新型コロナの状況を見ると、忘れかけていたSARSのときのことを思い出す。その当時、シンガポールに駐在していた。シンガポールはSARSが急拡大した国のひとつだった。
現地スタッフはエピデミックでなく、もうパンデミックだといい、かなり深刻に事態を受け止めていた。会社は、海外への渡航禁止、医療用マスクN95をスタッフ全員に支給、一日2度の体温測定を義務化した。取引先を訪問しても、必ず入門時体温チェックを受けるのがあたりまえだった。多少なりとも不安を感じているときに、日本本社からは、シンガポール駐在員に対して「帰国禁止令」が出た。これが一番ショックだった。
幸い、駐在していたシンガポールの現地会社からはSARS感染者をひとりも出すことなく終息していった。
おかれている環境によって、こうした感染症の受け止め方に差があるのかもしれない。
Facebookからしばらく離れていたが、こういうときには海外に暮らす仲間の情報が役立つ。何せ、海外のニュース報道の方が明らかに露骨で現実的だ。そうした内容や現地の状況、人の心理みないなものが伝わってくる。
東南アジアや中国にいる仲間が多い。やはり気にしていることがひしひしと伝わってくる。ある仲間は現地の新聞をそのまま投稿し、違う仲間はマレーシアの生の状況を伝える。道路を封鎖して、コロナウィルスチェックなのか、検温しているのか、渋滞を起こしている写真があったりする。
昨日3月23日、東京都の小池知事が「新型コロナウイルス感染症に対する対応方針について」記者会見を行った。現実的でわかりやすい会見だと思う。
何か重大なことをやる可能性が高まれば、混乱をさけるために、事前に情報を伝えるもの。
さて、昨今の東京の傾向として挙げられますのは二つございます。まず海外から帰国した感染者、そして、感染源が特定されない感染者が増えているということであります。
・・・世界各地で都市が封鎖されている、いわゆるロックダウンをされているところで、海外から多くの在留邦人が帰ってこられるという状況がございます。こうした方々を起点とするクラスターが形成されるおそれがあるとのことで、そのクラスターの連鎖や、大規模なメガクラスターになったときには、感染者の爆発的な増加、いわゆるオーバーシュートが発生しかねないということでございます。そうなりますと、強力な社会的な隔離策をとる以外に、逆に選択肢がなくなるということでございます・・・
東京においては、ピーク時の外来患者数が1日約4万人、入院患者数が約2万人を超えると推計されています。この推計は、公衆衛生上の対策を行わなかった場合、ビジネス・アズ・ユージュアルの場合の数字でありますが、引き続き、予断を許さないという状況には変わりはございません。この3週間、先ほど申し上げましたように、オーバーシュートが発生するか否かの大変重要な分かれ目、分かれ道であるということでございます。
(出所:東京都ホームページ 小池知事「知事の部屋」/記者会見(令和2年3月23日))
小池知事は若い世代へ責任ある行動を求め、それが最大のメッセージだという。長い引用になるが、その方が伝わると思うので、そのまま転載する。
この季節は、入学、そして入社を控え、夢膨らませて上京される方々も多い季節でございます。しかし一方で、この専門家の皆様方のご指摘のように、感染しても症状の出ない若い方々が無自覚のうちにウイルスを拡散させてしまうということが懸念されるわけであります。
このように若い方々から高齢者や基礎疾患がある方へと感染が広がって、重症者が増加するという傾向は何としてでも避けなければならない状況となります。こうした危機意識を、改めて都民の皆様、特に若い皆様方と共有したいということが、最大のメッセージでございます・・・何度も申し上げますが、感染者の爆発的な増加、いわゆるオーバーシュートを回避して、命を守るためのご協力、何とぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。一方で、事態の今後の推移によりましては、都市の封鎖、いわゆるロックダウンなど、強力な措置をとらざるを得ない状況が出てくる可能性があります。そのことを何としても避けなければならない。そのためにも、引き続き、都民の皆様のご協力、さらに一層のご協力をよろしくお願いを申し上げて、私からのご報告とさせていただきます。
(出所:東京都ホームページ 小池知事「知事の部屋」/記者会見(令和2年3月23日))
(資料出所:東京都ホームページ「新型コロナウイルス感染症対策 都としての新たな対応方針」)
ある記者は、「今、東京で欧米の大都市のようにですね、大規模なロックダウンのようなものが必要でない状況で保たれているというのは、どういうふうに考えるべきなんでしょうか。例えば、握手やハグなどの習慣がないということだけでそれは保たれているということなのか、それとも、感染者のケースを見落としているという可能性のほうが高いのか、ご見解を伺いたいと思います」と質問する。
今、踏みとどまっている状況についての感想ということで、・・・一方で、私はやはり国民皆保険というのがしっかり整っているということと、国民、都民の衛生に対しての観念が、非常にしっかりしているということも一つあるのではないかと思います。よって、都民の皆様方のこの健康に対しての様々な知識や、それから落ちついた行動などによって支えられていて、そして、医療の現場におられる大曲先生のような方々に本当に頑張っていただいているということ、これら両方からの面で今の状況、日本の状況と東京の状況があるのではないかと思います。(出所:東京都ホームページ 小池知事「知事の部屋」/記者会見(令和2年3月23日))
日本経済新聞は、小池都知事の記者会見の模様を以下のように伝える。小池知事の危機意識は伝わっているのだろうか。
東京都は23日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、拡大防止のための「新たな対応方針」を公表した。重症患者の入院を受け入れる病床700床を整備するほか、テレワークの推進などを盛り込んだ。小池百合子知事は感染者が大きく増えると首都封鎖となる可能性を指摘し、都民や事業者への幅広い協力を呼びかけた。(出所:日本経済新聞)
小池知事は記者の質問に答える形で、今後の見通しを以下のように説明した。
専門家の皆様方との意見交換会でご提供いただいた推計によりますと、3月25日(水曜日)までの間に患者さんは、現状の対策のままでいくと51名、重篤者4名、それから、皆さんのところにもお配りしているかと思いますが、そして、次の7日間、4月1日(水曜日)までですけれども、患者さんが159、重篤者12、次の7日間で、4月8日(水曜日)でありますが、患者さんは320で、うち重篤者が25と。そこで、よって、感染者報告数が増加する見通しがあり、次第に厳しくなる重篤者への医療提供を早急に検討する必要があるということでございまして、先ほど梶原副知事からお答えいたしましたように、医療態勢をしっかりと準備していくということで進めているところでございます。
(出所:東京都ホームページ 小池知事「知事の部屋」/記者会見(令和2年3月23日)
受け止め方は個人によって、差があって当然かもしれない。知らないことは危険なことに自分の身を晒すことになるかもしれない。
新型コロナである。今までに誰も知らなかった未知のウィルスである。今までの知識や経験が役立つわけではない。参考になるのは、先に抑え込み成功した台湾、中国、韓国などの事例なのであろうか。
SDGsの目標にも、「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」とある。世界が協力して対処することが、今求められているのだろう。
「関連文書」