Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

サステナブルで一歩先行く積水ハウスが目指す持続可能な社会

 

 「気候変動」や「SDGs」が世界共通の課題と認識されるようになった。アップルやユニリーバなどのグローバル企業がそうした課題に先駆的に取り組む。国際NGOが主導するRE100などにも参加、事業活動を通して積極的に社会課題を解決しようとする。

 2018年COP24に参加した積水ハウスは「地球温暖化対策で日本は遅れている」と感じたそうだ。日本の「石炭政策」が国際的に批判され、サステナブル、持続可能な社会の実現への道筋が見えない。

 積水ハウスの歩みを振り返ってみる。何か、サステナブルな社会へのヒントがあるかもしれない。

 

 

サステナビリティビジョン2050の公表

 1997年京都市気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)が開催され、「京都議定書」で採択された。地球温暖化防止のため、先進国に対し二酸化炭素など温室効果ガス排出量削減の数値目標を定め、2005年に発効した。

その年、積水ハウスは、早くも「サステナブル・ビジョン」発表、2008年には「2050年ビジョン」を公表し、「脱炭素宣言」を行った。もう10年以上前のことである。

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(資料出所:積水ハウス ホームページ「サステナビリティ ビジョン2050」を策定

 

2008年、北海道洞爺湖で開催されたサミットでは「ゼロエミッションハウス」の建設に積水ハウスは協力していた。「ゼロエミッションハウス」は、14.5kWの大容量の太陽光発電システム・高効率照明・家庭用燃料電池・省エネ家電などを搭載し、日本の最先端エネルギー・環境技術を世界に向け発信した。このサミットでは、地球温暖化対策が主要な議題のひとつであった。

 

東日本大震災の教訓 「東松島市スマート防災エコタウン」

 東日本大震災の被災地であった宮城県東松島市。そこに積水ハウスが設計・施工を手がけた災害公営住宅東松島市スマート防災エコタウン」がある。 

 被災後、停電は5カ月半に及んだ。暖が取れず低体温症で亡くなった人も多かったという。その大震災を教訓として、分散型で電力系統から自立できる地域主体のエネルギーシステム東松島市災害公営住宅の核になった。 

www.news24.jp

 このプロジェクトを率いたのが、積水ハウスの石田常務。

 集合住宅の屋根上や敷地内の調整池に設置した太陽光パネルは、一般家庭100世帯以上の消費電力に相当する計460キロワット分の最大発電能力を持つ。この電気を団地内の各世帯や集会場に供給するほか、市が引いた専用の自営線で送電し近隣4カ所の病院や公共施設で使う電力の一部もまかなう。

非常用のバイオディーゼル発電機も設置、大規模停電が起きても蓄電池と組み合わせて3日間は普段通りに電気を使える。その後も、供給先を団地内の集会場などに絞れば数日間の自活が可能だ。(出所:産経新聞

 

 

 このシステム構築には、5億円の巨費が投じられたという。環境省補助金を活用しつつ、費用は市が負担した。 

しかし東北電力から購入した際の電気料金との差額から、東松島市には毎年数百万円の黒字が発生する。その利益を地域振興などに振り向ける。

街区外の病院などへの送電は、大手電力会社の電線を使えば託送料がかかるが自営線を使うため無料。こうして設備投資額を20年以内に回収できるスキームに仕上げた。(出所:産経新聞) 

 積水ハウスの石田常務は「コストの積算から、電柱や自営線の工事をしてくれる業者探しまで、すべてが手探りだった」と振り返り、阿部秀保市長は「市民の命を守るためには、災害時のエネルギー確保が不可欠だ。安全・安心なまちづくりの新しいモデルになるだろう」と語ったと産経新聞が伝えた。

 こうした電力の自給自足の例は、災害への備えや、脱炭素化へのモデルケースとなる。 

www.sankei.com 

「東松島市スマート防災エコタウン」電力マネジメントシステム稼働開始
~日本初のマイクログリッドで、災害に強く、環境に優しく、地域経済活性化にも貢献するスマートタウンを実現~

 


自前の送電網 電気を地産地消する 宮城・東松島の挑戦

genpatsu.tokyo-np.co.jp

 

 

ZEH ネットゼロエネルギー住宅と「積水ハウスオーナーでんき」

 2013年 積水ハウスはZEHとなる「グリーンファーストゼロ」という住宅の販売を始める。消費されるエネルギーよりも多いエネルギーを創出し、ネットゼロエネルギーの住宅で、国が進める施策にもなっている。

 住宅の断熱性を高めるなどしてより少ないエネルギーでの生活を実現、太陽光発電などで創り出したエネルギーで自給しようとの考えだ。「省エネ」が進み、発電効率が上がれば、ネット・マイナスになり、余剰電力も生じる。

 発売開始から5年、積水ハウス新築戸建ZEH比率79%、累積供給棟数44,247棟を達成したという。 

 

「2019年問題」

住宅用太陽光(10kW未満)は、固定価格買取制度(FIT制度)による電力の買取期間が、2019年11月から順次買取期間満了(卒FIT)を迎える。そのため、卒FITの対象者は、余剰電力の取り扱いを新たに検討していくこととなり、「2019年問題」ともいわれている。(出所:環境ビジネスオンライン) 

www.kankyo-business.jp

 積水ハウスが次に目指すもの

 積水ハウスが脱炭素宣言したのは2008年、もう10年以上前のこと。その翌年には、環境配慮型住宅「グリーンファースト」の発売が始まり、SDGs採択前の2013年からは、エネルギー収支ゼロとなる「グリーンファースト ゼロ」が発売された。2018年度には新築戸建ZEH比率79%を達成し、2020年にはZEH比率80%を目指すという。 

built.itmedia.co.jp

ゼロエネルギーの事業領域は、戸建て住宅だけではなく、賃貸住宅・マンションでの市場創出も見込んでいる。初弾として2019年2月には日本初の全住戸ZEHマンション「グランドメゾン覚王山菊坂町」(RC造・3階建て、12戸)が完成。現在は、全住戸で燃料電池の採用や大開口でもZEHの断熱基準を満たすスーパースペーシア(真空ガラス)を採り入れた36階建ての高層マンションも、2022年11月の竣工予定で計画が進められている。さらにその先には、まだ他社に比べて実績が少ない、非住宅領域のZEBをも見据える。その先駆けとして、2018年9月には、東北初のZEB「Nearly ZEB」を実現したグループ企業である積和建設東北の本社社屋が完成している。(出所:Built ITmedia

 積水ハウスの石田常務は、NHKラジオで、「ゼロエネルギー賃貸住宅」が実は売れ筋なのかもしれないと語っていた。しかし、一方で、そうした市場が存在せず、「お店にない」というのが最大の問題だと指摘する。

 

 国はZEH ネットゼロエネルギー住宅を推進するが認知度は低い。その一方で、石炭火力を基幹電力としたままで、国際協調の輪より外れる。

 

 石田常務は、「企業が安心して脱炭素に取り組むためには、日本政府の明快な目標が必要だと思います」とNHKラジオで語った。

 また、アップルの例をして、「世界の流れに日本は追いつかなくてはならない」とも指摘する。 

例えばRE100の件で言うと、アップルさんなどは、「サプライチェーン全体をRE100にする」と言っています。アップルの部品を日本はたくさん受注してますから、これでRE100にできない企業がいた場合には、「日本の企業に頼んでも脱炭素できない」となる。そうすると、「日本から物を買うのはやめよう」と言われる可能性があると思うんですね。日本がサプライチェーンから外されてしまうおそれがあるわけで、やはり世界の動きの中で日本の立ち位置を考えていかないと、日本の発展はありえないと。(出所:NHKラジオ)

www.nhk.or.jp

 

 まとめ

 積水ハウスが「脱炭素宣言」してから10年以上の歳月が過ぎた。地球環境はさらに劣化し、「気候危機」と言われるようになった。国際会議を通して、様々なタスクフォースが立ち上がり、こうした課題に世界が協調して立ち向かおうとしているようだ。

 積水ハウスもこうした活動に積極的に参画、2018年にはTCFD提言に賛同し、昨年には「TCFD REPORT 2019」を公表、投資家向けにも、「気候変動」によるリスク・機会について、財務情報を含めて開示した。

 

サステナブルな事業を進めても、一企業の努力だけでは、持続可能な社会の実現は難しいし、企業だけの持続性では意味がない。地域、そして、そこに住む人々にとっても持続性が保証されなければ持続可能な社会にはならない。

 街中では、「サステナブル」「エシカル」「SDGs」との言葉が溢れるようになった。少しづつではあるが、土壌が耕され始めてきたのかもしれない。次の10年は持続可能な社会の実現に向け、結果を積み重ねていくことが求められる。SDGsの視点でみれば、「脱炭素」だけが課題ではない。まだ多くの課題がある。

 東松島市での取り組みをひとつの先例として、持続可能な地域、コミュニティを実現していくのも、ひとつの方法なのかもしれない。

  

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ZEHの興味にある方はこちらをチェック。積水ハウス以外のメーカの紹介もあります。

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 「参考文書」

tech.nikkeibp.co.jp

ZEH普及に向けて〜これからの施策展開〜

www.enecho.meti.go.jp

diamond.jp