石油価格が下落している。中国での需要減に加え、サウジアラビアの増産決定が影響しているようだ。
石油需要の減少は地球温暖化にとってはプラスであるはずだが、まだまだ世界経済は石油に依存しているのだろうか、価格低迷による経済への波及を危惧する声が大きい。
経済停滞。今まで、脱石油を進めてきた企業にも影響してしまうのであろうか。
- 気候変動に本気で取り組むナイキの「Move to Zero」
- ナイキのパーパスとそれを具現化した「ナイキスペースヒッピー」
- パタゴニアは「故郷である地球を救うためにビジネスを営む」という
- 脱石油を目指して
気候変動に本気で取り組むナイキの「Move to Zero」
米ナイキは昨年、「Move to Zero」という気候変動の取り組みを発表した。
ナイキによれば、世界中で華氏90度(摂氏32.2度)を超える日数が1980年代に比べ25%増加したという。こうした気候変動がスポーツにも影響を及ぼしているという。
昨年、9月末に中東ドーハで開催された世界陸上のマラソン、競歩では真夜中のスタートであったにもかかわらず、多くの棄権者が出た。
30℃以上の気温、高い湿度という悪条件下がアスリートを苦しめた。
こうした惨劇もあって、東京オリンピックのマラソンと競歩は札幌に開催地が変更になった。
ナイキが、「Move to Zero」で「炭素排出ゼロ」を目指し、スポーツの未来を守ることがナイキの挑戦だと宣言することに強く共感できる。
主なMove to Zeroの取り組み
・ナイキは2050年までに、ナイキ所有及び運営する施設の100%再生エネルギーでの稼働を目指します。・ナイキは2015年パリ協定に即し、2030年までに世界のサプライチェーン全体からの炭素排出量を30%削減します。
・ナイキは全てのフットウェア生産過程から生まれた廃棄物の99%を、廃棄せず再活用します。
・ナイキは1年に10億本以上のプラスティックボトルを廃棄する代わりに再利用し、新しいジャージやフライニットシューズのアッパーのための糸を作ります。
・Reuse-A-Shoeとナイキグラインドの各プログラムは、廃棄物を新しいプロダクト、遊び場の路面や陸上のトラックやコートに変えています。
(出所:Nike プレスリリース)
ナイキのパーパスとそれを具現化した「ナイキスペースヒッピー」
ナイキは、自らのパーパスを説明する。
PURPOSE MOVES US
Our purpose is to unite the world through sport to create a healthy planet, active communities and an equal playing field for all.
そのコンセプトモデルということであろうか、「ナイキスペースヒッピー」という新たなコレクションを発表した。
気象変動問題の緊急性に対応する一歩として、重大な環境問題を解決するための大胆な対策を考えました。その結果、ナイキ史上最低の炭素排出スコアで生産されたフットウェアが誕生しました。(出所:Nike プレスリリース)
パタゴニアは「故郷である地球を救うためにビジネスを営む」という
パタゴニアで企業理念の責任者「Director of Philosophy」を務めるヴィンセント・スタンリー氏がサステナブル・ブランド国際会議2020横浜に登壇、そのスピーチの様子をサステナブルブランドジャパンが伝える。
パタゴニアが今まで「どうビジネスを変革してきたか」の歴史を辿るスピーチだったようだ。
1993年、パタゴニアは、回収したペットボトルを使って再生フリースを製造し始めた。1994年、オーガニックコットンの使用を始め、1996年、コットン製品をすべて100%オーガニックコットンに切り替えたという。今、パタゴニアは、食品事業「パタゴニア プロビジョンズ」を立ち上げ、農業を通して地球環境を再生していくことを目指しているという。
「環境の危機的状況に対する切迫感と、これまでに学び得てきた環境再生型有機農業を通して、パタゴニアは地球から搾取する以上に何をもたらすことができるか――。そう考えることで、2018年12月、私たちの事業の根幹となるミッションが大きく変わりました」 (出所:サステナブルブランドジャパン)
今、パタゴニアは、新たなミッションを掲げる。
「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」。
ビジネスを手段に自然を保護するといい、従来のやり方にとらわれないという。
パタゴニアの食品事業「パタゴニア プロビジョンズ」はもうすでに始まっている。環境再生型農業で育てられた大豆を食材にした製品が販売されている。
パタゴニアは2025年までにカーボンニュートラルを達成することを宣言している。そして、新たな化石燃料の製品への使用を2025年までにやめる方針だ。来年までにはその目標の80%が達成できる見込みという。「これは大きな成果です。なぜならパタゴニアが排出する二酸化炭素の85%は布製品から出ているからです」とスタンリー氏は語った。
(出所:サステナブルブランドジャパン)
脱石油を目指して
世界は石油に翻弄され続けてきた。石油が政治にも強く影響した。1973年の第四次中東戦争で第一次オイルショックが起きた。日本では「狂乱物価」というインフレがおき、トイレットペーパーの買い占め騒動が起こり、高度経済成長が終焉したといわれる。
1985年にはサウジアラビアが増産したことで石油価格が下落、ソビエト連邦を崩壊を追い込んだ。ソビエト崩壊後、グローバル化が一気に進み、今日に至る。
今回の石油下落はどんな影響を及ぼすのだろうか。
石油によって、私たちの暮らしが翻弄されるのは、何かおかしいような気がする。
今あるペットボトルや衣料品を資源として利活用し、真に、石油への依存を可及的速やかに低減させていく必要があるのかもしれない。Nikeやパタゴニアの行動が賢明に映る。
Nikeが発表した新たなシューズの名にある「ヒッピー」は何を意味しているのだろうか。もしかして、それは「脱石油」という強い意志の現われなのかもしれない。
「関連文書」
「参考文書」