国境の島、長崎県対馬。韓国まで50Km、美しい海が広がるという。天候がよければ、韓国第2の都市、釜山の夜景を見ることができるという。
- 対馬の海岸にたどり着く海洋プラスチックス
- 清掃しても半年で再びごみがあふれかえる海岸
- 対馬に漂着するごみは中国や韓国から
- 伊藤忠商事とテラサイクルがコラボ 漂着ごみをリサイクル
- 循環型経済 サーキュラー・エコノミー
- 「世界はよくなっている」
対馬の海岸にたどり着く海洋プラスチックス
その対馬の海には大量の海洋プラスチックが流れ着くという。大きな島対馬には、海洋プラスチックが漂着する海岸がいくつもある。入り組んだ海岸線でアクセスが難しい海岸には漂着ごみがそのまま堆積しているという。
(写真出所:対馬海ごみ情報センター)
漂着ごみの種類については、容量としては木材類(人工系、自然系)が約4割、プラスチック類(ペットボトル、漁業用ブイを含む)が3割、発泡スチロール類が約2割となっており、これらで全体の約9割を占めていました。また、ペットボトルや漁業用ブイ、発泡スチロール類を含む全プラスチック類は、全体の5割を超えていました (出所:対馬海ごみ情報センター)
清掃しても半年で再びごみがあふれかえる海岸
NPO法人「あらかわクリーンエイド・フォーラム」が、生々しい現地レポートを伝える。
『一度回収したとしても、半年ほどでほぼ同量のごみが再び漂着する』
発泡スチロール製の巨大フロート、硬質プラスチック浮き、漁網、アナゴ筒が目立つ。
しゃがみこんでみると白砂だと思っていたのはバラバラになった発泡スチロールの破片だった。局所的ではあるが、厚さ数十cmは堆積している。ごみの上を歩くとバリッバリッと劣化したプラごみがバラバラに踏み砕かれる。意図せずして、マイクロプラ化に力を貸してしまうような状況だ。(出所:あらかわクリーンエイド・フォーラム)
Marine litter in Tsushima Is., Japan. 対馬クジカ浜の漂着ごみ
対馬に漂着するごみは中国や韓国から
その漂着ごみの多くが、国境を接する韓国や中国からやって来る。国内のものの多く含まれるという。
(資料出所:環境省)
『アジアで洪水が起こると流木の量が増えるなど、海洋ごみの内容にも地球全体の気象の動きが現れていることに気付く』と、対馬市環境対策課課長の舎利倉政司さんの言葉をNippon.comが伝える。
伊藤忠商事とテラサイクルがコラボ 漂着ごみをリサイクル
この対馬の海岸に漂着するごみを伊藤忠商事が、ポリエチレン原料としてリサイクルするという。年間4000トンを生産し、今春にも販売を開始すると時事ドットコムが報じた。
回収される海洋プラスチックを、テラサイクル社の技術を生かして分別・粉砕。プラスチックの素材となるポリエチレンの原料として再生産する。両社は対馬に回収用設備を設置する方向で調整している。(出所:時事ドットコム)
再生される原料は、シャンプーの容器や子ども用玩具の材料になるという。
米テラサイクルは、これまでにリサイクルが難しいと言われるごみなどを回収、さまざまな製品に再生してきた。
また、容器の回収から洗浄、化粧品や飲料などのリフィルをおこなうユニークなプラットフォーム「Loop」を運営する。
TerraCycle®は、「捨てるという概念を捨てよう」というミッションのもと、従来リサイクルが困難なモノを回収し、様々な製品にリサイクルを実現するパイオニア企業です。大手消費財メーカー、小売業者、都市、施設と協働し、使用済みのおむつから、たばこの吸い殻、製品の空き容器やパッケージまで、従来廃棄され、埋立地か焼却所にたどり着くしか道がなかったモノを回収しリサイクルする事業を現在21カ国で展開している。(出所:伊藤忠商事プレスリリース)
伊藤忠商事が、このテラサイクル社に10億円弱を出資し、昨年9月、資本・業務提携した。伊藤忠はリサイクル事業に参入する。
循環型経済 サーキュラー・エコノミー
【3Rにおいてリサイクルは最後の手段】
理想論としてはそう。でもビジネスベースに乗らなければ世の中はなかなか動かない…難しい問題です。(出所:あらかわクリーンエイド・フォーラム)
この伊藤忠のアクションは、まだ理解されにくいことなのかもしれない。
伊藤忠はもっと情報を開示し、消費者の理解を促すべきだと思う。何ができて、何をしようとしているのか。伝えないと理解されることはない。
海岸や川辺で回収されるプラスチックごみは今までどう処理されているのであろうか。
汚れたプラスチック、発泡スチロールにペットボトル、漁具に漁網などなど様々なものがたどり着く。その素材も、PET、ナイロン、ポリプロピレンやアクリル、ABSなどバラバラ、発泡スチロールでさえ、使用用途でポリエチレンやポリスチレンと違う素材をつかう。
そんな雑多なプラスチックを日本の処理システムでは、廃棄物処理業者によって、今まで海外に輸出されたり、熱やCO2を排出するサーマルリサイクルに回されていた。
それをケミカルリサイクルやマテリアルリサイクルに変え、リサイクル原料に変えていく。サーキュラー・エコノミー、循環型経済の考えでもある。
プラスチックス産業によって生み出された商品が、ごみとなり、海洋を漂い、対馬の海岸にたどり着く。それを回収しリサイクルして新たな原料にする。プラスチックスに携わる企業の責務だろう。
何かが変わらなければ、日本のリサイクルの仕組みやプラスチック産業に変化が起きない。
「世界はよくなっている」
プラスチックスの使用量を減らし、リユースする。ポイ捨てをなくす。それに加え、ごみを回収しリサイクルする。 そうした活動が組み合わされて、少しずつ海洋ごみが減っていき、理想的な姿に近づいていく。もしかしたら、こうした重層的な活動が続けることが理想的な世界なのかもしれない。
電機メーカにいたとき、伊藤忠とはプラスチック素材で取引があったことを思い出す。東レのエンジニアリングプラスチックだったであろうか。
対馬の対岸、韓国の麗水(ヨス)市に韓国大手のプラスチックメーカの工場がある。そこを訪問したことがある。商社(伊藤忠ではない)とそのメーカとの3社で、その工場で製造されるプラスチックスを、オープンか、クローズドでリサイクルできないかと何度か話し合ったことを思い出す。
この話し合いはコストの問題で断念せざるを得なかった。そんな苦い経験からすれば、今回の話に惹かれてしまう。
「関連文書」
2020.12.23 対馬の海洋ごみ問題をFNNプライムが伝えた。
「参考文書」