Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

モーリシャス沖座礁事故のその後 自然回復活動に動く商船三井10億円拠出

 

 インド洋の島国モーリシャス沖で座礁事故をおこした貨物船「わかしお」をチャーターした商船三井が、モーリシャスの自然環境を回復させる基金を設立すると発表した。複数年で総額10億円程度の拠出を予定だという。

 

モーリシャス自然環境回復基金設立へ

 商船三井によると、環境省モーリシャスに派遣した専門家と連携、自然環境保護や回復支援を行うという。複数の現地NGOモーリシャス政府・国連等の公的機関の基金へ1億円程度を拠出、現地の自然環境回復活動を支援する。また、地域社会や産業への貢献として、現地水産業や観光業向けの施策を実施するそうだ。この他にも、人的支援とし、10月にはモーリシャス駐在員事務所を設立、モーリシャス地域社会と中長期的に連携、対応していくという。

 

1. マングローブ保護・育成プロジェクト 民間コンソーシアムの組成と、現地NGOとの協働を検討中。

企図する活動:マングローブ林の生態系を傷つけない清掃、マングローブ林下に棲息する生物多様性保全マングローブの植林

2. サンゴ礁回復プロジェクト 企業、大学、研究機関等と連携し、現地NGOとの共同プロジェクトを検討中。
企図する活動:A.I.等最新技術を利用したサンゴ礁の早期育成と移送、海中サンゴ棚でのサンゴ養殖・移植、海中に浮遊する泥質物からのサンゴ礁の保護

3. 海鳥の保護・希少種海鳥の研究 海鳥の保護、希少種保護に関する研究支援。

4. モーリシャス自然環境回復基金(仮称)の設立

上記(1)~(3)のプロジェクト・研究の遂行を目的に創設。当社(商船三井)は発起人として数年間に亘り8億円程度の拠出を予定。個人・法人からの拠出も受け入れ可能とする予定(本船船主である長鋪汽船から拠出の意向表明あり)。

(出所:商船三井プレスリリース「WAKASHIO号事故に関するモーリシャスの環境回復・地域貢献に向けた当社の取り組みについて~モーリシャスと共に~」)

 

www.mol.co.jp

 

 

 

モーリシャス座礁事故 自然破壊、環境汚染と企業の社会的責任

 商船三井の池田潤一郎社長は11日、記者会見で設立する基金の目的などを説明したという。日本経済新聞によれば、法的責任が直接問われる船主ではないが環境汚染への批判を踏まえ、商船三井は船の使用者としての社会的な責任を重視したという。また、賠償ではなく支援との立場を強調したそうだ。同様の事故対応の先行事例になるとの指摘もあるという。

 

タンカーによる油濁事故は被害を補償する基金があるが、一般の貨物船にその枠組みはない。長鋪汽船が支払う賠償額は数十億円にとどまるとの見方もあり、被害者の救済に限界があった。

海難事故に詳しい東海大学山田吉彦教授は商船三井の負担額について「(法的責任が問われる)長鋪汽船の賠償額を上回るのは筋が通らない」とした上で、賠償ではない基金方式は「同様の事故の際のモデルケースになる」と評価する。 (出所:日本経済新聞

 

www.nikkei.com

 

 AFPによれば、モーリシャス当局は現在、事故の調査を進めているという。モーリシャス政府は、燃料流出による「すべての損害」に対する補償と、汚染の除去費用を求めているが、今回商船三井が発表した支援策が同政府の要求を満たすのに十分かどうかは、現時点では明らかになっていないとAFPは伝える。

 

www.afpbb.com

 

 

 

事故原因の究明

  NHKは、船籍があるパナマ海運当局の調査結果を伝える。それによると、船長の指示で針路が陸地寄りに変更、その理由として乗組員がモーリシャスのインターネットに接続するためだった可能性があると分析しているという。考えられる事故原因については、電子海図の扱いに問題があり、当時、貨物船が浅瀬に接近していることを適切に把握できなかったことや乗組員の運航状況の監視が不十分だったことなどが指摘されているという。

パナマの海運当局は今後、事故原因の究明に向けて、船長からの事情聴取や航行データの解析などを進める方針だとNHKは伝える。

  

www3.nhk.or.jp

 

誠実さが信用を生む その計り知れない価値

 事故は些細な不注意から起こってしまうものかもしれない。たとえそうであろうとも、起きた事故について責任を回避しようとすれば、それは不誠実になってしまう。商船三井が、モーリシャスの自然回復活動のために行動したことを知って少しばかり安堵した。 

 

信用には計り知れない価値がある。...... 相手を騙すことによってではなく、相手に勝る知恵を絞ることによって、誠実にビジネスの挑戦に応じるときには、きっと自然な精神の高揚を感じるだろう。そして、それが信用を守ることになる。

・・・

 両親、教師、事業の経営者、それに聖職者や法王の影響力はともかく、誠実さとずるさとの最終的な選択は個人にかかっている

(引用:ビジネスマンの父より娘への25通の手紙 キングスレイ・ウォード 城山三郎訳 P159「守るべきビジネスの倫理」より)

  

 (この本は絶版になっています)

 

 

「関連文書」

dsupplying.hatenablog.com

 

www.nikkei.com

 

dsupplying.hatenablog.com

 

f:id:dsupplying:20200912052402j:plain