネス

 自動検査装置は、画像データで針表面の傷や汚れなどを検出するそうです。この仕組みにディープラーニングが使われているといいます。

 

 

 ものづくりにおいて、検査に付加価値はないと言われます。モノを作るときに不良がゼロであることが保証できれば、検査は不要です。しかし、それでは現実的ではないので、どうして検査せざるを得ません。

 人を減らしたいが品質維持のためには減らすことができず、自動化すれば、その精度の問題で逆に手間がかかる。これまでの自動外観検査装置はそんなものでした。

 それを中小企業がみずから開発したことがユニークなことなのかもしれません。もちろん単独開発ではなく、近隣のITベンダーの協力があったといいます。街中の小さなオープンイノベーションということでしょうか。

紙、トナーの消耗品ビジネスからDXへ

 OA 事務機器メーカ各社が相次いで、デジタル変革関連サービスを強化しているといいます。主力とする複合機は、ペーパーレス化に伴って市場は縮小し、在宅勤務の増加でオフィスでの印刷需要の減少に追い打ちをかけているといいます。

主力の複合機は市場縮小…事務機器メーカーはDXサービスを活路に出来るか|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社

従来の複合機や消耗品の販売、保守サービスには成長を期待できない中、ITソリューションなどに軸足を置いたビジネスモデルへ転換できるか、各社の実行力が試される。(出所:ニュースイッチ)

 社会情勢に抗ったところでその流れを止めることはできません。そうであれば、今までの利益の源泉を諦めても、顧客に自ら率先してDX化を提案していく、ごく自然な流れなのかもしれません。

 

 

 

「かつて電子立国と呼ばれた日本がAI立国を目指すなら、少なくとも国はその道筋を明確に示す必要がある」と日本経済新聞は指摘します。

岸田政権はイノベーション推進のキーマンとして首相の科学技術顧問を設ける。官邸主導を実現し、経産省文部科学省厚生労働省などの予算のぶんどり合戦や権限争いを防ぐ狙いがある。しかし「縦割り打破」だけが目的なら政府の内輪の論理であり、あまりに寂しい。国民と企業にこれからの時代を明快に語り、担い手を育てるメッセージに期待したい。(出所:日本経済新聞

 そうなのかもしれませんが、もう嫌になるほどそうできない行政と政治を見てきたのではないでしょうか。脱炭素しかり、デジタル化しかり、どれも世界から遅れをとってしまいました。

 この先の課題において同じ轍を踏んではならないのでしょう。

 

暗号資産を批判するビルゲイツ、優先すべきは社会課題の解決と言いたいのか

 

 マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏が暗号資産(仮想通貨)や非代替性トークン NFTについて批判しているといいます。

 CNNによると、ゲイツ氏は人気NFTの「ボアード・エイプ」について、「高価なサルのデジタル画像」が「世界を大いに改善する」と冗談を述べたといいます。

CNN.co.jp : ビル・ゲイツ氏、暗号資産とNFTは「でたらめ」 - (1/2)

デジタル資産のトレンドは「100%馬鹿な理論に基づいている」と述べ、人々が喜んでそれらを高値で取引する限り、投資家は無価値または過剰評価された資産でもうけることができるとの考えを示した。(出所:CNN)

 ゲイツ氏は昔ながらの投資を好むそうです。「生産物を持つ農場、あるいは製品を作る会社のような資産クラスになじみがある」と述べているそうです。

 こうしたことは、人々のために直接役立つ価値ある行為ということなのでしょうか。また、それが社会課題解決にも役立つということなのかもしれません。

 

 

 コンピュータの登場で社会が大きく変化したことは否めません。そして、今なおその進化は続き、そうした中から、暗号資産が生まれたのかもしれません。「コンピューティング」がこの先もテクノロジー開発は続くのでしょうが、いつまでもそれが中心をなすということではないのかもしれません。

 今目の前に気候変動の問題があり、また、健康はいつでも人々の関心事です。現実に新型コロナのパンデミックが発生し、今またサル痘や子どもの急性肝炎のことが話題になっています。こうしたことを「コンピューティング」は解決できるかといえば、助けにはなるかもしれませんが、不十分と言わざるを得ません。

 こうしたことからでしょうか、以前からヘルスケアやバイオに注目が集まるようになっていました。

 米アップルもいち早くそうしたトレンドを理解していたようです。アップルウォッチは医療機器に認定され、様々な機能が追加となって、そこから得られるデータをもとに研究が始まり、また、それが次の機能開発にもつながっていくようです。

アップルの「ヘルスケア」は科学ととも進化する 幹部が語るWWDC発表の新機能 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

「コンピューティング」がアップルの基盤としてあり続けるのでしょうが、ヘルスケアが今後のアップルのメインの一部になっているかもしれません。

 

 

 一方、ゲノム編集や遺伝子組み換え技術、細胞に微生物など生命活動に関わる物質などを対象とした「バイオテクノロジー」は、医療や創薬、農業、食品、エネルギーなどさまざまな分野に応用でき、気候変動やSDGs、ヘルスケアにおいても欠かすことのできない技術です。

二酸化炭素からステーキ? 代替タンパク質、驚愕の最新事情 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

 日本においても、ミドリムシを使ってユーグレナ社がバイオ燃料や食物の研究を行い事業化を進めています。スパイバーは人工タンパク質から繊維を作り、アパレル業界での応用が期待されています。

 スタートアップを含め、多くの企業がこうした分野に新規事業としてチャレンジしています。

「従来のタンパク源にとどまらない代替食品が不可欠になる」

現在の予測では、人類が過去8000年間で生産した以上の食料を今後40年間で生産しなければ、世界人口を養えない。(出所:Forbes)

 デジタルだけが国の成長を支えるものではないのでしょう。デジタル化で対応しなければならないことも多々あるのでしょうが、それよりも解決しなければならない社会課題があるのではないでしょうか。

 

「参考文書」

生命が持つ力を技術に応用する【バイオテクノロジー】 世界が注目する大学発ベンチャーにも期待|スタディラボ

 

dsupplying.hatenablog.com

 

サスティナビリティを理解するための要諦とは

 

「サスティナビリティ」に、「DX」、「新規事業」、「オープンイノベーション」、様々なことが企業に求められています。しかし、なかなかうまく実行できないのが実情なのでしょうか。

「.....ビジネスモデルの検討段階で地球環境のことを考える視点は新鮮だった」。

こうした働きかけは、経済界には構造的に「サステナブルでない事業」が多数存在するという、不都合な事実を浮かび上がらせるものでもある。(出所:Forbes)

 パリで開催されたイノベーションとスタートアップに特化したテクノロジー分野のカンファレンス「Viva Technology」に参加したForbes記者がそう述べています。

「最新のiPhoneは持っていない」 アップルの元開発者が語るサステナビリティ | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

 さらに、「テック業界と小売業界でトレンドが同じである点は、真剣に受け止めなければならない。環境破壊が待ったなしの状況まで来ている。そのことを意識させられるセッションであった」といいます。

 

 

ペースメーカーを作って真似てみる

 熱狂が起きれば、それに追従するものが現れるのでしょう。冒頭にあげた「サスティナビリティ」などのひとつの事例なのかもしれません。

 それにしても、一から何かを始めようとすると、いきなり挫折が待っているのかもしれません。まず知ることから始めなければなりません。知るとは、自分の無知を知ることで、知らない知識を得ることはたいへん手間がかかります。それなら参考になりそうな誰かの模倣をして、それをペースメーカとして追従していくのはいいのかもしれません。

「学習」とは、学んで習うといいます。また「学び」とは過去を知ることであり、それをまねることになります。「習う」とは、繰り返しやってみて、それを覚え、身につけることをいます。

 こうしてみれば、最初から、まったく新しいものが、発芽することがないことがわかります。新規を得るには、その前段階で知るという行為があって、そこから生じるものなのでしょう。

 

 

 もしも選んだペースメーカーが道を違えたり、ペースダウンするようなことがあれば、躊躇することなく別のペースメーカーを選べばいいのではないでしょうか。

ウエルシア薬局のDXの事例

 ドラッグストア大手のウエルシア薬局のデジタルトランスフォーメーション DXの事例を日経ビジネスが紹介しています。

 ウエルシアでは、週に1回以上程度来店してくれるロイヤルカスタマーが現在約200万人いるそうです。この先の少子化社会を考慮すれば、いかにロイヤルカスタマーを増やしていけるか、それが課題といいます。

ロイヤルカスタマー育成に向けたデータ活用 買い物弱者などの社会課題解決にも貢献 - 日経ビジネス電子版

このロイヤルカスタマー戦略のために同社が重視しているのがデータといいます。「ロイヤルカスタマーが定期的に購入される商品は継続的に仕入れる」、これまで、このような判断は現場の勘や経験に頼ってきましたが、これからはデータに基づいて判断すべきとして、購買行動をきめ細かく分析しているといいます。それが意思決定の質やスピードアップにつながるといいます。

 そのために新たに『ウエルシアメンバー』という会員制度を始めたそうです。

ロイヤルカスタマーを意識した品ぞろえは、既存顧客を保護する、いわば「守り」の施策だが、新しいロイヤルカスタマーを獲得していく「攻め」についても、様々なアイデアを練っているところだ。(出所:日経ビジネス

 

 

 会員制度を始めてそれで終わっていたら、これまでのデジタル化ということなのでしょうか。それにプラスして、社会の課題解決につながることを実行できれば、世に言うデジタルトランスフォーメーションになるのでしょうか。

 ウエルシアは、「日本社会の人口減少は、過疎地域における流通や交通システムの弱体化を招き、買い物弱者の問題を顕在化させようとしている」といいます。そして、ロイヤルカスタマー戦略の一環として、この社会課題の解決に貢献していけるのではないかといいます。

注文を受け付け、販売の処理を行い、商品をお渡しする。基本的なプロセスはシステム化されているわけですから、どこで注文を受け、どうやって商品をお渡しするかは応用次第....、近日中にはデジタル技術を結集した移動販売車もいくつかの町で運行予定です。(出所:日経ビジネス

 アップルのように最初から大胆な計画を立案し実行できる企業もあるでしょうし、まずはできることから始める企業があっていいのかもしれません。基盤を作り、それを応用できるものを広げていく。

 小さな歩みでもいつか大きな変革につながるかもしれません。一歩を踏み出せば、気づきを得る機会もあります。それがまた知ることの始まりになりますし、そこから変革の芽が育っていくのかもしれません。

 

dsupplying.hatenablog.com

 

「参考文書」

オープンイノベーションを成功に導く7箇条 日本企業に足りない考え方とは?:オープンイノベーションのベストプラクティス(1/2 ページ) - ITmedia NEWS