上場企業の4-6月期の業績発表が続いている。コロナの影響で業績を悪化させる企業が増える。
コロナの感染が収まらず、これだけ長引けば、致し方ないのかもしれない。
IATA 国際航空運送協会が、世界の航空需要の回復の見通しを発表した。それによると、新型コロナの影響を受ける前の水準まで航空需要が回復するには、2024年までかかるとのことのようだ。感染の再拡大影響もあってのことか、以前の予測より1年後ろ倒しした。国内線など短距離路線も、国際線同様1年後ろ倒し、2023年に修正したという。
Aviation Wireによれば、「旅客数は4月に底を打ったが回復の力は非常に弱く、改善がみられるのは国内線のみで、世界の航空需要の3分の2近くを占める国際線は、事実上存在しないままだ。世界の多くの地域でCOVID-19が依然として増加している。回復に要する期間が長くなり、航空業界と世界経済にさらなる痛みをもたらすことを示唆している」とIATAのアレクサンドル・ド・ジュニアック事務総長が述べたという。
企業の商業渡航も、景気が改善しても企業が出張予算を大幅に抑えると予測。
これまではGDP(国内総生産)成長率と航空需要は高い相関関係がみられたが、ビデオ会議の普及により、この関連性は弱まっていると指摘している。 (出所: Aviation Wire)
NHKは、専門家の「景気への影響は長期化」とのコメントを伝える。
「経済活動を再開した国で感染が再び広がり、景気への影響は長期化する見通しだ。企業決算はこれを大きく反映して厳しい内容となっている。ただ、オンライン会議の導入で出張費などのコスト削減を進め、利益の落ち込みを縮小させる企業も出始めている。選択と集中を加速させることができるかがウィズコロナ時代の業績の明暗を分けるだろう」とSMBC日興証券のストラテジストが指摘したという。
コロナを封じ込めることはできないのだろうか。
感染の勢いが増しているようだ。国内での感染者が連日1000人を超え、過去最多を更新する。感染の中心が分散しているのだろうか、過去最多となる地方が増えている。
30日、東京での新たな感染者は367人、過去最多だったという。
小池都知事が、「感染拡大特別警報」を発出する状況だと危機感を示し、都内の飲食店やカラオケ店に営業時間の短縮を要請した。
状況がさらに悪化すれば都としての緊急事態宣言の発出も考えざるを得ないとの認識を示したとロイターが伝える。
連日のように増える感染者、過去最多を更新と聞くと、人はどうしても不安を感じてしまうのかもしれない。
検査の対象基準が変わったことで、見かけ上感染者数が増えていると考えれば、慌てないことだとの意見もあるようだ。その根拠に重症者や死亡者の数が低位に推移していることがあるようだ。
経済優先論者は、感染者数の増加のみに目を奪われるべきではないと主張する。
政府の見解も、そうした意見に近いのだろうか。
菅義偉官房長官は30日午後の会見で、全国で1日当たりの新規感染者数が1000人を超え、再流行しているとの認識なのかとの質問に「あすの分科会で意見を聞く」と述べた。
ただ、現状では若い世代の感染者が多く、60代以上の割合が少なく、重症者も少ないことなどから、4月に緊急事態宣言を出した時とは状況が違うとの認識を繰り返した。また、「Go To トラベル」の対象除外地域を増やす考えがないこともあらためて示した。 (出所:ロイター)
不安を煽りたくはないのだろうけど、どうも政府説明がしっくりこない。
感染防止対策と経済活動の両立に無理があるのかもしれない。
結果論かもしれないが、感染対策を等閑にして、低下した感染を理由に経済を優先させてはいなかっただろうか。
感染者が増えてからアクションするのでは限界がある。
常にモグラたたき、鼬ごっこのようにいつまでもたっても埒が明かない。感染者や亡くなる人たちの数が増えるという現実だけが残る。
「日本全体が感染の火だるまに陥っていく」
と警戒感を強めているのは東京都医師会の尾崎治夫会長。
「やはり今のやり方では限界があるだろう」
「これが最後のチャンスだ」
と対策強化を訴える。
医療の現場をあずかる医師たちにとっては深刻な問題であろう。最悪を想定して準備しておかなければ、いざ悪化したときに対応ができなくなる。
どちらを優先するのかということは不毛な議論にしかならない。
陽性率にしろ、死亡率にしろ「0」でない限り、必ず感染する人はいるし、誰かが亡くなることになるだけのことだ。今日無事であったからと言って、明日はどうなるかは誰にもわからない。
唯一言えることは、人と接触しなければ、感染することはないということだけだろう。
いつでも最悪の事態を読み切ろうとする。
「臆病と言われても事を成す時には、マイナスの方向を考えて対策を立てないといけない。失敗している経営者はいいところばっかり見て失敗する。成功する人は逆でしょ」とは弁護士だった故中坊公平氏の言葉だ。
危機が眼前にあり、それを目の当たりにしながら不安を払拭できないことから、どうしても危機と不安の封じ込めを優先しがちになる。
だが、単に現状にフタをするだけでは強くなるはずがない。 (引用:中坊公平の闘い)
人がもつ自己防衛本能から生まれる不安を認めながら、適切に警戒し、コロナを封じ込めるとの強い意志をもって対峙していかなければならないのだろう。
そのうえで、経済をどう対策していくかということではなかろうか。
3密になりやすい飲食店やイベント会場、移動での対策を進める企業が増えてきたと聞くようになった。
高速バスも、夏休みを前に運行を再開、8月には多くの路線で平常に戻ることになりそうだという。
今まで感染拡大防止策の一環として採用した「隣は空席」の対策も、事業者の収益性に大きく影響することもあってか、終了する事業者が増えているという。
乗り物ニュースは、「車内の換気を行い、また全員がマスクを着用している限り、隣席に乗客が座っていても問題ない」と説明する京都大学ウイルス・再生医科学研究所准教授の話を紹介する。これが根拠になったのだろうか、「全席開放」を行う事業者が増えているという。
乗り物ニュースによれば、業界大手である京王バスグループ、ジェイアールバス関東、西日本ジェイアールバス、西日本鉄道やその共同運行先らも、路線ごとに順次、この対策を終了し「全席開放」に踏み切っているという。
コロナ以前に戻りたいのだろうか。それではいつまで経っても感染はなくならないのかもしれない。
乗り物ニュースは、物理的な対策をするバス会社ウィラーの事例を紹介する。
いくら「医学的に見て感染リスクはない」と言われても、乗客自身が納得感を持たなければ「安心」にはつながりません。
(出所:乗り物ニュース)
力強い経済活動には、人々の「安心・安全」が必要ということなのかもしれない。
物理的な感染対策も、また投資を伴い経済活動に繋がる。
国連ニュースは、「急増する使い捨てのマスク、手袋、その他の医療保護具などのプラスチックス汚染との闘いが始まっている」と指摘し、対策のアイデアを示す。
こうしたことも、ポストコロナを見据えても、今対策が必要なことではなかろうか。
Five things you should know about disposable masks and plastic pollution(UN News)
2019年には8億ドルであったマスクの世界での売上高が、今年は約1,660億ドルになると国連の貿易団体UNCTADは予測する。
急増する使用済みマスクの約75%と他のコロナ関連の廃棄物が、最終的に埋立地か、または海に浮かぶことになるという。
国連ニュースによれば、不適切な規制やビジネスモデルを変更し、プラスチック生産の減少につながるインセンティブを導入するだけで、2040年までにプラスチック汚染の約80%を排除できるという。
この問題を包括的に解決していくためには。「技術の進歩につながる革新」と「投資の劇的な増加」が必要だという。さらにUNCTADは、天然繊維、もみ殻、天然ゴムなど、無毒で生分解性の代替品や、またはリサイクルが容易な代替品を促進するよう政府に要請している。これらの製品はより環境にやさしく、開発途上国がプラスチック代替品の主要サプライヤーになるため、新しい仕事を提供するという追加の利点もあると指摘する。
ポストコロナでは、コロナ以前の世界に後戻りはできないという。
「健康の向上、廃棄物削減、雇用、人々と自然の両方にとってよりよい環境の回復力に、投資すべき」と国連ニュースは指摘する。
もとに戻るような施策や政策の見直しが求められているのだろう。
「参考文書」