Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

コロナで、SDGsやサスティナビリティは変わってしまうのだろうか

 

 コロナが世界に感染拡大する前までは、SDGsや気候変動がメガトレンドになっていた。拡大を続けるコロナを終息させることが第一優先になり、気候変動対応の優先順位が下がる。理解はできても、已む無しなことと言ってしまっていいのだろうか。

 コロナで危機的な状況にある中にあっても、世界のメディアから気候変動対応への遅れを危惧する記事が出てくるようになった。

 

 グローバル企業が挙ってサーキュラー・エコノミーへの移行を鮮明にし、素材のリサイクルが加速した感があった。その影響もあってか、昨年から使用済ペットボトルの価格が高騰、再生プラスチックがバージンプラスチックよりも高価になったと聞く。しかし、このコロナ禍で原油価格が暴落、今では、バージンプラスチックを使用したほうが、再生プラスチックを使用するより、メーカにとっては経済的に意味があるとの指摘が増える。

 "eco business"によれば、ある政府は、消費者にとってより安全であると考えられる使い捨てプラスチックに対する制限を緩和したといい、小売業者は、ウイルスの拡散のリスクを低減するために自分で容器を持ち込むことを禁止する動きもあると指摘する。

こうしたことはプラスチックスの需要が増えることになり、これまでのトレンドに逆行する。

世界的にどこまで景気の後退が起こるかまだわからない。 大きな打撃を受けた企業が、サスティナビリティから資金をシフトさせる可能性があることを危惧する意見も多いようだ。 「企業は生き残る必要がある」ということを理由にして、仮にこうした流れが大規模に行われるようになると、新たな大きな災害だとの指摘もある。

 

 

 

 昨年、グローバル企業が相次いで、カーボンニュートラルを目指すと表明した。アフターコロナの世界でも、このトレンドは維持されていくのであろうか。

 オーストラリアのInside Retailは中国の自動車産業の動向を指摘する。

EVの世界最大の市場である中国では、乗用車の販売は先月減少したという。中国のEVメーカであるBYDは、先月、5,501台の車を販売したが、79.5%減だった。フォルクスワーゲンの中国でのEVのパートナーJACは、2月に売り上げ台数を63.4%減少させ11,550台の販売にとどまったという。

ブルームバーグニューエネルギーファイナンスの予測によると、今年の世界の太陽光発電の需要は16%減少すると予想されるといい、増加し続けていた太陽光発電容量が減少に転じる可能性があるという。

サスティナビリティはもはや小売業者および消費者の課題の最上位ではないため、製品とオペレーションでのサスティナビリティを改善するために材料、ロジスティクス、および生産プロセスに変更を加えることは遅延するだろう」とInside Retailは指摘する。

 

そうした影響が危惧される中、国内では、トヨタが「再生可能エネルギー発電事業を推進する「トヨタグリーンエナジー」を設立」と発表した。

 トヨタによれば、トヨタ中部電力豊田通商の3社が、「トヨタグリーンエナジー有限責任事業組合」を共同で設立することに合意したという。トヨタグリーンエナジーは、国内の再生可能エネルギー電源の取得、運営を行い、将来的にはトヨタグループへの供給を目指すという。

 

global.toyota

 

 IT media スマートジャパンは、「トヨタグリーンエナジーは事業運営を通じて、再生可能エネルギー電源の自立化に向けたコストダウンや設備の長寿命化・リプレースなどを通じたサステナビリティの確保にも協力して取り組む」と解説する。

 トヨタのノウハウが、再生可能エネルギー電源に活かされていくことに興味がそそられるし、その拡大に期待をよせる。

 

www.itmedia.co.jp

 

 

先日、環境省は、「パリ協定」における「温室効果ガス削減目標を据え置いた」と発表した。日本経済新聞は、この決定について、「コロナ後の気候変動対策 周到で分かりやすい戦略を」というコラムを投稿、その内容について解説、提言を行う。

 

わが国は、CO2回収・有効利用・貯留・固定の技術で世界の先頭を走る」と宣言するのなら、さらに明快なストーリーを発信した方がよい。(出所:日本経済新聞

 

www.nikkei.com

 

相変わらず、技術オリエンテッド(=技術ありき)で世界をリードしたいとの姿勢のようだが、内実がともなっていないようにコラムからは読み取れる。

 国によって解決手法は異なることになるのは当然なことなのかもしれないが、欧州とは全く異なる方法でアプローチしている。

ドイツは石炭火力全廃を宣言し、削減目標積み上げに向け政策実行を進める。

 技術開発を進めること自体は否定されるものではなろうが、その成果を待つばかりであれば、なんら削減目標を良くしていこうとの政策が進むことはない。エネルギーの安定供給を正当化するための言い訳だけになる。石炭火力発電所は今も建設が続き、そのための口実に利用することもできる。

 

 昨日4月7日、コロナの感染拡大についての「非常事態宣言」について首相の記者会見があった。すべての題材が揃わないと発言ができないのだろうかと感じてしまった。

「国家的な危機に当たり、国民の命と健康を守ることを第一に、感染拡大防止に向けた取り組みを進めていく」

「命」を優先するなら、何よりも速やかな行動が優先されなければ感染の拡大を止めることはできない。確実に成果が上がることばかりを追い求め、石橋を叩いているのであれば、何ら意味をなさない。

緊急を要する案件が不得手のように感じるし、緊急ということを知らないのかもしれない。

 

「関連文書」

dsupplying.hatenablog.com

 

「参考文書」

www.eco-business.com

insideretail.com.au

www.theplasticsexchange.com

 

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