7月、WMO 世界気象機関が、「新しい気候予測~今後5年間の地球の気温」を公表した。
世界の気温は今後5年上昇し続け、一時的に産業革命前の水準よりも1.5℃高くなる可能性があるという。
2020年に、北半球の広い陸域は、最近の過去(1981年から2010年の平均として定義)よりも0.8°C以上高温になる可能性があります。
2020年、北極圏は世界平均の2倍以上暖められた可能性が高い (出所:WMO 世界気象機関公式ページ)
(画像出所:WMO 世界気象機関公式ページ)
昨年大規模な森林火災が起きたオーストラリアや南アフリカでは、乾燥した状態が2024年まで続く。
アフリカのサハラ砂漠南部のサヘル地域は湿度が高くなり、欧州では暴風雨が増え、北大西洋北部では通常よりも強風が観測される見通し。 (出所:ロイター)
上昇傾向が続けば、温暖化対策の国際枠組みパリ協定の目標達成が難しくなると指摘したという。
今年もまたヨーロッパは熱波に襲われるのだろうか。
NHKによると、アフリカ大陸からの暖かい空気が流れ込んだ影響などで、7月末、パリでは最高気温が40度に迫るなど猛烈な暑さを記録したという。
スペイン南部の11の都市でも最高気温が40度を超え、首都マドリードも39.5度まで上がった。
公共施設や公共交通機関などでマスクの着用が義務づけられているマドリードでは、「暑くて窒息しそうです」と話す人がいるという。
ヨーロッパは去年、パリで42.6度と、72年ぶりに最高気温を更新するなど、各地で40度を超える記録的な暑さとなりましたが、気象当局は、ことしも厳しい熱波に見舞われる可能性があるとして警戒を呼びかけています。 (出所:NHK)
フランス南西部では、森林火災が発生し、「空気が非常に乾燥し、強風にも見舞われていることから、当局はさらなる火災のリスクに警戒するよう呼び掛けている」とAFPが伝える。
2019年から2020年にかけて、オーストラリアで発生した前例のない大規模な森林火災で、「30億匹の動物が犠牲となった、もしくは棲み処を失った」とする研究結果が発表されたとAFPが伝える。
現代史上、野生生物にとって最悪の災害の一つ
複数の大学の科学者らが手掛けたこの研究によると、哺乳類1億4300万匹、爬虫(はちゅう)類24億6000万匹、鳥類1億8000万羽、そしてカエル5100万匹を含む野生生物が被害を受けた。 (出所:AFP BB NEWS)
AFPによれば、科学者らは気候変動の影響によるものと指摘しているという。
この森林火災では、干ばつに見舞われた約11万5000平方キロ超の低木林地を焼き、オーストラリアの現代史において、最も広範に延焼し、また最も長引いたものとなったそうだ。
私たちが知っている地球は失われつつあります。
「科学者たちが長い間予測してきたとおり、不可逆的な気候崩壊が進んでいます」
GIZMODOは、そう語るWMOの今回の分析に参加したNASAの気候科学者のコメントを紹介する。
「今後も気温上昇は続きそう。これからの5年間で、地球のほぼ全域が直近よりも暖かくなるんだそうです」
と、GIZMODOはやんわりとした表現で解説する。
パリ協定では、1.5℃のしきい値が努力目標として定められています。
1年だけ上回ったからといって、努力目標が達成できなくなるわけではありませんけど、普通に考えると確かに良い兆候と言えませんよね。
過去の研究によると、過去10年間は最も暑くて、2019年は2016年に次いで史上2番目に暑い年になったとのこと。 (出所:GIZMODO)
環境省は、「IPCC1.5℃報告書」の内容を概説する。
「社会のあらゆる側面において前例のない移行が必要である」という。
(資料出所:環境省「IPCC「1.5℃特別報告書」の概要」)
「今回の(WMOの)予測は、世界中の気候予測機関のコンピュータモデルに基づいており、パリ協定で定められた2℃以下に抑えるためには、地球規模で一刻も早く気候政策の変革を起こす必要があることを示しています」とGIZMODOは指摘する。
環境省によれば、「IPCC1.5℃報告書」は、SDGs 持続可能な開発が温暖化抑制を可能にすると指摘しているという。
(資料出所:環境省「IPCC「1.5℃特別報告書」の概要」)
今年の梅雨大雨で、多くの人々が住み処を失った。
気象災害は、野生動物ばかりでなく、人の棲み処まで奪う。
世界各地でこうした気象災害の災禍が眼前に現れている。
今年の夏も熱くなりそうだ。
「参考文書」