Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

「グレートリセット」気候変動と感染症対策

 

 昨年12月、Time誌がグレタトゥンベリさんを「パーソンオブザイヤー」に選び、気候変動一色という感じで一年が終わった。年が明けて、スイスダボスで開催された世界経済フォーラムでも、この先のリスクとして気候変動関連が上がり、将来にわたる人類の脅威であることが認識された。

 そんな中、新型コロナは意表をついた。感染が急拡大し、WHOがパンデミックに指定した。世界はコロナ一色になり、欧米各国がロックダウン措置を取った。感染症が新たな人類の脅威として認識されるようになった。

 コロナの急速な感染拡大とともに経済活動が弱まり、二酸化炭素の排出量が急減し、地球環境が一時的にせよ改善した。コロナの感染拡大が収まり始めると、都市封鎖は徐々に解除され、経済活動がにわかに活発化する。それと同時に二酸化炭素の排出量も増加しているとの報道もあった。経済活動と気候変動の関連性をいみじくも証明してしまった。

  人類の脅威として、気候変動ばかりでなく、このコロナパンデミックで、感染症が新たに加わった。 

 

 

グレートリセット

 こうしたことを踏まえ、世界経済フォーラムのクラウス・シュワブ氏は、グレートリセットのときという。

 

新型コロナウイルス感染拡大の対応に見た変化は、私たちの経済的・社会的基盤のリセットが可能であることを証明している」。  

グレート・リセット」を追求すべき理由はいくつもありますが、最も差し迫った深刻な理由は、言うまでもなく新型コロナウイルスの感染拡大です。

何十万もの死を招いたこのパンデミックは、近年の世界史上最悪の公衆衛生危機となりました。そして世界の世界の多くの地域で犠牲者は増え続けており、パンデミックはまだ終わったわけではありません。

このことは、経済成長、公的債務、雇用、人間の幸福に深刻な長期的影響を及ぼします。さらに、既存の気候や社会課題は悪化するでしょう。新型コロナウイルス感染拡大の危機を、環境保護対策縮小への口実にする動きも見られます。また格差の拡大といった社会問題に対する不満は、ますます強まっている。

こうした危機を放置することは、新型コロナウイルス感染拡大の危機とともに、さらなる危機を生み、世界は持続可能性、平等性、そしてより脆弱性をさらに低下させることになるでしょう。

私たちは、経済・社会システムのためのまったく新しい基盤を構築しなければならないのです。 (出所:世界経済フォーラム公式ページ)

jp.weforum.org

 

 

覆るか石炭火力

 朝日新聞が、「石炭火力 覆る輸出の「理由」 環境省検討会が報告書」という記事を投稿した。5月14日に環境省が発行した「石炭火力発電輸出への公的支援に関する有識者ファクト検討会」の結果をベースに書かれた記事のようだ。 

 報告書を受けた小泉環境相は、「(石炭火力発電を)売れるから売る、ではなくて脱炭素への移行が促進されない限り輸出しない、いわば脱炭素化原則へと方針転換しなければならないというメッセージと受け止めた」と話したと朝日新聞は伝えた。

「新しいインフラ輸出の戦略骨子は、関係各省と調整し、6~7月にも決まる。検討会での議論がどれだけ反映されるかが焦点だ」とも指摘する。

 何か、少しばかり変化が期待できるのだろうか。

 

「石炭火力発電輸出ファクト集 2020」に関する分析レポート(環境省)

石炭火力発電輸出ファクト集2020(環境省)

 

 脱炭素へ

 これに加え、有識者検討会座長の高村ゆかり氏の「脱炭素へ支援転換を」というメッセージを朝日新聞は紹介する。

 高村座長は、「検討会の目的は、インフラ輸出をとりまく状況に大きな変化が起きている中で石炭発電の輸出支援に関わる最新の資料とデータを収集し、整理して示すことだった」という。

「途上国に輸出する際に政府が支援するための四つの条件、いわゆる「4要件」について、こうすべきだと提言するのは元々、検討会のミッションではなかった」ともいう。 

 脱炭素社会への移行や再エネへのエネルギー転換が進み、企業のビジネス戦略や投資家、金融機関の投融資方針が大きく変化、石炭火力発電をめぐる事業環境も変わった。50年以上の稼働が見込まれる石炭火力発電は、変化の中で投資を回収できない座礁資産化する恐れがあり、長期的視点で事業リスクを評価する必要がある。

 日本は昨年国連に提出した長期戦略で「今世紀後半のできるだけ早期に脱炭素社会の実現を目指す」という目標を示し、エネルギー基本計画でも「脱炭素化への挑戦」を掲げた。

これを「支援」という実際の政策にどう示せるか、本気度が問われる。私たちの税金を使った支援であり、気候変動問題という社会課題に応えるものであるべきだ。 (出所:朝日新聞

digital.asahi.com

 

 

湯水

 コロナパンデミックで、一時暴落した株価が回復しているようだ。危惧されていた世界恐慌並みの経済危機は回避されつつのあるのだろうか。 

 ロイターは、「デモもコロナもまるで無視、米株の歴史的急騰に投資家困惑」と伝える。

「現在の米国株上昇は当初、弱気相場からの自律反発という形で始まったが、いつの間にか史上屈指の劇的な高騰へと姿を変えている」とロイターは指摘し、実態経済を反映していないとの声を紹介する。

 その背景には、米連邦準備理事会(FRB)や米議会が無制限に支援してくれるとの期待があるようだ。 

jp.reuters.com

 

 社会が進んでいく方向が見えにくくなっているとのことでもあろうか。湯水のように、資金供給をすれば、それなりに経済活動を維持することはできる。

 しかし、今、それが求められていることなのだろうか。

 

議論 事実を共有するために

グレートリセットの時とは、説得力のある言葉だ。

異なる意見があるとき、「事実」の認識の違いによることが少なくない。私の専門の法学でも事実認定が重要だ

特に状況が急速に変化している時には、最新の事実や将来の見通しを共有して適切な政策が何かを議論することが必要だ」 (出所:朝日新聞) 

 と語る高村座長の言葉が印象的だ。

 新たに加わった感染症の脅威も鑑み、社会構造を変えていくときということなのかもしれない。

 

 8日から2次補正予算の審議が始まる。将来世代に負担を強いるような税金の使い方にして欲しくない。まずは、「新しい日常」に合わせた「公衆衛生」の確立を急いでほしい。感染症への安心・安全の担保が求められているはずだ。

 

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