Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

【エシカルとサプライチェーン】アパレルの常識が変わる日がやって来る

 

 フードロスや衣料品の大量廃棄問題などは、サプライチェーンに長く携わってきた人間にとっては関心がある話題だ。 

 「モノ」を買うためには、サプライチェーンがなくてはならない。そのサプライチェーンは、原料の調達から始まり、商品が生産され、マーケティング活動を通して販売される。場合によっては、その先のサービスのことも考えなければならないし、商品が役目を終えて捨てられることまでが対象になる。

 電機業界での仕事だったけれど、同業他社の他、アパレルや食品、小売業などのサプライチェーンを学んでは参考にしたりしていた。

 電機産業が始まって100年強の時間が経過するが、他の産業に比べれば、その歴史は短く、余計な”しがらみ”みたいなものが少ないのかもしれない。

 価格下落の圧力が強く、在庫は「悪」と言われるのが電機業界だ。不要在庫を作ろうものならば、その責を問われることになる。なので、正確な需給予測が求められ、リードタイムを圧縮して、なんとしてでもロスのミニマイズを図っていたものだった。それに加えて、新興勢力の新商品が登場するたびに、新しい管理手法も登場し、従来の習慣が壊されたりもしていた。 

 それに比べると、食品やアパレルなどは歴史も古く、昔からの商習慣などが根強く残る業界なのかもしれないと感じる。 

 

 

 

 

ユニクロ」も異常気象への対応に苦戦中

 二十四節季があって、昔は太陽の光の強さや影の長さで季節を感じた。温暖化の影響なのか、今では気温の方が気になり、あまり季節感を感じなくなったのかもしれない。

  アパレルには、8シーズンMDという習慣があるらしい。季節感が変わってしまう中で、従来の習慣のままで生産をすれば、不要在庫が積み上がってしまうのも理解してしまう。 

 「8シーズンで間に合わないなら、さらにシーズンを小分けにすればいいだけでしょ?」だなんて声が聞こえてきそうだし、それはその通りではある。そうした小分けの考え方を究極まで突き詰めていくと、オンワード樫山が推進するような“マスカスタマイズ”に行き着くのだろう。しかし、“マスカスタマイズ”とは思想を異にする小売店のビジネス、しかもユナイテッドアローズのような規模の大きなビジネスにおいて、シーズンをさらに小分けにし、天候動向も読みながら生産や投入の小回りをきかせていくというのは、想像をはるかに超えて難しいのだ。

 「ユニクロUNIQLO)」「ジーユー(GU)」を擁するファーストリテイリングも、まさにこの問題のハンドリングに苦心している。(出所:WWD Japan)

www.wwdjapan.com

 

 色々調べ回ってみても、アパレルは需給予測が難しいと、誰もが異口同音に、そういう。DIAMOND Chain Storeオンラインの指摘もその一つ。 

diamond-rm.net

 

博報堂が推奨する「サスティナブル・マーケティング」とは

 そんなことがあってのことかどうかはわからないけど、博報堂は、「サスティナブル・マーケティング」を推奨し、顧客をクラスター分類して、商品やブランドのターゲット選定や、ターゲットごとの最適な商品設計やコミュニケーションプランを立案するという。

 こうしたマーケティング手法を利用すれば、大量廃棄される衣料品の余剰在庫問題はなくなるのだろうか。

 

(出所:博報堂プレスリリース)

www.hakuhodo.co.jp

 

 少しばかり違和感を感じたりする。大量消費を助長することにならないであろうか。サスティナブル・マーケティングとは何ぞやと思う。古い習慣を打ち壊すしかけでもあるのであろうか。 

 

 

サブスクはアパレルの常識を壊すのか

 そう思うと、やはりアパレルの余剰在庫解消には、サブスクやシェアリングサービスが有効なのだろうと思ったりする。

 アパレルのサブスクサービスを展開するエアークローゼットを東洋経済オンラインが紹介する。

 古いしがらみに囚われない、こうした新興勢力が業界常識を徐々に壊していくのかもしれない。

toyokeizai.net

 

 エアークローゼットの天沼CEOの言葉を日経ビジネスが紹介する。

単なるレンタル事業だけで 終わるつもりはない

アパレル産業のマーケティングの難しさは、「どんな顧客がどんな商品を気に入っているのか」をデータとして集めづらいという点にある。エアークローゼットは利用者のデータを蓄積しており、どんな属性の人がどんな服を好むのかを統計的に示すことができる。この情報をアパレル企業に提供することで、流行を的確にとらえた服や、より売れる服を作れるようにサポートするのが将来的な目標だ。(出所:日経ビジネス

 

エアークローゼットの考える『サーキュラーエコノミー』の実現

 

受注生産 草木染めのランジェリーブランド「Liv:ra」

 何か変化を起こそうとすれば、必ずそこには抵抗勢力が現れる。AIやブロックチェーン技術を使って、需要予測やトレーサビリティが向上することで、アパレルがよりサスティナブルな業界に変わり、大量廃棄のような問題がなくなれば、SDGsへの貢献度合いも増すだろう。

www.sankeibiz.jp

 

 そんな中で、見つけた、草木染めのランジェリーブランド「Liv:ra」を紹介する記事。

 

本来ファッションは自由を与えてくれるもの

 現状の仕組みをワクワクするものに変えることで、ファッションに関わる人を苦しい状況から解放したいという思いから、一般社団法人TSUNAGUでは、3Dのデザインシステムを使ったプラットフォームを企画し、今年中のローンチをめざしています。

 このシステムを使うと、まるで本物のようなファーストサンプルを3Dで作ることができるようになり、デザイナーは経済的な負担を感じずに、もっと自由なクリエイティブに挑戦することができます。

 公開したデザインから人気のあるものを受注生産のステージに乗せ、受注生産の希望を募ります。工場の生産ロットに見合わなければ生産はしません。つまり誰も大きな負担を負うことなく、確実に販売できるものだけを生産することになるのです。 これはテクノロジーの進化によって可能になる仕組みですが、日本のファッションはテクノロジーの分野では世界に5年くらい遅れをとっていると言われています。(出所:TENABLE)

tenable-media.com

 

 こうした活動があって、縫製工場の生産のしくみも変わり、小ロットでも生産ができるようになることを願ったりする。 

 

 

 まとめ

 単純に自動車や電機などの他業界と比較はできないかもしれないけど、こうした業界では小ロット・混流生産があたりまえに行われている。もちろん最初はメーカが取引先となる協力工場と協働して、そうした問題の解消に取り組んだりした。

 小ロットの生産ができないことはないと思う。他業界の知見を入れてみるのもいいのかもしれない。やったことがない、挑戦したことがないでだけではないであろうか。

 

 DellがカスタマイズPCを注文から2週間で届けると聞いときは驚いた。そのときからサプライチェーンマネジメントSCMに注目が集まった。もう遠い過去のことだけど。

 アップルはものすごい量のアイフォンを生産しているけど、そこにはアップルならではの卓越したサプライチェーンの工夫がある。スティーブ・ジョブズが存命の時、それを実行したのが、今のクックCEO。何でもやればできるということではないであろうか。

 

 何かできそうな気がする。素敵な活動が成就する、そんな日を見てみたい。

 いろいろなところで、ファーストペンギンたちが生まれ始めている気がする。セカンドペンギンが続き始めると業界が変わるのかもしれない。

 

「関連文書」

prtimes.jp