Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

「マイクロプラスチックス」を考えてみる 

 

 世界中の研究者がマイクロプラスチックスについて研究を続けているようだ。

 wiredは、南アフリカの研究者たちが、水中から浮かび上がった気泡からマイクロプラスティックが放出されることを実証したと伝え、フランスの砂浜の上空の大気からも、マイクロプラスティックが確認されていると伝える。

 CNNは、南極のトビムシの体内からマイクロプラスチックが確認されたとの記事を投稿した。南極にたどり着いた発泡スチロールの表面を覆った藻類などを食べたことが原因のようである。 

wired.jp

 

 

  

マイクロプラスチックスとは

 厄介な問題である。一般的に、5㎜以下の微細なプラスチックごみのことをマイクロプラスチックスと呼ぶ。環境省によれば、含有/吸着する化学物質が食物連鎖に取り込まれ、生態系に及ぼす影響が懸念されるという。

  マイクロプラスチックスには、一次的マイクロプラスチックス (primary microplastics)と二次的マイクロプラスチックス(secondary microplastics)があるという。

 一次的なものには、マイクロサイズで製造され洗顔料・歯磨き粉などのスクラブ材として利用されているマイクロビーズ等があり、排水溝等を通じて自然環境中に流出すると言われる。

 二次的なものは、大きなサイズで製造されたプラスチックスが、自然環境中で破砕・細分化されてマイクロサイズになったものという。 f:id:dsupplying:20200627083641j:plain

 

増え続ける海洋ごみとマイクロプラスチックス

 韓国との国境を接する対馬には大量の海洋プラスチックスがたどり着くという。その海洋プラスチックスを利用して、伊藤忠商事がテラサイクル社との協業で、ポリエチレン原料としてリサイクルする。 

dsupplying.hatenablog.com

 

 こうした海洋プラスチックスのリサイクル活動は世界各地で行われ、様々な製品となって再利用されている。

 多くの企業が環境団体とコラボし、海洋プラスチックスを再利用することが既に始まっている。その中にはアパレル企業も数多くある。 

dsupplying.hatenablog.com

 

 

  Forbesは、「利用が増える「海洋ごみリサイクル繊維」、一部には批判的指摘も」という記事で、こうした活動に対する専門家の意見を紹介する。

 ファッションビジネス専門のビジネススクールLIMカレッジのケネディ准教授は海洋に漏れ出すプラスチックスを止めるべきだと意見する。

最終的な目標は、私たちの大切な海洋に多くのプラスチックが流入し、細かなごみに分解されてしまう状態を食い止めることであるべきだ

「海岸でごみ拾いをして、浜に打ち上げられたプラスチックを回収することは、最初のステップではある」 (出所:Forbes) 

 一方で、「海から回収したプラスチックをリサイクルして使うのは良い考えだとしながらも、マーケティングの手段としてこうしたプラスチック素材を使用するブランドに対しては、批判的な目で疑問を提起する必要がある。なぜなら、たとえリサイクルされた繊維であっても、細かい繊維くずが発生し、最終的には再び海を汚すからだ」との批判的な意見もあると伝える。

forbesjapan.com

 

  そうした意見を戦わせたところで、今もどこかでプラスチックスが流出し、そのプラスチックスが生態系に影響を与え続けているのかもしれない。

 誰かが海岸でプラスチックスを拾えば、海洋に漏れ出すプラスティックはひとつ減る。それは陸上でも同じことだ。

 一方で、衣服などから出る細かくなった繊維くずがどこかで流出しているも事実だろう。

  今、マイクロプラスティックス問題を誰もが納得する完全な答えはないのかもしれない。 

 

 

 生分解性のマイクロビーズが登場

 週刊粧業オンラインが、化学品メーカ ダイセルの生分解性のマイクロビーズを紹介する。

 一次的マイクロプラスチックスには朗報なのだろうか。ただ原料となる酢酸セルロースにはまだコストの問題もあるようだ。

洗顔料のスクラブ剤などに使用されるマイクロプラビーズによる海洋生物多様性への影響が世界的に問題視され、人にも環境にもやさしい天然由来の生分解性マイクロビーズは国内外で需要が拡大しており、同社(ダイセル)も生産準備を進めている。

 同社は酢酸セルロースの新しい用途に向けた開発を進める中で、海洋での生分解速度を従来品の2倍近く早めた酢酸セルロースの開発にも成功した。分解速度を数カ月から数年単位でコントロールすることも可能で用途に適した材料を提供することを検討している。安定供給できる体制を整え、年内の販売を目指す。 (出所:週刊粧業オンライン)  

www.syogyo.jp

 

リサイクルはカネがかかるから敬遠されてきた

 日経スタイルは、岩元美智彦日本環境設計会長の衣服のリサイクルについての意見をインタビュー記事で紹介する。

 岩元氏は、バーゼル条約でゴミの輸出が規制されることや、フランスでの洋服などの廃棄処分を禁止する法律が23年末までに施行されることを指摘したうえで、「どの国も自国のゴミは自国でリサイクルして資源化し、商品にするという流れになっていく」という。

「リサイクルのプロセスにおける熱効率がどうとか、重箱の隅を突っつくような専門家の理論で考えていると何事も進みません。

リサイクルは技術的には何でもできます。服のリサイクルはコストがかさむので誰も踏み出さなかっただけ。

大事なのは全体像で、まずは1回ぐるっと回してみる。最初はミスもある、コスト高もある、エネルギー効率も悪い。それが何年も続けていると効率が上がり、生産コストもぐーっと下がってきます」 (出所:日経スタイル)

style.nikkei.com

 

 

まとめ

 マイクロプラスチックスの問題は誰かが解決してくれるのだろうか。

 

 新しい技術を開発し、実用化するには長い時間が必要だ。

 企業が、消費者のニーズに応えつつ、マイクロプラスチックスの問題を解決することの難しさを感じる。

 

本当に必要な商品を世界と一緒に共鳴して作り、今後はコマーシャルなマーケティングだけではなく、マーケティングを超えたソーシャルな存在になりたいと思っている」とユニクロ柳井氏が話したという。

 ただ単にマーケティングに頼って大量にモノを売る時代でなくなっていくのかもしれない。

 私たちにも、使い捨てや大量消費を慎むことが求められているということなのだろう。

 

「関連文書」

dsupplying.hatenablog.com

 

「参考文書」

www.cnn.co.jp