神戸の理化学研究所に設置されているスパコン「富岳」が、スーパーコンピュータの世界ランキング「TOP500」において首位を獲得したという。2011年の「京」から、8年ぶりに日本のスパコンが世界でトップに返り咲いた。
2009年、「予算仕分け」で蓮舫さんが「2位じゃだめなんでしょうか」と発言し話題になった。当時、この発言に反発が大きかったというが、逆に、この発言が技術者魂を掻き立たのかもしれない。
それから10年あまり、日本のスパコンが首位に返り咲き、「TOP500」の他3つの部門でも世界1位を獲得し、史上初の4冠となったという。
それだけにとどまらない。PC Watchによれば、「富岳」は、それまでの単純な性能競争から脱却し、実用性という点を追求したという。具体的には「省電力」、「アプリケーション性能」、「使い勝手の良さ」の3点を重視し開発されたという。
中でも、「省電力」については、昨年、「富岳」のプロトタイプが、スーパーコンピュータの消費電力性能を示すランキングである「Green500」でも世界1位を獲得していた。
世界一の省電力性能ということは何とも誇らしい結果ではないのであろうか。
あの時の「2位じゃだめなんでしょうか」との発言があったからこそ、 単に高速化性能を追求するだけではなく、世界一の省電力性能をもち実用的なスパコンの開発に繋がったのかもしれない。
この「富岳」の利用が、既に始まっているという。富士通によれば、4月、理化学研究所と文部科学省が連携し、新型コロナウイルス対策の研究開発に「富岳」の利用を開始すると発表していたという。
来年2021年度から共用が開始される予定だったというが、コロナ禍の状況を受け、利用可能な「富岳」の一部を優先提供し、新薬の開発や対策の研究開発に活用し始めているという。
富士通によれば、文部科学省が決定した5分野の研究開発テーマは以下だという。
①新型コロナウイルス治療薬候補同定
②新型コロナウイルス表面のタンパク質動的構造予測
③パンデミック現象および対策のシミュレーション解析
④新型コロナウイルス関連タンパク質に対するフラグメント分子軌道計算
⑤室内環境におけるウイルス飛沫感染の予測とその対策
世界の新型コロナの感染者数が1000万人を突破し、死者数が50万人を超えたという。なかなか収束が見えないコロナ。国内でも再び増加傾向に戻り気にかかってくる。
そんな中だけに、「富岳」のニュースがなお一層朗報に聞こえる。
国内のものづくりや製造業がすっかり衰退したかと思いがちだったが、 「富岳」のニュースを聞いて、まだちゃんと息づいてことを知って安堵する。
ふと気づけば、トヨタは時価総額で、自動車メーカの中で世界一だ。ユニクロを展開するファーストリテイリングも時価総額で、ZARAを有する世界一のファストファッションメーカ インディテックスに肉薄してきているという。
何でも「世界一」がすべてということはないのだろうけど、やはり「世界一」というニュースを聞くとうれしくなるものだ。実用的で、今まさに問題のコロナ対策や「サスティナビリティ」、SDGsにも貢献できそうとの話を聞くとなおさらだ。
本来、技術とかテクノロジーはそうあるべきで、金儲けだけの手段になってしまうと虚しい。
いつの間にか、大量消費や使い捨てが当たり前になって、大量にロスを発生させても平気な社会になっていた。それにテクノロジーが加担し助長してきたのではと思う節もある。
もし、そうであるなら、いつまでたっても、ロスは無くならないし、「サスティナビリティ」なんて、所詮見せかけということになってしまう。
テクノロジーの世界ではGAFAが圧倒的な存在になり、国をあげて国内技術の底上げを図ることに躍起になるが、なかなかその差は縮まっていない。
こうしたモノを作る会社に、もう少し光が当たってもいいのかもしれない。
子どもたちが憧れる会社になって欲しい、そう思う。
昨夜、「奇跡のレッスン」伊達公子をテレビでみた影響があるかも(笑)
「関連文書」
「参考文書」
(写真出所:富士通プレスリリース「スーパーコンピュータ「富岳」
TOP500、HPCG、HPL-AIにおいて世界第1位を獲得」)