Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

電力を選べる時代 自然エネルギーに、再エネの送電ロスを防ぐ地産地消まで

 

 「電力は大規模に発電され、大規模に送電される」

そんな当たりまえことの陰に、大きなロスがあることをGigazineが伝える。

 現在の送電網で電力を送ると、必ず送電ロス(損失)が生じる。そのロスのために、さらに多くの二酸化炭素が排出される。その量は、世界中で年間およそ10億トンになるという。

  二酸化炭素排出削減に向け、再生可能エネルギーによる発電に注目が集まるが、「送電網の改善」には陽が当たっていない。「送電網に焦点を当て、ロスを削減することで、大量の二酸化炭素排出量を削減できる」とGigazineは指摘する。

 

gigazine.net

  

研究チームは多くの国々で再生可能エネルギーを用いた発電が目指されている一方で、送電網の改善に注力する国は依然として少ない点を指摘。たとえ再生可能エネルギーによる発電が実現したとしても、送電網での損失が大きければ結果として投資が無駄になってしまうため、クリーンな発電方法と効率的な送電網の両方を組み合わせることが重要だと主張している。(出所:Gigazine

 

 日本の送電ロスは約5%と言われるが、途上国では50%を超える国もあるようだ。

 

 電力ロスは、国土の広さにも関係する。送電距離が長くなれば、それに比例し増大する。やはり、再エネ利用には、送電距離が短くなる分散型電源が有効ということであろうか。

 国も、再エネの主力電源化を目指してか、今通常国会で、電事法やFIT関連法の改正を審議するようだ。電事法改正で、分散型電源に関連するVPP(=バーチャル・パワー・プラント)仮想発電所の免許制を導入、他業種から参入しやすくするようだ。

 

 

 VPP仮想発電所とは

 VPP(バーチャル・パワー・プラント)とは、小規模な発電所IoTで制御し、一つの仮想発電所のように機能させることをいう。

 電力は、需要と供給が一致しないと停電を起こす可能性がある。北海道胆振東部地震のあとに起きた「ブラックアウト」もこれが原因だった。

 VPPでは、電力の供給者と需要家の間に立って、全体の需給バランスをコントロールする「アグリゲーター」が重要な機能となる。

 

アグリゲーションコーディネーターを中心としたVPPのしくみを図で示しています。

www.enecho.meti.go.jp

 

  

送電ロスが少なくなる地域の電力

 2016年の電力の小売全面自由化を契機に、一般家庭を含め電力会社を選べるようになった。これに加え、昨年からは、“卒FIT”太陽光発電が大量にあらわれ、安価な再エネ電源が活用できるようになり、分散化や地域電力に注目が集まるようになった。

 オリックスは、昨年、東京大学と「ブロックチェーン技術を活用した電力の供給から消費までの履歴を証明するトラッキングシステム」について、共同研究を始めると発表した。

 オリックスによれば、「複数の発電地と消費地の地理的な電力の輸送距離を最小化するシステム「REマイレージ」を開発、再生可能エネルギー地産地消を促し、送電時のロスを軽減し電力の効率利用にもつながる」という。

 

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  脱炭素社会やESG投資への関心が高まりもあり、企業や自治体も再生可能エネルギーの調達に関心をよせる。さらに、消費電力を再生可能エネルギーで100%賄う国際イニシアティブ「RE100」を目指す動きが広がりを見せ、再生可能エネルギーの産地証明の必要性が高まっているという。

  

www.orix.co.jp

 

選べる自然エネルギー地産地消電力

 2016年の電力小売り全面自由化によって、一般家庭でも電力会社を選べるようになり、新電力を通して従来より安い価格で電気を使えるようになった。そんな中で、自然エネルギーの供給を目指す新電力も各地に次々と現れ始め、より環境にやさしい電力を選択できるようにもなってきた。

 こうしたニーズに応えてか、東京都では、「みんなでいっしょに自然の電気」というキャンペーンを立ち上げ、自然エネルギーの推進を図る。

 

「希望者が集まり購買力を高めることで、自然の電気をお得な電気代で利用できる日本初のグループ購入の取組み」

 

第1回キャンペーンでの登録者数は、4,334世帯だったという(1回目の募集は終了)。今後も同様のキャンペーンを実施するという。次回のキャンペーンは春~夏頃とのこと。

 

本キャンペーンの自然の電気の比率は30%以上
本キャンペーンでは、自然の電気が含まれる比率(自然の電気比率)※が30%以上の料金メニューを提供します。自然の電気比率が100%だと電気代が高くなってしまうので、まず身近にお得に自然の電気を使っていただくために30%という基準を設定しました。


自然の電気の定義として、①非FIT電気もしくは②FIT電気と非化石証書などの組み合わせとしています。

FIT電気とは、固定価格買取制度に基づいて電力会社が買い取っている電気です。今はまだコストの高い再生可能エネルギーの導入を支えるために、電力会社が買い取る費用の一部を消費者が支払っている再エネ賦課金で賄っています。

そのため、FIT電気だけでは環境性を売りにした表現での販売は電力の小売営業に関する指針により禁止されていますが、別途電力会社が非化石証書等の環境価値を購入することでFIT電気を実質的な再エネ電気として販売することができます。

 (出所:「みんなでいっしょに自然の電気」東京都 

 

group-buy.jp

 

 

 

「パワーシフトキャンペーン」という組織も、「自然エネルギー供給をめざすパワーシフトな電力会社」として地域新電力を紹介している。

 紹介する基準もWebページ上に明示している。

紹介する基準
1. 電力会社とパワーシフトキャンペーンで共有できていること
2. 電源構成を電力会社ウェブサイトで開示していること
 またはパワーシフト・キャンペーンに提示し、開示計画を示していること
3. 再エネ電源を重視することが電力会社ウェブサイトに記載されていること
4. 持続可能性に注目して発電所を選び、「持続可能ではない発電」を使用していないこと
 または部分的に使用している場合は、メイン電源ではなくかつ懸念表明および減らす計画の表明があること
5. 実績や計画、方針が電力会社とパワーシフトキャンペーンで共有できていること
6. 原子力発電所および石炭火力発電所との直接契約がないこと
7. ・大手電力会社の子会社でないこと
  ・大手電力会社と共同出資会社を設立していないこと
  ・大手電力会社との提携電力プランがないこと

(出所:パワーシフトキャンペーン)

power-shift.org

  

 まとめ

 東京都で始まった「みんなでいっしょに自然の電気」のような活動が全国にも広がって欲しい。東京都のキャンペーンでは、FIT電源についても非化石証書を組み合わせる。このことは購入した電力がCO2削減に貢献している電力ということを意味する。

 東京都が募集した1回目のキャンペーンに4300世帯あまりの参加があったという。この数字が多いのか少ないのかは判断が分かれるのかもしれない。もしかしたら、まだ関心が低いということなのかもしれない。東京都もキャンペーンを継続することので、ニーズを掘り起こし、自然エネルギーの消費に繋げていってほしい。

 地方自治体でも地域新電力が立上がっている。まだ、防災対策の意味もあってか公共施設への供給が優先させるケースが多いようである。東京都の事例につながるような、地域住民が安価に、安心して使える自然エネルギーの輪が広がればと思う。

 

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(資料出所:資源エネルギー庁

 

「関連文書」 

www.nikkei.com

 

www.itmedia.co.jp

dsupplying.hatenablog.com