以前勤めていた電機メーカは米デルと取引していた。「デルとは随分変わった名前のPCメーカが登場したものだな」と取引当初思ったが、あれよあれよという間に市場を席捲してしまった。デルが大きく成長する前からの取引だったので、一緒に成長しているなと感じていた。
そんな若いデルが、毎年のように新しい仕組みをつくっては導入していた。その中でも印象的なのが、QBR(=Quaterly Business Review)。四半期ごとの仕事の成績表、品質、供給など様々な面で評価を受けていた。その成績が次の四半期の発注にも影響する。その成績に一喜一憂した。年に一度のアワードで、何度か受賞した。他者に評価されることは客観視できるまたとのない良い機会だった。
- 国連グローバル気候アクション・アワード2019
- Fortune Change the World List 2019
- なぜ、日本企業はランクインしないのか?
- 「コモングッド」を重視する未来へ
- まとめ
- Appendix
この夏、アワードやランキングの発表が相次いだ。
こうしたアワードの結果は刺激になるし、励みにもなるはずなのに。
日本企業の姿が見えないのが残念😢
国連グローバル気候アクション・アワード2019
9月23日「国連グローバル気候アクション・アワード2019」の受賞15団体が、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局によって発表された。やはり、アップルの名前がある。アップルのすべての工場、アップルストアなどで使用する電力が100%再生可能エネルギーに移行したことが受賞の理由になっている。
受賞内容詳細は、Sustainabe Japanの記事で確認できる。
Fortune Change the World List 2019
米ビジネス誌フォーチュンは、恒例となっている「Change the World List 2019」を発表、本年はトップ52社を選出した。選出方法は、「Measurable social impact」、「Business results」、 「Degree of innovation」 、「Corporate Integration」の4つの要素によって企業を評価し、ランク付けされている。
1位:クアルコム、2位:マスターカード、3位:BYD(中国)。
気になる企業では、5位:ウォルマート、10位:テラサイクル、16位:アップル、22位:IBM、29位:ロレアル、37位:アリババ、39位:バイドゥ、46位:NTT、48位:パタゴニア、49位:セールスフォース、51位:Impossible Foods、52位:Beyond Meat
日本からはNTTのみで46位にラインイン。昨年31位のトヨタは圏外に。意外にも中国企業が多い。
なぜ、日本企業はランクインしないのか?
President Onlineの記事が、何かこの問題を紐解くヒントのように思えた。
企業は、地球環境に生かされているということがわかれば、環境配慮にも真剣に取り組みようになるだろう。そして、このような企業が増加することこそが、地球環境の改善につながるのである。環境への取り組みを、単にCSR(Corporate Social Responsibility)の一環としてとらえるだけでは十分ではない。(出所:President Online)
記事では、環境ISO14000シリーズに規定されるマテリアルフローコスト会計(ISO14051)の重要性を上げる。
マテリアルフローコスト会計は、製品製造工程に生じるロスに注目し、製品とともに生み出される廃棄物(これを「負の製品」と呼ぶ)のコスト(材料費、加工費、設備償却費など)を明確に認識する原価計算手法である。廃棄物の経済的価値を測定することは、思いのほか重要である。(出所:President Online)
具体例として、京都にある山田製油を例にしている。『油粕は廃棄処分としていたが、それを活かした新製品を開発し、これら製品の売り上げが伸びたことによって、会社への利益貢献をもひきだすことができたのである。』とPresident Onlineは伝える。
アップルは「Trade In」というプログラムを始め、使われなくなったiPhoneを回収、新しいiPhoneをその分値引きして販売する方法を始めた。回収されたiPhoneも再利用される。
ISOに規定されるマテリアルフローコスト会計は、環境に配慮するとともに企業収益改善のヒントになり、企業の間違った認識を指摘する。フォーチュンの「Change the World」の評価基準に相通ずるものがあるように感じる。
「コモングッド」を重視する未来へ
マーケッターでもある徳力基彦さんのnoteには、ワールドマーケティングサミット2019でのコトラー教授の基調講演のメモがある。非常に興味ある内容。「従来の経済のみを重視した企業運営が明らかに行き過ぎて、効率性に寄りすぎた狭い意味での「マーケティング」が批判の対象になっている」と指摘する。
■GDPだけで評価をするのは間違っている
・GDPではモノ(Goods)しか評価しない
社会的に悪いインパクトをもたらすものが売れてもGDPは上がってしまう
・GDPの上昇は、気候や人体の健康を傷つけていることもある(Paul Polman)
・単純にGDPを成長させるだけでなく、人々の人生をいかに豊かにするかを考えないといけない
■新しいビジネスモデル
・定型化されたチャリティに寄付するだけでは十分ではない
・ミレニアル世代、社会の問題に立ち向かう姿勢を求めている
■あなたの会社は、CSRやブランドアクティビズムに適応しているか?
・ブランドアクティビズム
従来はウォルマートは価格が安く、アップルは最先端の端末を作っている、で良かった。今はそれでは十分ではない。ブランドがどのように行動するかを消費者は見ているし、期待に添った行動が消費者から求められている
■何が起こるのか
情報時代において、消費者はベストなブランドを広告や営業担当者に頼らずに選ぶようになっている。
■おわりに
もしあなたが5年後も今とまったく同じビジネスをやっているつもりでいるなら、あなたの会社は倒産の危機を迎えるだろう
(出所:徳力基彦さんのnote)

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まとめ
こうしてみると、世界は、単なる利益重視から、環境保護などコモングッドを通してビジネスを成立させる方向にシフトしていることがわかる。ある意味、それは昔の日本企業の三方良しに通ずるものかもしれない。もう一度原点に戻ることが問われているような気がする。
国際的なアワードやランキングに、やはり多くの日本企業の名前があればうれしく思う。そんな日が来て欲しいと切に思います。
『 日本企業には、地球市民であるという意識が極めて希薄であることを意味している。環境文化それ自体が不在なのである。』とPresident Onlineでは指摘していた。企業を離れ、一個人であれば、地球のことを心配する人が多いと信じている。

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最後までお読みいただきありがとうございます。
Appendix
国連グローバル気候アクション・アワード2019詳細
★Planetary Health
Impossible Foods他3団体が受賞。ベルギーゲント市政府も含まれる。★Climate Neutral Now
アップル他3団体が受賞。アップルは、世界中43か国にあるオフィス、小売店、データセンターで使用する電力の100%再生可能エネルギーに移行し、現在、サプライチェーン全体を100%再生可能エネルギーに移行したことが受賞理由。ユニークと感じたのは、MaxBurgersの世界初の「気候に優しい」メニュー。このメニューにはCO2の排出量が記載されているという。
★Woman for Result
Mothers Out Front(アメリカ)他3つの活動とEco Wave Powerが受賞Eco Wava Powerがここに含まれることにも興味がわくが、電力購入契約に基づいて運用される世界で唯一のグリッド接続型波力エネルギーアレイフローターとのこと。詳しい仕組みが知りたいと感じるもの。
★Financing For Climate Friendly Investment
Beyond the Grid Fund for Zambia、Women’s Livelihood Bond Series、カナダ・ケベック州「International Climate Cooperation Program」が受賞。(参考:Sustainabe Japan)