AIなどの先端テクノロジーが、この先も何もかも問題をすべて解決してくれると思っていた。しかし、それは幻想だったのかもしれない。
1.9兆円もの損失を計上した「ビジョンファンド」の業績に愕然とする。
未来を急ぎ過ぎた結果なのだろうか。
ソフトバンクグループの孫正義さんがオンライン決算説明会で、10兆円規模のビジョン・ファンドの投資先約90社について「15社が倒産するが、15社が大きく成功する」との見通しを示したと日本経済新聞が伝える。
2021年3月期に投資先の評価損がさらに出る可能性があるが「成功する15社が10年後、ファンドが出資した企業価値の90%を占めるようになる」と述べ、ファンド事業を支えると強調した。 (出所:日本経済新聞)
「成功する15社と失敗する15社」。厳しい現実。それが現代なのかもしれない。
何か火中の栗でもを拾わされているようにみえる。しかし、拾った栗には実はないということであろうか。
露呈するデジタル化の矛盾
「18日に発表された1─3月期の国内総生産(GDP)段階では年率1桁の減少にとどまったが、新型コロナウイルスの影響が本格的に出てくる4─6月期は20%前後の落ち込みが予想され、日本経済は戦後最悪の状態となりそうだ」とロイターが伝える。
緊急事態宣言の解除後も、経済規模がコロナ前の水準に戻るには1年以上かかるとの見方もある。感染防止と経済再生のキーは「デジタル化」だが、政府や企業にとって苦手分野である現状が浮き彫りとなっている。(出所:ロイター)
AIという近未来に投資し、大博打を打つ企業がある一方で、感染防止のキーとされるデジタル化に取り残される企業がごまんとある。 何か滑稽に感じる。
変わる企業価値 従業員の幸福度を優先へ
新型コロナによる深刻な事態は、ウォール街の意識にも大きな変化を引き起こしているとロイターが伝える。
先日、ある人から『E(環境)は二の次で重要ではなくなってしまったのか』と尋ねられた。
私は『いや、そうではない。むしろS(社会)が前面に出てきたということだ』と答えた。 (出所:ロイター)
ESG(環境・社会・統治)投資は新型コロナ流行前から注目され、人気が高まっていた。気候変動に関わる「E」:環境問題が、その人気を牽引していた。
そうした流れにあって、このコロナで従業員の幸福を含む「S」(Society、社会)が急浮上してきているいう。
「より良いことをする」企業は、自動的に投資家にとってさらに魅力的になるのだろうか。
「向こう5─10年で社会的な意識を強く持っている企業に投資家は魅力を感じると思うかと尋ねられれば、答えは間違いなくイエスだ」(出所:ロイター)
アマゾンのジェフ・ベゾス氏も、新型コロナ関連費用として40億ドルを従業員のために支出すると表明していたのだから、何も不思議なことではないのかもしれない。
ロイターによれば、投資家は当初冷淡で、この表明でアマゾンの株価は7%超下落したという。が、それ以降は下げの大部分を取り戻し、年初来で28%高となっているという。
このコロナで、企業の価値が全く新たに変わったということなのだろうか。
ニューヨークでは、コロナの新たな感染者の大部分は、生活必需品などを扱うエッセンシャルワーカーではなく、買い物や運動、人との交流のために外出した人だとロイターが伝えた。
ニューヨークのクオモ知事は、新規感染者は必要不可欠な職業の従事者になるとの理論を前週立てたが「全く間違っていた」とし、これらの人の「感染率は一般の人を下回っており、新規感染者は主に働いておらず自宅にいる人となっている」と述べた。 (出所:ロイター)
自分の物語を紡ぐ
企業価値とは何なのだろうかと考えさせられる。
この時代が、本当に大切なものを──愛する人たちの健康と幸福、コミュニティの回復力、そして医者からごみ収集作業員にいたるまで、他人のためにすべてを捧げてくれている人々の犠牲を──いかに私たちにわからせてくれたか、よく覚えておきましょう。 (出所:クーリエジャポン)
と、アップルのCEOティムクック氏がオハイオ州立大学の卒業生に向けてオンラインスピーチで語ったそうだ。
「未来をそんなに急いではならない」と、コロナが警鐘を鳴らしているように見えてしまう。
何のためのテクノロジーなのだろうか。「虚構」を作り出し、そこから得る利益のことばかり考えていたのが、今までの日常だったのかもしれない。だから、日々の活動が止まっても大きな変化なんて起きてはいない。
ただ、その「虚構」は人々の心を蝕んだだけだったのかもしれない。そして、今、元の姿も取り戻すきっかけになろうとしている。
それでも、今も「実業」を携わる人々がいる。そうした人々が食い物にされることはあってはならない。
どんな時代でも、人生は「自分だけがその物語の作者ではない」という事実を苦々しく思い出させてくれます。
望もうが望むまいが、「状況」という名の気難しく自分本位な共作者とともに物語を紡いでいかなくてはならないのです。 (出所:クーリエジャポン)
「みなさんは、自分の物語を書くという任務を背負い、目を見開いて困難に満ちた世界に入っていくのです。自分で選んだとは限らなくても、その物語はすべてあなたのものです」とティムクック氏は語る。
そう思えば、自分のできることをやることが大切なのかもしれない。
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