新型コロナウィルスの影響でサプライチェーンが混乱を続ける。ロイターが、アメリカでもマスク不足が深刻化していると伝える。少しばかり考えさせれる記事だ。
米国でマスクなど衛生用品のサプライチェーン(製品の調達・供給網)の状況悪化が続いている。マスクや手袋、防護服はすでに米国による中国製品の輸入関税引き上げの影響で在庫が圧迫され、ジャスト・イン・タイム方式(カンバン方式)の在庫管理に影響を与えていた。
平常時でさえ米国の衛生用品は供給がぎりぎりだ。倉庫に入るときと販売するときの間隔を短縮する生産方式のためだ。(出所:ロイター)
トヨタのカンバン方式ジャスト・イン・タイムとリーン生産方式
トヨタのカンバン方式ジャスト・イン・タイムの考えが、アメリカの貿易にも利用されていることに少しばかり驚いた。
「ジャスト・イン・タイム」はトヨタが開発した生産管理方式。 「必要なものを必要な時に必要なだけつくって運ぶ」という考え方に基づき、在庫を持たず、「適量生産」するしくみだ。
米MIT(マサチューセッツ工科大学)が、この「ジャスト・イン・タイム」が徹底的に研究し、リーン生産方式となり、アマゾンやスターバックス、ナイキなどグローバル企業などを中心に定着していった。
マスク不足 効率的なサプライチェーンは突発的な需要に対応できない
この方式に従えば、一定程度の回転在庫は確保されているが、予測以上に急激に需要が伸びれば不足が生じる。需給予測をもとに工場の生産能力が設定されているので、急激な変化にはすぐに対応できない。設備増強して生産能力をあげるしかない。
米国で起きているマスク不足も、日本の場合と原因の根っこは同じなのかもしれない。
適量に生産されるがために不足が発生する。安価を求めたがために、サプライチェーンが長大化、消費地から離れたところで「ものづくり」することになった。マスク不足はその弊害がなのかもしれない。必要なものが必要な時に届かない。
国内への生産回帰は必要か
トランプ支持でも、保護主義者ではないが、ロイターの指摘も考慮する必要があるのかもしれない。
トランプ政権は通商から移民まで、さまざまな面で保護主義的な見解を取っている。衛生用品のサプライチェーンにも同様の哲学を持ち込む可能性はある。製品に一定の国内調達比率を命じることなどだ。こうしたことは、米国民に今は役立たないが、将来への準備では助けにはなるだろう。(出所:ロイター)
地産地消というマーケット
かつて勤めていた電機会社では、一時、半径200km圏内の企業から物品を購入して「ものづくり」しようとした。
そうした考えで、マーケットを作ることを考えてもいいのかもしれない。「地産地消」という考えそのものではあるが。
売上や利益の最大化を目的とするのではなく、小規模のオペレーションで、生産効率を高めて必要量だけ作る。
そんな生産機能を国内にいくつか残す必要があったのかもしれない。今の事態をみれば、こうしたことも「社会貢献」につながる。
シェア争いという概念を捨てる
勤めていた会社では、売上・利益を伸ばそうと常に競合他社とのシェア争いを繰り広げていた。1位を取るために、競合他社のことまで徹底的に調べ上げたりもした。あるとき、2位や3位じゃいけないのかという議論になり、そちらに舵を切ることにした。利益確保のためにムダを排除しながら、こだわった新製品を準備、プロダクトミックスを変えていくことにした。
思うようにマーケットが反応した訳ではなかったが、それでも、あえてシェア争いから離脱してみると副次効果はあったことを思い出す。
サステナビリティ 「ほどよい量をつくる」を考えてみるとき
消費地の近くで「ほどよい量をつくる」ということが、ムダをなくし、大量廃棄を防ぎ、「社会貢献」につながるのかもしれない。
今ある様々な社会課題を考えれば、経済のしくみや商習慣を変えていかなければならないのだろう。
SDGsが世界共通の認識になり、社会貢献が問われている。今までの売上や利益だけが会社の成績を評価する尺度はなくなってきている。
投資の世界もESG投資に軸足を移しつつある。社会貢献しながら利益を上げ、持続性「サスティナビリティ」が求められる時代になってきている。
「ほどよい量をつくる」(甲斐かおり著)の要約はこちらで確認できます。