EUは昨年12月に、2050年に域内のCO2排出を実質ゼロにする目標で合意した。英国に続き、ドイツでも再生可能エネルギーの発電が化石燃料での発電を上回ったという。その実現のために自動車のEV化、再生可能エネルギーを利用する発電への転換を急ぐ。
トヨタがEV化に舵を切った。世界情勢から判断すれば必然そうなる。国際的なイニシアティブRE100に参加する企業が30社に達した。事業に使用する電力が再生可能エネルギー由来でなければ、取引に影響を及ぼすことが現実となりつつある。一部の企業は国際慣行に倣い、脱炭素化路線を歩み始める。
それに反して、数多くの企業がまだ脱炭素化に積極的ではない。そうした中、東京ガスが「CO2ネットゼロ」社会をリードするという経営ビジョンを公表した。
(資料出所:東京ガスホームページ)
経営トップの声
東京ガス内田高史社長は、Forbesのインタビューにこう答える。
「電力会社の脱炭素の取り組みは、発電所の脱石油、脱石炭化や、再生可能エネルギーの活用が中心です。私たちもそれはやりますよ。しかし、分散化の流れの中で、お客様先でCO2を出さない取り組みもやる。両建てで進めるところはほかにあまりないのではないか」(出所:Forbes)
脱炭素化に進む世界的な流れからすれば、生活に必需なガスでさえ、変化しなければ未来がないということであろうか。
再生可能エネルギーと天然ガスの調和
東京ガスが目指すひとつに、「再エネと天然ガスを組み合わせた安定かつ低廉なエネルギー供給」がある。
(資料出所:東京ガスホームページ)
11月末の経営ビジョンの公表に続き、12月初めには新規事業を担う子会社の設立を発表した。一般家庭に分散型となるエネルギーシステムの導入を支援しようとの試みだろうか。
「ヒナタオエナジー」「スミレナ」の2社を設立した。ヒナタオは家庭に太陽光パネルを無償で設置し、発電した電気を販売する事業を手掛ける。スミレナはデジタル技術などを活用し、住宅設備の販売・施工やメンテナンスなどのサービスを展開する。(出所:日本経済新聞)
一方、海外では大規模再生可能エネルギーの獲得に動く。CO2オフセットの狙いもあるのだろうか。
エオリオス・エンテーヘー社は、メキシコで6つの再生可能エネルギー発電プロジェクトへの参画を計画しており、風力発電(トレスメサス3)および太陽光発電(トロンペソン)の2プロジェクトへの出資をこのたび完了しました。他のプロジェクトについても、順次出資していく予定です。また、在メキシコ日系企業をはじめ、再生可能エネルギー電源のニーズがある企業への売電にむけた協議を進めます。(出所:東京ガスニュースリリース)
グリーンイノベーションに向けて 排出されたCO2回収技術
Compass2030では、「2030年に向け、政府が掲げる日本の目標比率を超える、1,000万トン規模の削減に貢献し、地球規模でのCO2排出削減をリードする」とした。平成25年比27%減となる目標だ。
CO2を回収・利用・貯留するCCUSを導入し、メーカーや大学と連携、水素の製造や水素とCO2を合成するメタネーション技術など、脱炭素を推進するコア技術の開発に積極的に投資するとForbesは伝える。
エネルギーソリューションカンパニーへ
経営ビジョン「コンパス2030」からは、ガス供給会社からエネルギーソリューションカンパニーへと転換しようとする文脈が見える。
コア事業である「ガス」では、もう画期的な成長はないかもしれない。そこに再生可能エネルギーでの電力供給が加わり、新たな会社の顔をとなるエネルギーソリューションを創造していく。新技術で脱炭素につなげ、エネルギーソリューションが新たなコアとして成長していく。
画期的な技術は実用化され、利用されて初めてイノベーションになる。東京ガスが起こすイノベーションへの期待は必然高まるだろう。
まとめ
昨年4月に、政府は二酸化炭素の排出を2070年ごろまでに実質ゼロ」とする新たな目標をまとめた。日本経済新聞の同日の報道によれば、
今回の政府目標は水素の製造費を50年までに現在の1割以下にし、天然ガスより割安にして普及を促すことを明記。排出されたCO2を回収し、資源化することで排出を実質ゼロとする。(出所:日本経済新聞)
東京ガスが掲げた経営ビジョンは、政府の目標をそのまま落とし込んだとも映る。
30年度までに13年度比で温暖化ガスを26%削減する足元の目標は据え置いた。17年度までに約8%しか減っておらず、30年度の目標達成は困難な状況だ。足元の削減を先送りしたままでは、温暖化対策で日本がリーダーシップを発揮できるかは疑問が残る。(出所:日本経済新聞)
政府の目標発表から半年以上の時間をおいて、東京ガスは経営ビジョンを発表した。それなりに実現可能と読みもあってのことだろう。
RE100イニシアティブに参加する企業が増え、再生可能エネルギーの需要は今後高まることも予想される。特に、トラッキング付き非化石証書の販売量が圧倒的に不足していると言われる。こうした現状からすれば、新経営ビジョン「コンパス2030」は的を得ているのかもしれない。
一方で、いかなる経営ビジョンを掲げようが、消費者への安定かつ低廉なエネルギー供給という大きな責務に変化はない。
すでに電力が自由化され、Looop、楽天でんきなど基本料金を「ゼロ」にした新電力が登場している。そうした企業との競争もある。納得いく価格でなければ、顧客ロイヤルティは失われる。
RE100に関係する国際NGO CDPジャパンの高瀬香絵シニアマネージャーのコメントをForbesは紹介する。
「究極には総量ゼロが理想ですが、ネット・ゼロは日本どころかグローバルの化石燃料企業でも先進的です。ぜひ世界にアピールして、業界をけん引していただきたい」(出所:Forbes)
顧客あっての企業である。消費者の期待に応えていくことも求められる。
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