熊本県南部で降った豪雨が甚大な被害になっている。梅雨前線上に線状降水帯ができ、同じ場所に猛烈な雨を降らせ続けたようだ。この記録的な大雨で、球磨川が氾濫、流域に大きな被害が出ている。NHKによれば、熊本県球磨村の渡の水位計が11m超えたという。
その球磨村渡地区にあった特別養護老人ホーム「千寿園」の被害の様子を聞くと心が痛む。
限界
何十年1度という大雨が増えているような気がする。大雨特別警報は「50年に1度」の異常気象を基準に発表されるという。
2018年に西日本新聞が『「50年に1度」のはずが…大雨常態化? 地球温暖化が一因 ハード面の対策に限界も』という記事を投稿していた。
大雨特別警報は、2011年の紀伊半島豪雨など過去の災害の教訓から、13年8月に運用が始まった。
1991年以降の観測データを基に「50年に1度」の異常雨量などの値を定め、それを超えれば発表される。この5年間、8例の大雨や台風に伴って計10回発表されている。
なぜ50年に1度の異常気象が頻発するのか。福岡大の守田治客員教授(気象学)は、地球温暖化を理由に挙げる。
「気温上昇で空気中に蓄えられる水分量が増えることや、大気の状態が不安定になりやすくなることなどから大雨が降りやすくなっている」
温暖化によって空気中に蓄えられる水蒸気の量が増えると、降雨の回数は少なくなる一方、ひとたび雨になると降水量が増えるという見方がある。 (出所:西日本新聞)
尋常ではない大雨、やはり地球温暖化、気候変動の影響なのだろうか。国内ばかりでなく、世界各地で、同じように何十年に1度の大雨が降っている。
5月には、米ミシガン州で連日の豪雨で2つのダムが決壊、「500年に1度」の洪水とロイターが報じていた。
こうした被害状況をみると、気候変動対策がもう手遅れになっているのではと感じる。
脱石炭
ドイツで、2038年までに石炭火力発電所を全廃する「脱石炭」法案を可決したという。脱石炭によりCO2排出量を一気に減らし、「脱原発」と合わせて温暖化対策を推進すると共同通信が伝える。
国内では、3日、梶山経産相が記者会見し、「非効率な石炭火力をフェードアウトする仕組みを導入する」と、石炭火力発電縮小に向けた方針を示した。
この記者会見を受け、メディア、専門家が一斉に口を開き、それぞれに意見を出す。
東京新聞は、「脱炭素化」、世界に遅れといい、政府が見込む30年度総発電量に占める石炭火力の割合が26%と指摘し、欧州諸国と比べると見劣りするという。
26%は、原発が20%程度を占めることを前提にしている。
ただ、東京電力福島第一原発事故以降、原発の再稼働は進まず、大手電力幹部は「20%なんて不可能だ」と突き放す。
再生可能エネルギーが大きく伸びない限り、石炭依存は避けられず、実際には26%達成も危うさが残る。 (出所:東京新聞)
来年2021年には、国のエネルギー基本計画が改定となる。
その中で、どういう形で反映されることになるのだろうか。
現実
国際環境経済研究所の理事・主席研究員を務める竹内氏は、noteに「きれいごとでは済まない話ー石炭火力100基休廃止ー」との意見を寄稿する。
冒頭、「特に新しいことを打ち上げたという訳ではなく、もともと2018年に策定されたエネルギー基本計画や長期エネルギー需給見通しに書かれたことの実効性を持たせようとしているものと受け止めています」と指摘する。
石炭火力が天然ガスに代替されていくことを前提に、「電気代の問題」「安定供給の問題」などの視点を忘れてはならないという。
温暖化対策として、取り合えず石炭をこれだけ廃止するというのは諸外国へのメッセージ(諸外国に評価されるためにやるというのも格好悪い話だなと私は思いますけどね。やらねばならないことだからやる、と言った方が潔い)にはなると思いますが、ただ、天然ガスで代替しても石炭から比べれば少ないというだけで、ゼロになる訳ではありません。
既に天然ガスに対する投資も微妙になってきており、今後さらに削減を進めるというのであれば、再エネの更なる拡大をどう進めるか、あるいは、原子力の利用を進めるといった「きれいごとでは済まない議論」に真正面から取り組む必要があります。 (出所:竹内純子氏のnote 「きれいごとでは済まない話ー石炭火力100基休廃止ー」)
こればかりではない、地域特性を考慮する必要もありそうだ。
琉球新報は、「県内供給6割が石炭 脱温暖化へ対応多難」と伝える。
政府が非効率な石炭火力発電所の段階的休廃止に向けた具体策を検討していることを巡り、県内では沖縄電力の具志川火力発電所、金武火力発電所にある計4基と、うるま市石川にある電源開発の2基の全石炭火力発電所が削減の対象となることが3日、分かった。
沖縄では石炭による発電量が電力供給の約6割を占めており、「脱炭素社会」に向けて他地域以上の対応が求められることになる。 (出所:琉球新報)
こっちを立てれば、あっちが立たずとの議論になりかねない。
竹内氏が言う通り、もう「きれいごとでは済まない議論」を進めなければならないのかもしれない。
「脱石炭」「脱原発」「脱炭素」、それに加えて「国際協調」どれを優先するのか。
増加
その一方で、電力需要は増えるばかりだという。
時事通信によれば、「新型コロナの影響で在宅勤務やウェブ会議、ネット通販などの普及が加速し、通信量と消費電力の増大はさらに拍車が掛かっている」という。
次世代通信規格「5G」の導入などでデータ通信量が増え、IT関連の消費電力は30年には16年の36倍に膨れ上がる見込み。これは現在の国内総電力消費の1.5倍に相当する。 (出所:JIJI.COM)
これを受け、環境省は、「脱炭素化」したデータセンターの整備を推進するという。太陽光など再生可能エネルギーの活用に加え、最新の省エネ技術により消費電力を抑えていくそうだ。
太陽光発電など再エネの活用だけでは、温室ガスゼロの達成は難しいことから、窒化ガリウム半導体といった省エネ技術も採り入れる。
また、再エネ発電設備とデータセンターをつなぐ専用線を整備し、直流で給電して省エネ化。通常の送電網では電力は交流で送られ、データセンターで使う前に直流に変換するが、この際に生じるロスを防ぐ。
将来的に、データセンターから排出される温室ガスを窒化ガリウムの技術で1割、直流給電で2割、再エネと蓄電池で7割削減し、脱炭素化するイメージを描く。実現には5年程度かかると予測している。 (出所:JIJI.COM)
「気候変動対策」「脱炭素」は一筋縄で解決することはできない。現実的に考えるときなのかもしれない。
大雨による被害のリスクは一向に減っていない。
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