旭硝子財団が「日本人の環境危機意識調査」の結果を公表した。調査の結果、近年の豪雨災害や気温上昇などの異常気象と「気候危機」への懸念が明らかになったという。日本国内の危機的な環境問題は、1位「気候変動」、2位「環境汚染」、3位「社会、経済と環境、政策、施策」との結果だそうだ。
(資料出所:旭硝子財団 第1回 日本人の環境危機意識調査 結果発表)
環境危機時計®は9:46を指す
「環境問題への危機意識を時刻に例えると何時何分か」というアンケートを行ない、全体平均で「6時40分」を指し「かなり不安」という結果になったという。世代別で若干の差があったようだ。
一方、環境問題に携わる日本の有識者を対象とした「環境危機時計®」と比較すると、有識者は「9:46」、「極めて不安」と回答しており、一般生活者との意識と、3時間程度の差があることがわかったと旭硝子財団は指摘する。
(資料出所:旭硝子財団 第1回 日本人の環境危機意識調査 結果発表)
今までに経験したことのないような自然災害、毎年やってくるようになった暑すぎる夏を経験すると、肌感覚を通して環境が変化していると感じる。こうした環境の変化が国内ばかりでなく、海外のあちこちでも確認されるようになり、国連や欧州など国際社会が協力して、この問題を解決しようと努力するが、懐疑派たちの分断を扇動するような言動もあって、なかなか改善の糸口が見えてこない。そんな状況が日常化するのだから、「かなり不安」と感じることになるのだろう。
こうした環境問題で、毎年多くの「命」が失われ、頻発するようになった豪雨などの激甚災害が生活基盤を壊すことを目の当たりにするになったにもかかわらず、政策は気候変動対策を等閑にし、いつまでも理念もなく「経済再生」ばかりを謳い、それを口実にただ大量消費を促しているように感じてしまう。
これではいつまでも問題が解決されず、こうした災禍が我が身に降りかかってくるかもしれないと思うと、「極めて不安」と感じるようになる。
危機を機会に活かすグローバル企業
ユニリーバやネスレ、H&Mにロレアルなど名だたるグローバル企業はこうした危機を機会(チャンス)にしているのだろう。
今まで通りの世界で経済成長を求めても、限界に達することが意外に早くやってくるのかもしれない。それならいっそ経済を作り替え、新たな成長余地を作り出すことの方がリーズナブルなのだろう。
足元を見れば、安心して暮らすことのできない耐え難い気候変動があり、ごみであふれかえる環境があり、不公平や差別が蔓延する社会、そんな矛盾に満ちた世界がある。これら矛盾を、経済を作り替え解決していけば、そこから新たな成長が始まると、そう気づき、信じているのだろう。
いつの時代も新たに生み出されるものは高価なものだ。環境に配慮した商品が高い理由はそこにあるのかもしれない。しかし、時が経ち経済規模を活かせるようになれば、いずれ価格は安んじ安定していく。
環境に配慮した商品も普及のために、今まで通りマーケティング手法に倣い、大々的にPRを行なう。ただ今までと違うのは、地球の危機を訴えかけていることだ。
そうしたマーケティング活動によって徐々に社会に浸透し定着していく。
ただ長い時間をかけてしまえば、環境はますます悪化し地球が壊れてしまうのかもしれない。それが今までの世界とは違うところなのだろう。
11月3日の米大統領選でドナルド・トランプ大統領に挑む民主党候補のジョー・バイデン前副大統領は、「気候変動が、われわれの生活にとって差し迫った実存の脅威となっている」と述べた。 (出所:AFP BB NEWS)
サーキュラー・エコノミーとSDGs
今まで地球環境を悪化させてきたのが経済だとすれば、地球を救えるのもまた経済でしかない。が、それには地球住人との協力が不可欠になっている。逆に言えば、それほど地球環境は悪化しすぎている。
こうした現実があるから、常識人はステークホルダー資本主義を標榜し、サーキュラー・エコノミー循環型経済の移行を目指しているのだろう。
そして、国連はSDGsを宣言する。
花王とライオンがコラボして始まる国内のサーキュラー・エコノミー
国内で日用品のトップメーカである花王とライオンが手を組み、日用品の詰め替え容器の新たなサーキュラー・エコノミーに挑戦するという。
花王によれば、国内の詰め替え・付け替え用製品の普及率は80%までになったが、一方、その詰め替え容器は、素材が複合材料からなるため、リサイクルできないでいたという。
「花王とライオンは資源循環型社会の実現をめざし、フィルム容器のリサイクルに企業の枠を超えて取り組みます」。
「(詰め替え用)フィルム容器から再度フィルム容器に再生する水平リサイクルをめざし、フィルム容器リサイクルの社会実装を進めます」。
リサイクルを加速させるためには、回収の基盤となるしくみの構築とリサイクル技術の開発が不可欠です。同時に、製品使用後のプラスチック容器の分別など、消費者を含めたステークホルダーとともに社会の意識を変えていくことも必要です。
普段は競合する2社が技術を持ち寄り「ジャパン・モデル」の確立を目指す
日本経済新聞によれば、ハンドソープの詰め替え用の販売個数シェアは2社合わせて7割、衣料用洗剤や食器用洗剤でも6割に上るという。
ライオンの掬川社長「会社を超えた連携の必要性を訴えてきたが、実動が伴っていなかった」
花王の沢田社長「競合同士だが、ESG(環境・社会・企業統治)の視点では協業関係」
と両社長のコメントを日本経済新聞が紹介する。
詰め替え容器がこれほど普及している国は世界的にみて珍しい。洗剤などの容器の水平リサイクルは海外でも始まったばかりで「業界標準」というべき手法はまだ固まっていない。
沢田社長は「ジャパンモデルとして、世界に先駆けて実現したい」と意気込む。この枠組みに参加する国内企業が増えれば、日本発の省資源化の取り組みとして世界に広まる可能性もある。 (出所:日本経済新聞)
まとめ
旭硝子財団によれば、環境問題への取り組みについて、国民の意識や行動で進んでいるイメージがある国との質問では、1位「日本」、2位「スウェーデン」、3位「オーストラリア」の結果になったという。
1位の理由は、「ごみの分別ができている」「レジ袋が有料になった」などだそうだ。
(資料出所:旭硝子財団 第1回 日本人の環境危機意識調査 結果発表)
3Rを主とした今までの循環型社会は、それはそれで効果があったことなのだろう。事実、ライオンや花王も今までリデュースなどに積極的に取り組んできたという。
しかし、今ある世界はより深刻に悪化してしまっているようだ。
サーキュラー・エコノミーの動きが加速し始めているようだ。世界の動きに遅れることなく、追いつき追い越していかなければならない。
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