Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

環境とお金の話:グリーン投資は拡大していくのか?

 

 世界で頻発する異常気象を意識してのことか、投資家たちの関心も環境、低炭素社会に向き始めたのかもしれない。10月8日に東京でTCFDサミットが開催された。

 サミットの模様を日本経済新聞は以下のように伝える。

・投資家のESG投融資では、新規の石炭火力への融資を中止するといった動きが広がっている。サミットでは、投資家が「もの言う株主」として、企業の気候変動への対応に積極関与すべきだとの意見が相次いだ。

カルパースのユ・ベン・メン最高投資責任者(CIO)は「(石炭などからの)投資引き揚げだけでは社会全体の排出量を減らしにくい。投資を通じて発言権を持ち、声を上げていくことがより重要だ」と強調した。

・企業の情報開示を巡っては、企業活動が気候変動に及ぼすリスクに関心が集まりがちだ。一方、先端的な環境対応技術など企業の強みも投資家が評価できるようにすべきだといった声も多い。(日本経済新聞

 

 投資と環境について整理してみよう。

 

 

 そもそもTCFDとは何であろうか?

 NHK NEWS WEBが以下のように解説する。

・Task force on Climate-related Financial Disclosures の頭文字を取ったもので、直訳すると「気候関連の財務情報開示のタスクフォース」ですね。

・金融の安定化を図るための国際的な組織(FSB=金融安定理事会)が2015年に設置した組織です。民間主導で産業界の代表32人で構成されています。議長はニューヨーク市長だったブルームバーグ氏で、2017年には気候変動リスクの情報開示の在り方を提言した最終報告書をまとめました。

・気候変動への対応はこれまで「企業の社会的責任」と言われていました。今では「ビジネスを進めるうえでリスク(あるいは機会)」にもなるとして、企業が投資や融資を受ける際に重要な情報となっているんです。

www3.nhk.or.jp

 

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)による最終報告書の中身

 KPMGジャパンの『気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)による最終提言の公表』を参考にする。

提言の背景

・2015年12月、パリ協定で、気温上昇を1.5°C未満に抑えるように最大限の努力を行うことで合意された。これは将来の「低炭素経済」を意味し、現在の経済と大きく異なる。低炭素経済への移行は多くの企業にリスクと機会をもたらす。

・「低炭素経済」への移行に伴うリスクや機会が、投資家に正しく理解されなければ、その影響が顕在化した場合、金融市場の安定性が損なわれる可能性がある。これまで企業が開示してきた気候変動関連の情報は、投資家等の意思決定のためには十分なものではなかった

・TCFDは、気候関連財務情報を開示する側にとっても利用する側にとっても有用な開示枠組を提示することを目的とし、企業に対し、可能な限り速やかに提言を採用し、気候関連財務情報の開示を実施することを推奨している。

 

提言の構成

提言は、組織運営における4つの中核的要素(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標および目標)から構成され、各要素について投資家等の理解に有用な「推奨される情報開示」が示される

ガバナンス

気候関連のリスクと機会に係る組織のガバナンスを開示する。

戦略

気候関連のリスクと機会がもたらす組織のビジネス、戦略、財務計画への実際のおよび潜在的な影響を開示する。

リスク管理

気候関連リスクについて、組織がどのように識別、評価および管理しているかについて開示する。

指標および目標

気候関連のリスクと機会を評価し管理する際に使用する指標と目標を開示する

 『これまで企業が開示してきた気候変動関連の情報は、投資家等の意思決定のためには十分なものではなかった』と記されたことの意味の大きい。従来、企業は「環境問題」をCSRの一部の「社会的責任」として取り組み、ビジネス本流から距離を置いていた。この提言によって、「環境」が投資判断の材料となれば、企業も変わらざるを得ない。

 

日本企業も、TCFDへ対応するのか?

 今回のTCFDサミットには国内外の機関投資家 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)や米カリフォルニア州職員退職年金基金カルパース)が参加した。

 産業界でTCFDに参加表明しているのは、メガバンク3行を含めた金融機関のほか、三菱商事日立製作所丸井グループ花王トヨタ自動車などさまざまな業種の企業が194社にのぼる。

 

 サミットに参加した英中央銀行のカーニー総裁は、「気候変動に伴うリスク管理が必要で、対応している企業に投資することが主流にならなければならない」と述べ、ネットゼロ社会の実現に向けた投資を主流化することの必要性等について述べたという。

 今回の会議には、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルも参加したという。「低炭素」を意識しなければならない社会になるのであれば、石油メジャーにとっては深刻な問題になる。

 すでに、時価総額世界一のアップルなどは積極的にこうした情報を開示している。日本の産業界も、機関投資家が参加したこの会議を意識せざるを得なくなるであろうし、より積極的に「環境、低炭素社会」に取り組みことが求められるのではないであろうか。

 

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(関連文書)

www.nikkei.com

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