米アップルが、21日、環境報告書を公表し、新たなコミットメントを宣言した。
Appleはカーボンニュートラル。
2030年までに、すべての製品もカーボンニュートラルにします。
Appleは本日、事業全体、製造サプライチェーン、製品ライフサイクルのすべてを通じて、2030年までに気候への影響をネットゼロにすることを目指します。(出所:アップル公式サイト)
パリ協定で、「1.5℃目標を実現するためにはCO2排出量を2050年前後に正味ゼロにする必要がある」とされた。
アマゾンが、その目標を10年早め、2040年までにカーボンニュートラルを目指すことを発表して驚いたが、アップルはそれをさらに早め、2030年を目指すという。
Appleが調達する再生可能エネルギーの80%以上は、自らが手掛けた電力プロジェクトから生み出されています(写真:アップル)
一歩先行く サーキュラー・エコノミー
アップルの「サーキュラー・エコノミー」への取り組みも先進的だ。
使い終わった製品を回収して、リサイクルする「Trade In」というプログラムが昨年始まった。そこから、さらに前進しているようだ。
今年の報告では、製造工程で使用されるハンダまで、100%再生スズを採用しているという。そればかりでなく、アルミの精錬では、精錬プロセス時に温室効果ガスではなく、酸素を放出するアルミニウム製造手法の開発を支援したという。
100%リサイクル。
Appleは、将来的にすべての製品とパッケージを100%リサイクルされた素材と再生可能な素材を使って作れるように力を注いでいます。
アルミニウム、コバルト、銅、ガラス、金、リチウム、紙、プラスチック、希土類元素、鋼鉄、タンタル、スズ、タングステン、亜鉛です。
素材ごとに再生の循環を確立しながら、
地球から何も取らずに製品を作るという目標を達成するまで、
私たちは取り組むべき素材のリストを更新し続けます。
(出所:アップル公式サイト)
(画像出所:アップル公式サイト)
ティムクック
ティムクックCEOはこの発表に合わせ次のようにコメントしている。
企業は、これまで以上に持続可能な未来、すなわち、私たちが共有している地球という星に対して、私たちが抱いている共通の思いから生まれる未来を築くための貢献をする重大な局面にいます。
Appleの環境に対する取り組みを支えているイノベーションは、地球環境にとって良いだけでなく、当社製品のエネルギー効率をさらに高め、クリーンエネルギーの新たな資源を世界中で稼働させることにも役立っています。
気候変動に対するアクションは、新時代のイノベーションの可能性、雇用創出、持続的な経済成長の礎になり得るのです。カーボンニュートラルに対する当社の取り組みが波及効果をもたらし、さらに大きな変化を生み出すことを期待しています。 (出所:アップル公式サイト)
アップルから毎年発表される「環境報告書」を見ては驚く。
今年の報告書は100ページからなる。斜め読みしかしていないが、年ごとに進化しているように思う。
今回はアップルがコミットした「カーボンニュートラル」にかかわる箇所を点検してみた。
クックCEOはこう宣言する。
(出所:アップル公式サイト「Environmental Progress Report」)
ライフサイクルアセスメント / プロダクトライフサイクル
昨年2019年のアップル製品のライフサイクルにおけるCO2の排出を報告している。
このライフサイクルには製品使用時も含まれている。
(出所:アップル公式サイト「Environmental Progress Report」)
カーボンニュートラルへの道標
カーボンニュートラルを達成する2030年までのロードマップが示された。
2020年以降、排出低減を進めると同時に、CO2を除去していくとの計画になっている。
(出所:アップル公式サイト「Environmental Progress Report」)
自然への投資
CO2の除去のために、アップルは、コロンビアの沿岸にある1万1,000ヘクタールのマングローブ林を回復させるという。こればかりではない、ケニアでは、荒廃が進んだサバンナを自然の力で回復させる取り組みも行っているという。
マングローブの林を回復させることで、100万トンのCO2を蓄積する力があるという。サバンナでは、年間1ヘクタールあたり最大4トンのCO2を除去できる見込みだという。
自然のシステムに、投資をしています。
Apple Carbon Solutions Fund
世界中の森林、湿地帯、草原の保護と回復を支援して、大気中から過剰な炭素を永続的に取り除くための取り組みです。
炭素排出枠の購入にとどまらない、人と地球の両方に意味のあるリターンをもたらす自然への投資でもあります。
大切なエコシステムの健全性と生態を守るため、私たちはこの新しい取り組みに参加する企業が続々と増えていくことを願っています。
(出所:アップル公式サイト)
(画像出所:アップル公式サイト)
正直、ただ驚く。
アップルを支える日本企業たち
この環境報告書では、アップルのバリューチェーンを支える日本企業のことも触れられている。Nidecや太陽誘電などが、アップル同様に100%クリーンエネルギーでの製造をコミットしている。
電子部品などの2次サプライヤーを含めれば、もっと多くの企業がこうしたアップルのカーボンニュートラルを支えることになるのだろう。
AFPによれば、ホッキョクグマが絶滅の危機にあるという。北極の海氷の減少が原因のようだ。
温暖化が今のペースで進めば80年後までに絶滅すると予想されるという。
北極圏の温暖化は、地球全体の2倍の速さで進んでいるともいう。
気候変動 カーボンニュートラルを目指して
「科学的な研究によると、2050年までに地球を「カーボンニュートラル」にする必要があります」とアップルはいう。
人間活動によって、産業革命前に比べて、もうすでに1℃以上上昇していると言われる。2050年までに、カーボンニュートラルが達成できても、それでも気温は1.5℃上昇することになる。
1℃の上昇で、様々な自然災害が発生した。この先、どんな影響があるのだろうか。
次のテーマとして、「カーボンニュートラル」が待っているのかもしれない。
「私たちが直面している気候変動の問題は、一社だけでは解決できないほど大きいものです」とアップルはいっている。
国内では、風力発電の開発が活発化してきたようだ。
株式投資関連のニュースでも、こうした情報が扱われるようになってきた。
再エネだけで、満足してはならないはずだ。
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「参考文書」