Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

神奈川県が公表した「かながわ気候非常事態宣言」の内容から思うこと

  

 日経ビジネスで記事を書く、エコノミストの上野氏の論調が今年に入り変わってきたように思う。人口動態重視のエコノミストと自負する上野氏が「気候変動」を触れるということは、それだけ無視できない動きが多くなってきたということであろうか。

 

 

気候変動リスクへ警鐘を鳴らす要人メッセージ

 その日経ビジネスの記事を書いた上野氏によれば、日本経済新聞(電子版)は、BIS(国際決済銀行)のメッセージをよりダイレクトに伝える見出し「気候変動『金融危機引き起こしうる』 国際決済銀が警鐘」という見出しをつけて報道したという。

地球温暖化が原因の自然災害で経済損失が生じる「物理的リスク」と、低炭素社会に転換する過程で関連資産や企業が影響を受ける「移行リスク」が複雑に絡み合い、「壊滅的で不可逆的な衝撃をもたらすかもしれない」というBISの指摘を率直に伝えた。(出所:日経ビジネス

 

business.nikkei.com

 

 上野氏は、先の首相の施政方針演説を持ち出し解説、『気候変動リスクはやはり、目先の経済成長うんぬんよりもはるかに次元が高い難題である』と結論づけている。 

(気候変動について)単独の章を設けなかったことを含め、安倍内閣による気候変動問題への取り組み姿勢はなお不十分という印象を受ける。(出所:日経ビジネス

 

 気候変動にあまり関心を寄せていなかったエコノミストたちも意識せざるを得ない状況変化があるのであろうか。

 

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(写真出所:World Economic Forum )

 

 先のダボス会議 世界経済フォーラム年次総会2020でも、最大の焦点となったのは気候変動だった。

 グテーレス国連事務総長は、「気候変動が地球を殺すことはなくとも、人類を殺す可能性はあるのです」と年次総会で演説した。

 

 

 

SDGs先進県神奈川が「かながわ気候非常事態宣言」

 SDGs先進県を自負する神奈川県が「かながわ気候非常事態宣言」を公表した。黒岩神奈川県知事は記者会見で「(国連が掲げる持続可能な開発目標)SDGs最先進県として、新たなステージに挑戦する決意を込めた」と述べたと日本経済新聞が報道した。 

目玉は風水害対策だ。19年に複数発生した大型台風による被害を教訓として、気候非常事態宣言には「災害に強いまちづくりなどの『適応策』と温室効果ガスの削減を図る『緩和策』などに『オール神奈川』で取り組む」と明記。氾濫などの危険性がある河川に堤防を作ったり、堆積土砂を撤去したりする。(出所:日本経済新聞

 

www.nikkei.com

 

 台風19号のとき、城山ダム緊急放水に対する一連の動きについて会見した黒岩知事の姿を思い出す。神奈川県が公表した内容を確認すると、より「適応策」を意識した内容に見える。黒岩知事の思いが反映されたのであろうか。

 

かながわ気候非常事態宣言 〜いのちを守る持続可能な神奈川の実現に向けて〜

本県はSDGs最先進県として、今、気候が非常事態にあるという「危機感」を市町村、企業、アカデミア、団体、県⺠の皆様と共有し、ともに「⾏動」していくことを目的に、気候非常事態を宣言します。
今後、「誰⼀⼈取り残さない」というSDGsの理念を踏まえ、「県⺠のいのちを守る持続可能な神奈川」の実現に向けて、県内市町村の理解・協⼒のもと、企業、アカデミア、団体、県⺠の皆様など多様な主体と連携し、次の3つを基本的な柱として、災害に強いまちづくりなどの「適応策」と温室効果ガスの削減を図る「緩和策」などに「オール神奈川」で取り組んでいきます。

 

1 今のいのちを守るため、⾵⽔害対策等の強化

風水害対策の強化に向けて、河川、急傾斜地等のハード対策の前倒し、市町村との情報受伝達機能の強化、市町村の水害対策への支援等ハード・ソフト両⾯から水防災戦略を進める。


2 未来のいのちを守るため、2050 年の「脱炭素社会」の実現に向けた取組みの推進

「脱炭素社会」の実現に向けて、県有施設の再生可能エネルギー100%化を目指した取組み(再エネ 100 宣⾔ RE Action 参加)や、「アクア de パワーかながわ」を活用した再生可能エネルギー地産地消及び気候変動対策に係る取組みなどを推進する。
また、太陽光等再生可能エネルギー等の導⼊、燃料電池自動⾞の導⼊促進等「かながわスマートエネルギー計画」の推進とともに、森林整備など⼆酸化炭素吸収源対策の充実を図る。

 

3 気候変動問題の共有に向けた、情報提供・普及啓発の充実

気候変動問題の共有に向けて、小・中学校、⾼校における環境学習や防災教育の推進とともに、⾼校生のSDGs探求支援など次世代による⾏動を促す。加えて、気候変動をテーマとした新たな環境学習教材の作成等による普及啓発を進める。

(内容出所:神奈川県ホームページ) 

 

 気候変動への緩和策がもう少し野心的であっても良いのではと思うが、県として、非常事態を宣言して、気候変動が危機的状況にあることを県下の市町村や企業、県民と共有することは評価されるし、他の自治体も続いて欲しいと思う。

 

 

 

GPIF 「スチュワードシップ活動原則」改訂 ESGを重視へ

  厚生年金国民年金の積立金の管理・運用を行っているGPIF 年金積立金管理運用独立行政法人が、運用受託機関にスチュワードシップ活動の強化を義務化した「スチュワードシップ活動原則」を改訂した。

 この原則では、『運用受託機関は、重大な ESG 課題について、投資家として考える目標を示し、積極的にエンゲージメントを行うこと』など、ESG投資についても規定されている。

ESG投資とは

 環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の英語の頭文字を合わせた言葉がESG。

 

(資料出所: 年金積立金管理運用独立行政法人) 

 

重視されるエンゲージメント 対話と連携

 ここ最近、「対話」と「連携」が強調されるいると感じる。あらゆるステークホルダーと対話し、政策立案者、大企業、起業家が、足並みをそろえて連携することの重要性だと聞く。

 

ドイツのメルケル首相は、ダボス会議の特別講演の中で、社会の断絶について懸念を表明し「他者との話し合いは冷戦時代よりも困難になっている」と発言したという。 

異なる意見の相手とは意思疎通の可能性がないから話したくない。そういう傾向が社会に顕著に見受けられることには、深刻な懸念を抱いています」

「冷戦時代でも、両陣営間にはきちんとしたコミュニケーション・チャネルが存在していました。もしかしたら今の世界の方が、当時より話し合いの機会が欠如しているかもしれません。だとすれば、皆さんにお願いします。他者と話し合うことが困難だとわかっても、どうか話し合いを放棄しないでください。あきらめれば、我々はデジタルの波に呑み込まれてしまうでしょう。そして、同じ考えの人とばかり語り合うようになるでしょう。そうなれば、大惨事を招くことになります」(出所:世界経済フォーラムWebページ)

 

jp.weforum.org


 多様な意見を認め合い、「気候変動対策」が多層的に実行されることで、持続可能な社会「サステナビリティ」に近づいていくと思う。

 

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 (写真出所:World Economic Forum | Flickr

 

 

 


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