「グリーン・リカバリー(緑の回復)」という言葉が気になっている。
4月、IKEAやレゴなどに加え、米マイクロソフトなど欧米の大企業が参加する「グリーンリカバリー・アライアンス」が発足した。
企業が先行する形で、コロナ渦からの回復を主導する動きのように思われた。
このアライアンスに欧州議会の議員なども参加すると聞く。具体的な政策に反映されないのだろうかと注目していた。
「フランス・リローンチ」 フランス版グリーンリカバリー
9月3日、フランス政府は、新型コロナウイルスの追加経済策として2年で1000億ユーロ(約12兆5500億円)になる計画の詳細を発表した。
ブルームバーグによれば、「フランス・リローンチ(再起動)」と銘打つこのプログラムは、賃金への助成と企業減税、環境プロジェクトへの支出が柱となるという。
環境に配慮したグリーン支出は、鉄道など排ガスの少ない交通手段や建物のエネルギー効率を高めるリノベーション(改修)に重点を置くという。
日本経済新聞によれば、フランスのカステックス首相は記者会見で、
「危機をきっかけとしてフランスは競争力を高め、脱炭素社会をつくり、結束を強める」
と語ったという。
競争力の強化に350億ユーロ、環境への負荷を減らすためのグリーン支出には300億ユーロを投じるという。この他、250億ユーロを雇用支援、70億ユーロをデジタル投資にあてるという。
グリーン支出300億ユーロのうち、交通が最大の110億ユーロを占め、鉄道やエコカーの利用促進に使われるという。再生エネルギーへの転換などに90億ユーロを投じ、水素産業に2年間で20億ユーロを使う。
建物を回収しエネルギー効率を高めることも進めるようだ。公的な建物に40億ユーロ、住宅に20億ユーロ投じることになるという。
フランス版、グリーンリカバリーということなのだろうか。
TechCrunchは、この中のデジタル政策を解説する。
それによれば、フランスは、過去3年間、寛大な政策でスタートアップをサポートしてきたが、その一方で市民の大半が恩恵を受けられていないと多くの人がマクロン大統領を批判していたという。
テック部門と経済全般のギャップを橋渡し
「将来のためにかなりの投資をし続けなければならない。しかしそうした投資からみんなが恩恵を受けるものにしなくてはならない」
と、フランスのデジタル大臣が語ったとTechCrunchはいう。
「DX デジタルトランスフォーメーション」というのは極めて広汎だ。
デジタルインボイスの導入から、eコマース店の立ち上げ、工業生産のための最新設備の購入などまで広くカバーする。
かなり細分化されたマーケットであり、刺激策で最も困難な部分となりそうだ (出所:TechCrunch)
今回の刺激策はテックスタートアップだけに焦点を当てるものではないらしい。
グリーンリカバリーとDXデジタルトランスフォーメーション
グリーンリカバリーとDXが結びつくとのいいのかもしれない。
デジタルインボイスの導入を進めるのであれば、ユニリーバの取り組みを参考したらどうなのであろうか。
インボイスとカーボンフットプリント = ユニリーバ
日経ESGによれば、ユニリーバは、CO2の排出状況を把握するため、取引先に対してインボイス(請求書)にカーボンフットプリント(CO2排出量)の記載を求めているという。将来的に、あらゆる製品にカーボンフットプリントを明示するそうだ。
そんなしくみ、システムが出来上がれば、いいのかもしれない。
人工衛星で森林破壊を監視
森林保全では、23年までに「森林破壊ゼロ」のサプライチェーンを実現する。既に、森林に関わる調達の89%を国際的な森林認証を取得した取引先からの調達に切り替えている。
今後、人工衛星やデジタル技術を活用した監視を取り入れ、森林が破壊されていないかどうかを確認して、取り組みを徹底する。 (出所:日経ESG)
そのユニリーバは、パリ協定の目標を11年前倒し、39年までにCO2実質ゼロに目標を立ている。
電子タグとトレーサビリティ
フランスの旧植民地コンゴでは、児童労働や紛争鉱物の問題が続いているようだ。
ロイターは、こうした問題の対策として、電子タグを利用したトレーサビリティの実例を紹介する。
デジタルと商流・物流は本来相性がいいはずである。うまく融合できれば、今ある様々な問題や無駄を省くことができるのではないであろうか。
日本版グリーンリカバリーはあるのだろうか
こうしてみていくと、これまでのフランスはあまり日本と変わらないのかなとも感じたりする。そう思うと、グリーンリカバリーで先行する欧州に追いつくチャンスもありそうな気がする。
菅官房長官が、日本経済新聞との単独インタビューで、「デジタル庁」に言及したという。
どうせのことなら、「デジタル行政」だけにとどめることなく、グリーンリカバリーとの融合させていくことはできないのだろうか。
デジタルは問題解決に役立つ手段だ。未来のカタチ、どういう世界を目指すのかがはっきりすれば、さらに力を発揮してくれるのかもしれない。
「関連文書」
「参考文書」