Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

脱プラ 生分解性のレジ袋について考察してみた

 テレビ東京「ガイヤの夜明け」で、植物由来の生分解性プラスチックのレジ袋が紹介された。 レジ袋有料化などレジ袋への風当たりが強まる中、レジ袋業界側からの視点での話であったようだ。この紹介されたレジ袋について、違和感を感じていた。世の中がレジ袋をなくしていこうと動き始める中、製造メーカのエゴではと感じ、釈然としなかった。疑問点もいくつかあった。

 

 

www.kankyo-business.jp

 

 「市場はこの生分解性のレジ袋を受け入れるの?」

 政府がレジ袋の有料化を決定し、ユニクロアディダスなど多くの販売店がレジ袋の素材をより環境にやさしい紙などに変更している。そうした中で、生分解性のレジ袋が必要なのかと疑問が払しょくできない。

 来年7月から始まるレジ袋の有料化で、バイオプラスチックからなるレジ袋は有料化対象外となるようだが、どれだけの店舗が高価なバイオプラスチックのレジ袋を使って無償提供を継続するのだろうか。小売店によって対応が分かれるのだろうか。

 

海洋汚染にはつながらないバイオマスプラスチックを使ったレジ袋や、繰り返し使える厚さが50マイクロメートル以上のレジ袋は、有料化の対象外とする。バイオマスプラの配合率は施行当初は25%以上とするが、その後、有料化対象外の基準となる配合率は引き上げていく方針だ。(出所:産経新聞) 

 

www.sankei.com

 

 

 

 海外に比べ、プラごみ対策の遅れが目立つと言われる。世界でのレジ袋事情をThe Cuisine Pressが伝えている。

 

r-tsushin.com

 

 パタゴニアが来年4月からお持ち帰り袋廃止すると発表している。こちらが一番環境にやさしいのかもしれない。マイバックをお持ちでないお客様には、他のお客様から提供いただいた「マイバック」をシェアするという。

 

www.patagonia.jp

 

「生分解性という特性を考慮すると、新たなごみ処理法が必要になるのでは?」 

 レジ袋製造メーカが提供している情報をもとに、まずはレジ袋の素材について調査してみた。

 

www.fukusuke-kogyo.co.jp

 

生分解性レジ袋の素材はポリ乳酸PLA

 このレジ袋に使用される素材は、ユニチカポリ乳酸PLA テラマック。この素材自体に生分解性があることをユニチカはJIS規定にもとづいて確認している。特に海洋における生分解性の確認は行っていないようだ。

 ユニチカは、元となるポリ乳酸PLAを外部より調達して、改質したものがテラマックになる。PLAにおいてはユニチカはコンパウンダーの役割を担う。ユニチカの2000年代初めのころは、米カーギルウ社(現在はNatureWorks LLC)からPLAを調達していた(現在の調達先は未確認)。

 このテラマックは繊維、不織布、樹脂製品として、色いろな商品に使われている。詳細はユニチカのホームページで確認できる。

 

www.unitika.co.jp

 

 

 

ポリ乳酸PLAのごみ処理は?

 農業用マルチシートや建築現場で使用されるシート、土のう袋用途として、生分解性プラスチックの需要が強かったのだろうか、こうした用途であれば、使用中に土壌にもどり、ごみ処理をあまり考える必要もなかったのかもしれない。

 生分解性プラスチックの特性から考えれば、コンポストによるたい肥化が最良のごみ処理方法と思われるが、コンポスト設備が普及していない現状では別の手段に頼らざるを得なくなる。

 ケミカルリサイクルについては技術的には可能のようだが、PLA自体の流通量が少なく、事業化にはまだもう少し時間がかかる。

 こうした現実から考えれば、サーマルリサイクルということになるのであろうが、この場合、現在レジ袋に使用されるポリエチレンよりCO2の排出が少ない(半分程度)というメリットはありそうだ。

  

「植物由来であることより食料事情への影響は?」

 今回のレジ袋の素材がユニチカ製のPLAテラマックであることは先に示した。このテラマックに使用されるPLAの需給が逼迫、入手難であることをnature 3Dが伝える。

特に2019年夏ごろからPLA樹脂の世界的な需要が急激に増えたことから、PLA関連製品の価格引き上げ、品薄といったことが起き始めています。

このNatureWorksがPLA樹脂の供給に制限をかけ始めたようです。代替のPLA樹脂供給先がないため、市場にPLA樹脂やPLA成形品が出回りにくくなっています。PLA樹脂の供給不足は当面続きそうです(出所:nature 3D) 

 

nature3d.net

 

 現在、PLAを主に供給するNatureWorksは、前身のカーギルウ社であった当時、「現在使用しているとうもろこしの実に代わってとうもろこしの茎や葉、稲わら、木材等の実用化研究を行っている。2007年には廃棄バイオマス原料に切り替え見通し」とPLAの原料調達について伝えられていた。現在の食料事情や畜産などに使用される飼料などを考えれば、当時としては賢明な措置と思われるが、現在、どこまで切り替えが進んでいるかは確認できていない。

 nature 3Dは、このことを踏まえてかはわからないが、次のような指摘もしています。

樹脂原料安定調達の観点からも、植物のセルロースなど食糧問題と競合しない非可食性・未利用のバイオマスからのPLA製造を行う技術開発の加速が期待されます。(出所:nature 3D) 

 

 まとめ

 「ガイアの夜明け」で紹介された海洋でも生分解性をもつレジ袋に興味をもって調べてみたが、生分解性プラスチックのごみ処理法が確立されていないことから考えれば、生分解性プラスチックのレジ袋はあまり有用ではないなとの印象をもった(単なるバイオマスプラスチックは除く)。やはり、レジ袋自体の流通量を減らしていくことの方が、海洋汚染への影響を抑える可能性があるのではなかろうか。それよりも、不法投棄をなくすことが何より求められ、回収も有効なことになる。

  この海洋でも生分解性をもつレジ袋を紹介した環境ビジネスオンラインも「2020年7月から数量を限定した販売開始を目指す」と、供給面での不安を伝える。 

 

 現在、世界的な生分解性ポリマーの需給が逼迫しており、同社は、土壌・海洋分解性レジ袋の量産化については、原料事情の落ち着きを待って順次拡大していく予定。(出所:環境ビジネスオンライン)

 

 生分解性プラスチックもすでに一定の市場があり、用途拡大などによる数量増もあってのことか需給が逼迫しているようだ。効果的に使用できない用途に使うくらいなら、より有効的に使用される方面に回すことも重要であろう。需給が改善しない限り、コストが重石になるし、常に供給不安を抱えざるを得なくなる。そうした面から言っても、PLAはレジ袋には向かない素材ではないかとの印象を強くした。

 

 以前電機メーカで、プラスチックの調達に携わっていたこともあって、こうしたサプライチェーン系の話題にはついつい興味がひかれ、実態調査をしたくなってしまった。情報ソースも限られる中での調査であったが、バイオ系プラスチックの可能性を感じつつ、食糧問題にも密接に関係してくる話になるので、その奥深さも感じた。また、調査の中で、欧米を中心にしたバイオエコノミーが静かに動き出していることも分かった。このバイオエコノミーも今後の調査テーマにしていきたいし、このブログでも紹介できればと感じた。

 

forbesjapan.com

 

プラスチック調達していたころ、PLAを少しかじり、その時に穀物メーカ カーギル社の名前を聞いていたことを調べていて思い出した。その時は、食料をプラスチック原料にするのはどうなのと感じていた。現在は非食成分を原料にするケースが多いようだが、土地利用という観点でまだ疑問を残しているようだ。そうした意味で、セルロース系や海洋利用などが注目を集めはじめてもいるようだ。

 

 

 

「関連文書」

dsupplying.hatenablog.com

 

dsupplying.hatenadiary.com

 

「参考文書」

バイオマスプラスチックの市場動向

油田の地位を狙う? 乳酸の新展開

植物由来プラスチックのリサイクル事業化について

食品の容器包装リサイクルに関する調査

ポリ乳酸系生分解性プラスチックのリサイクル技術の開発

 

nature3d.net

 

greenchemicalsblog.com

 

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