Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

大量廃棄される衣料品 余剰在庫に挑む「ワールド」

 

 昨年、父が亡くなり、大量の遺品が残った。使えそうなものはメルカリを通して次の使い手さんを探した。まだ残っているのはたくさんの衣服。使えそうもない古びた肌着は泣く泣くごみにしたけど、その他の衣服はまだ残している。着れそうなものは着たいし、今のところ捨てる気はまったくない。父の遺品だからではなく、ごみにしたくないとの気持ちが強い。

 

 

 年間15億着 衣服の大量廃棄

 衣服の廃棄ロスが話題のようである。

 年間15億着、そんな膨大の量の衣服が、理不尽な商慣行のために廃棄さていることに驚くし悲しくなる。

 

 昨年、WWD Japanが、ワールド他が開催したトークイベント「さすてなぶるファッション」の様子を報じた。テーマは「大量廃棄社会にどうファッション産業は向き合っていくのか?を考えたい」。

「大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実」の著者で、朝日新聞記者の仲村和代氏と藤田さつき氏が登壇した。

 

大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実 (光文社新書)

大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実 (光文社新書)

 

 

 このトークショーでも、衣服の大量廃棄について触れる。

なぜこのようなことが起こるかというと、供給量がバブル期の倍に増えているのに対し、消費量がほぼ横ばい。消費しきれない大量の余剰が廃棄されているのです。売れる分だけ作ればいいと考える方も多いと思いますが、安さを実現するためには拠点を海外へ移し、安い単価で大量に作る必要があったのだと思います。この大規模な生産のもう一つの問題が、縫製工場における労働問題です。(出所:WWD Japan)

 と藤田氏は語り、さらに、

「リサイクルされているからいいじゃないかという意見もあり、リサイクルが免罪符のようになっているとも感じました。実際にリサイクル工場に取材に行くと、そこでは処理しきれない量の服が積まれていました。最近増えている化学繊維が交ざった服はリサイクルが難しく、ウエス(雑巾)としても使えない。リサイクルできない服は工場側がさらにお金を払ってRPF化(廃棄物固形燃料化)していました」と話す(出所:WWD Japan)。

 

 

 

 仲村氏は、「私が今日履いている靴下は2000円ほどの少し値段の張るものなのですが、破れたら交換ができる“永久交換保証”をうたうものです。東京・上野に店を構えるこの靴下店はたくさんの商品を置かずセールをしない。1年かけて売り切ることを徹底していて、商品が品薄になった8月には従業員たちの夏休みを設けたそうです。たくさん売ることを目的としないこの靴下店のやり方に、今後業界が目指すべきヒントがあると思いました」と話し、さらに、次のように話す。

 

買う側もみんなが高品質・高価格なものを買えるわけではない、という問題提起があります。その通りだなと思います。以前講演をしたときに、非正規雇用で働く人から「生活が苦しい私にできることは何でしょうか?」と聞かれました。そのように声を上げてくださることに意味があると思います。生活が苦しい理由は必ずしも、当事者に責任があるわけではありません。周りの人がそのことに気がつくために、消費者も作り手も自分の話には価値がないと思わずに発信することが大切だと思います。(出所:WWD Japan)

 

www.wwdjapan.com

 

ワールドが挑む「余剰在庫の廃棄ロス」

 このトークショーを開催したのは、アパレル大手のワールド。そのワールドが昨年、「オフプライスストア」という新業態店を開業した。

様々なブランドの新品の衣料品や雑貨を常時、低価格で販売するのが特徴で、アパレル業界の構造問題とされる余剰在庫の廃棄ロスを減らす一手として期待をかける。定価の5~7割安で販売し、アウトレットより割安という。(出所:日本経済新聞

 

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余剰在庫問題に向き合い、サステナビリティある社会の実現に貢献

什器やショッピングバッグ等の消費財もリサイクル・リユースを基本に。

「アンドブリッジ」は、過剰となった衣料品を再循環させ、価値あるブランドの商品を魅力的な価格でお客様に提供する持続可能な業態モデルを構築していきます。ファッション産業全体の商品ロスを低減することで、SDGs(持続可能な開発目標)、すなわち企業の社会的責任(CSR)を果たす取り組みに繋げていきます。

また、今回は店内の什器やショッピングバッグ等の消費財まで、サステナブルの観点から、リサイクル・リユースを基本に設計し、「アンドブリッジ」全体でサステナビリティある社会の実現に貢献していきます。(出所:ワールドニュースリリース)

 

corp.world.co.jp

 

 

 

オフプライスストアとSDGs 

 こうした動きでは、大量に廃棄物を生み出す根本対策にならないが、その一方で、低価格の商品を求めるニーズがある。メーカとしてはニーズに応えたいであろうし、消費者に色々な選択肢を用意することを一概に非難することは難しい。

 しかし、こうした動きを是認してしまえば、いつまでも過剰生産は続き衣料ロスはなくならないし、大量消費を助長しかねない。

 

 衣料ロスがなくなる日はくるのだろうか。例えば、SDGsがゴールとする10年後には解決されているのだろうか。SDGsは「誰ひとり、とり残さない」ことを目指す。

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 衣料品のサーキュラー・エコノミーに挑戦する人たちもいる、市民レベルでTシャツのアップサイクルに取り組む活動もある。こうした不用品を低価格で販売する人たち、トレーサビリティを明らかにして倫理的な調達活動を推進する人、過剰生産を抑制するためのサプライチェーン改革、市民レベルでのエシカル消費の啓蒙活動、そんなことが重層的に行われて解決されるいくのかもしれない。

 ひとつの活動ですべてが解決されることはない。こうしたことの積み重ねで商慣行が変わっていくのかもしれない。メーカ自ら変わるべきという思いが強いけれども。

 

 

衣料品引き取りリサイクル 「ワールド エコロモ キャンペーン」こども達の未来のために総額 93,910,082円を寄付

 ワールドは、こうした活動も続けている。

 

ワールドグループでは、“リユース、リサイクルを通じて衣料品の価値を最後まで無駄なく活かすこと”を目的に、2009年秋より、社会貢献活動の一環として、お客様の不用な衣料品をお引き取りする「ワールド エコロモ キャンペーン」を行っております。自社製品だけでなく広く他社製品も引き取り対象にし、取り組み開始から11年間の累計で、14,255,943点の衣料品リユース・リサイクルを行いました。2011年秋冬開催からは、衣料品のリユースを行うと共に、収益金は支援を必要とするこども達の未来のために寄付を続けており、2011年からの寄付総額は93,910,082円 となりました。

2019年秋冬キャンペーン(2019年9月4日~2020年1月31日)では、1,021,299点を回収しました。準備が整い次第、3月末に寄付を行う予定です。(出所:PR Times

 

prtimes.jp

 

 

 

「参考文書」

www.nikkei.com

www.tv-tokyo.co.jp