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【ESG投資】生保に人気のグリーンボンドが過熱、アマゾンの株価は上昇傾向

 

 米アマゾンが地元シアトルのアリーナの命名権を取得したという。その名を「Climate Pledge Arena(気候誓約アリーナ)」にするという。

 どこまでも本気で気候危機に立ち向かおうとの表れなのだろうか。

 アマゾン、言わずと知れた世界最大のECサイト、顧客体験の中心に「Lower Cost」を置いて、大量消費を助長しているような会社だ。

 

 Forbesによれば、アマゾンの2040年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにする目標の一環として、このアリーナを世界初の「CO2排出量ゼロアリーナ」にするという。この新アリーナのサステナビリティデータを計測・公表し、目に見える形でCO2削減の成果を示す考えだもいう。

 

「アマゾンにとって気候対策の行動を一段と強化する機会になる」

アマゾンでグローバル・サステナビリティの責任者を務めるカラ・ハーストは、資金を拠出することになった新アリーナをそう位置づける。アリーナはシアトルの地域社会のシンボルであると同時に「サステナビリティについて理解を深め、気候対策で必要とされていることに対処するチャンス」にもなると期待を寄せる。

2021年夏を見込む完成後はオール電化となり、その電気は配送網経由か、屋根に設置するソーラーパネルの自家発電によって、全量を再生可能エネルギーで賄う予定だ。

さらにリサイクルによる「廃棄物ゼロ」を実現するほか、2024年までに使い捨てのプラスチック製袋も全廃する。 (出所:Forbes)

 

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(画像出所:Amazon.com公式サイト)

 

forbesjapan.com

 

 

 

 日銀、日本銀行が、「ESG投資を巡るわが国の機関投資家の動向について」という調査論文を公表した。

 

 「日本の機関投資家は、欧米と目的意識が異なり、「ボランティアの延長」といった程度の意識で取り組んでいるところも少なからずあった」、「ESG投資の金銭的リターンに確信が持てないなど、機関投資家が抱える課題も紹介」と、ロイターはこの論文の内容を要約する。

 

論文では、欧州は地球温暖化抑制という「社会的リターン」の追求、米国は金銭的リターンの追求と目的意識がはっきりしている一方で、日本の機関投資家の目的意識はまちまちだと指摘。

「自らのポートフォリオの気候変動リスクを抑制する観点からもエンゲージメント(企業との建設的対話)などを一段と加速させる」という機関投資家がある一方で、「(本業とは直接関係ない)ボランティアなどのCSR(企業の社会的責任)活動の延長として取り組んでいる」、「レピュテーション改善効果が主目的」といった声も少なからず聞かれたとした。 (出所:ロイター)

 

jp.reuters.com

 

 日銀の調査論文では、ESG投資の現況を以下のように結論付けている。

 

本邦金融市場における ESG 投資は、欧米対比、比較的歴史の浅い分野である。

そのため、現状、わが国では機関投資家ごとに取り組み状況のばらつきが大きく、投資目的や運用方針などが十分に整理されていないことは不思議なことではない。

また、企業側も、ESG の観点から自らの強みや直面し得る先行きのリスクなどを完全に理解・把握できているという訳ではないだろう。しかし、気候変動リスクへの関心が高まるもとで、世界的な ESG 投資への取り組みは、一段と加速している

そうした世界的な潮流を踏まえれば、わが国の国際的な競争力の観点からも、わが国の機関投資家および企業の双方が、ESG 要素などの非財務情報に関する理解を一層深めていくことは重要である。 (出所:日本銀行公式サイト「ESG投資を巡るわが国の機関投資家の動向について」

 

www.boj.or.jp

 

 この調査論文の中に、”BOX”という補足説明があり、「最近の SDGs 債を巡る潮流」を解説している。

 

グリーンボンドなどは、ESG 投資に積極的に取り組んでいる一部の機関投資家からの需要が根強いため、「初めて発行する通貨の債券は、確実に売れるグリーンボンドに設定する」といった声もある。

また、同債券を購入する投資家は、満期保有を基本的な投資スタンスとする先が多いため、流通市場での投げ売りなどが発生しづらく、ボラティリティは相対的に抑制されているとの指摘も聞かれている。

わが国の機関投資家からは、今後のわが国における SDGs 債市場について、一層の発展を見込む声が多く聞かれる。また、環境意識が高まるもとで、世界的にも SDGs 債市場の拡大は続いていくとみる向きが多い。

ただし、「グリーン」の定義をどうするか、発行体との情報の非対称性をどのように解消していくかなどの課題もあるため、今後、官民が一体となって様々な取り組みが進められることを期待する声が聞かれている。

(出所:日本銀行公式サイト「ESG投資を巡るわが国の機関投資家の動向について」)

 

 

 

 「グリーンボンド(環境債)人気には過熱感が漂い始めている」と日本経済新聞は伝える。

 ESG(環境・社会・企業統治)投資の対象として大手生命保険会社が買っているという。

 

環境債の発行額は今年1~6月、8社の合計で1050億円。社債全体の6兆円の2%未満にとどまる。

小さな市場に投資マネーが殺到する構図だ。旭化成の環境債を購入した日本生命保険は2019年度までの3年間に約7000億円のESG投融資を手がけ、うち3割強は環境債を含むESG債だった。20年度も約2000億円を投融資する考えだ。別の大手生保の運用担当者は「環境債の案件を常に探しているが、えり好みできるほど選択肢はない」と話す。 (出所:日本経済新聞

 

r.nikkei.com

 

 日本生命旭化成が6月に発行したグリーンボンドを購入したという。

 旭化成によれば、このグリーンボンドは、大正時代に建設した水力発電所を改修、水力発電設備を更新、高効率化することを目的にしているという。発行額は100億円、償還期間5年だという。

 グリーンボンドの適合性評価については、第三者機関であるSustainalyticsから適合性に関するセカンドパーティ・オピニオン取得しているという。

 

セカンドパーティ・オピニオン 旭化成株式会社 グリーンボンドフレームワーク

 

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(画像出所:旭化成公式ページ「旭化成延岡地区における水力発電所改修について」

 

www.asahi-kasei.co.jp

 

 

 

 生命保険協会という一般社団法人がある。ほとんどの生命保険会社が加盟する業界団体。昨年11月、その生命保険協会が「はじめての気候変動対応ハンドブック」を公表した。

 気候変動全般について触れたガイドブックで、その中で、機関投資家でもある生保としての役割についても触れる。TCFDに沿った考え方のようだ。

 

機関投資家の立場では、投資先の企業が気候変動の影響を考える必要があります。それぞれの投資先企業の進めている事業が、気候変動による物理的リスクや移行リスクなどマイナスの影響を受けるかもしれませんし、または何らかの機会(チャンス)を得るかもしれません。
 このため生命保険会社としては、前項で示した自らの開示について考えつつ、同時に自社の投資先に対して、気候関連情報の開示を求めていく必要があります。また、そうした企業が開示した情報を正しく理解しなければなりません。 

(出所:生命保険協会「はじめての気候変動対応ハンドブック」

 

www.seiho.or.jp

 

 米アマゾンの株価が、証券アナリストの予想を上回る勢いで上昇しているという。

 アマゾンは、「レピュテーション」を意識しているのだろうか。

 レピュテーションとは企業の評判のこと。こうした評判を株価押し上げにうまく利用しているのかもしれない。

「米国は金銭的リターンの追求と目的意識がはっきりしている」という 日銀の指摘に符合すると見てもよそうだ。

 

 その一方で、荷物の配送に使うトラックをこの先EV化するなどとして、本業でのCO2削減にも余念はない。

 

dsupplying.hatenadiary.com

 

 国内ESG投資の発展に期待したい。

「環境」や「社会」に配慮がなければ、資金調達も覚束ない、そんな環境になれば、企業の変化が期待できるだろう。

 一方で、個人投資家にとっても魅力ある投資先であるためには「金銭的リターン」も期待されるのだろう。

「社会的リターン」を重視する欧州と、「金銭的リターン」の米国の中間あたりがいいのかもしれない。

  

 

「関連文書」
dsupplying.hatenablog.com

 

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「参考文書」

r.nikkei.com