英BBCが、「イギリス、石炭火力発電停止から2カ月 再生可能エネルギーに押され」と報じた。石炭がまたひとつ役割を終えたと感じた。
10年前にはイギリスの電力の約4割は石炭火力によるものだった。
イギリスが今年3月にロックダウンを開始すると電力需要は急減した。英送電会社ナショナル・グリッドは、石炭火力発電所を同社ネットワークから外した。
残っていた4つの石炭火力発電所を最初に閉鎖し、4月9日午前0時に最後の1カ所のシステムを停止した。それ以降、電力供給のために石炭は燃やしていない。かつてイギリスの電力供給網を支えていた石炭火力が同国で必要ではなくなったのは、過去10年間の再生可能エネルギーへの大規模投資のおかげだ。 (出所:BBC Japan)
どんなに優れたものでも、時代変遷ともに、いずれは陳腐化し、主役の座を他のものに譲るときがくる。石炭は優秀なエネルギー源であったが、公害のもとだった。徐々に代替され、主役の座を譲ってきたということだろう。
電機会社で鉄鋼製品やプラスチックスの調達の仕事をしていた。四半期毎に生産量の枠取りと価格交渉をする。そのたびに新日鉄(現日本製鉄)が作った、鉄鉱石や石炭、海運運賃の市況値が事細かに解説された資料を手渡されていた。
価格交渉、結局は利益の奪い合いだ。値上げ局面では、最終的に誰が得をするのかとの話になる。最後は互いに納得できる着地点を探すことになる。
「石炭メーカを儲けさせるために自社商品を作っているわけではない」「しっかり石炭メーカとも交渉してくれ」、 みたいな会話をしていた。
そんな縁で、素材のことやこの種の業界のことに少しばかり詳しくなった。そのこともあって、未だに日本製鉄の業績不振とかのニュースが気になってしまう。
水素で製鉄 経団連の「チャレンジ・ゼロ」に加わる
経団連が発表した「チャレンジ・ゼロ」で、排出量の大きい鉄鋼業界が2050年をめどに、石炭を使わず水素を利用した製鉄技術を開発する目標を掲げたと聞くとやはり気になる。
鉄鋼業界も遂に「脱炭素」の流れに抗えなくなったのかと感じた。ようやく自分たちがもつ優れた環境に関する新技術の方をアピールする気になってくれたのかと。
昨年、一般社団法人 J COALが「石炭でSDGsに貢献します」と打って出てきたときには驚いた。石炭関連業界の最後の悪あがきのように感じていた。
「石炭でSDGsに貢献します」
の理屈は理解できるが、広報・PRとしては間違っているだろうと感じた。
どこかのPR会社が仕事として受注して、キャンペーンポスターとか作っているのかもしれないと想像すると、何か違和感を覚えた。
みずほ 非人道性を考慮し投融資を選択
日刊ゲンダイデジタルが、みずほフィナンシャルグループの「サステナビリティーへの取り組み強化」を伝える。
今後は石炭火力発電所の新規建設を資金使途とするファイナンスは行わないという。
ほかにも兵器製造を資金使途とする投融資の回避、パームオイル、木材・紙パルプの分野では森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロを掲げた。 (出所:日刊ゲンダイデジタル)
日刊ゲンダイデジタルが指摘した内容は、みずほフィナンシャルグループの「サステナビリティへの取り組み強化について」というニュースリリースで確認することができる。
この中で、「特定セクターに対する取り組み方針」を公表し、セクターごとの取り組み方針が説明される。
特定セクターには「兵器」に加えて、「石炭火力発電」「石炭採掘」「石油・ガス」「パームオイル、木材・紙パルプ」が上がる。
〈みずほ〉では、特に環境・社会に対し負の影響を及ぼす可能性の高さという観点から、例えば以下のようなセクター等との取引においては、国際的な基準等を参考に、認証制度の取得状況や地域社会とのトラブルの有無等、取引先の対応状況を確認した上で取引判断を行います。 (出所:みずほフィナンシャルグループ ニュースリリース)
「兵器」はその非人道性から投融資等を一切行わないという。
「兵器」と同格に、「石炭火力発電」「石炭採掘」「石油・ガス」「パームオイル、木材・紙パルプ」などが並ぶ。
その他項目について、こと細かに説明があるが、究極的には兵器と同じように、非人道性が問われていると感じた。そして、その中に今回新たに「石炭火力発電」が追加されたという。
石油・ガス
石油・ガス採掘やパイプライン敷設は、石油・ガス流出事故による海洋・河川の汚染ならびに先住民族の人権侵害等、環境・社会に負の影響を及ぼしうるリスクを認識しており、投融資等を行う際には、環境に及ぼす影響および先住民族や地域社会とのトラブルの有無等に十分に注意を払い取引判断を行います。
パームオイル、木材・紙パルプパームオイルや木材・紙パルプは人々の暮らしや社会の維持に欠かせない重要な原料である一方で、生産過程で先住民族の権利侵害や児童労働等の人権課題、天然林の伐採・焼き払いや生物多様性の毀損などの環境問題がおこりうることを認識しています。
当該セクターの取引先については、「森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ」(NDPE: No Deforestation, No Peat and No Exploitation)等の環境への配慮を定めた方針の策定や、地域住民等への「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC: Free, Prior and Informed Consent)の尊重を求めていきます。 (出所:みずほフィナンシャルグループ ニュースリリース)
「死の商人」 兵器を取り扱う人々のことをそう呼ぶ。
「友敵を問わず、兵器を販売して巨利を得る人物や組織への蔑称、または営利目的で兵器を販売し富を築いた人物や組織への蔑称」だとWikipediaは説明する。
化石燃料関連企業が、何年後か先、「死の商人」と言われてもおかしくない、そう感じてしまった。
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