Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

石油需要の拡大が終わりを迎えるとき、バイオ燃料への転換を始めるとき

 

 IEA 国際エネルギー機関が、「今世紀半ばまでに世界の温室効果ガスの排出量を実質ゼロ(カーボンニュートラル)にする目標の達成は厳しい」との見解を示す報告書を公表したとロイターが伝える。 

jp.reuters.com

 少しばかり悲観的に聞こえる。 IEAのレポートを確認してみることにした。

 

 

IEAレポート 今後のエネルギー関連技術の見通し

 IEAは2050年のカーボンニュートラル達成の可能性を完全に否定はしていない。技術の影響を調査する補足的な「Faster Innovation Case」ではカーボンニュートラルに到達する可能性があったという。

 現時点での技術動向などを踏まえた予測によるものなので、今後技術革新、イノベーションに進展があれば、また違った予測になるのかもしれない。いずれにせよ、カーボン・ニュートラルに向け、水素、バイオエネルギー、CCUSにおいてより迅速なイノベーションの進展にかかっているという。 

www.iea.org

 

 

ミドリムシユーグレナバイオ燃料の普及推進

 ミドリムシユーグレナ社はそのバイオエネルギーに取り組む。「GREEN OIL JAPAN」を宣言、バイオ燃料を普及させるためのプロジェクトを推進する。賛同する企業が少しずつ増え、西武バスもこの宣言に賛同を表明、ユーグレナ社のバイオディーゼル燃料を採用する。9月初旬、東京都練馬区西東京市東久留米市周辺を走る路線バスにこのバイオ燃料が使われ始めたという。西武バスの表明で、「GREEN OIL JAPAN」宣言に賛同する企業や自治体は合計28になったとそうだ。 

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石垣の海で、船舶のバイオ燃料を使った試験運行

 ユーグレナ社がミドリムシの生産を行う石垣島では、八重山列島でフェリーを運航する八重山観光フェリーが9月10日、ユーグレナバイオディーゼル燃料を使った船舶の試験航行を石垣港で行ったという。

 八重山毎日新聞によれば、出港式で大松社長は「八重山でもバイオディーゼルの船を走らせたいとの思いがあった。宣言に賛同し協力していきたい」と述べたという。 

ユーグレナバイオディーゼル燃料は、微細藻類ユーグレナミドリムシ)と家庭や飲食店などから排出される使用済み食用油を原料に車や船舶などのディーゼルエンジンに従来の燃料と代わって使用することができる

 硫黄成分を含まないことや他の代替燃料に比べて地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出が少ない利点が挙げられる。

 また、既存のディーゼル燃料と品質や性能が同等なことからエンジンの改造や載せ替え、給油インフラの更新なども不要となり利用拡大と普及が見込まれている。 (出所:八重山毎日新聞

www.y-mainichi.co.jp

 

  八重山毎日新聞は、ユーグレナ社の執行役員・エネルギーカンパニー長の尾立維博氏にインタビューする。 

他のバイオ燃料よりユーグレナバイオ燃料が優れている部分は

諸説あるので絶対とはいえないが、一つは食料との競合ユーグレナは限りある農地を使わず培養できる。二つ目は同じ面積に対する収穫率。同じ面積当たりで比べると生産性はよく、収量も多い。

ユーグレナバイオディーゼル燃料の性能

 いすゞ自動車さんのバスに使用し評価を頂いた。バイオディーゼル化石燃料と比較し、馬力や排出ガス量も差がなく「市販の軽油と同等」と結論を出していただいた。軽油のJIS規格にも合致している。市販の軽油と性能が同じで、環境に優しいという点がポイント。 (出所:八重山毎日新聞

 

バイオ燃料の普及に向けて

  他のバイオ燃料の多くが原料をトウモロコシやサトウキビに頼る。ミドリムシであれば非可食物であるうえ、農地利用がないことは大きなメリットだ。が、何分、まだコストがだいぶ高いようだ。

 日本経済新聞によれば、当面は一般的な石油由来のディーゼル燃料を混合して使用し、製造コストを下げて、バイオ燃料の比率を上げることを目指しているという。 

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石油需要拡大時代の終焉

 IEAは、バイオ燃料活用による排出量削減の取り組みを、グローバル市場での激しい競争や既存設備の寿命などが複雑化させているとレポートで報告する。一方で、ユーグレナバイオ燃料であれば、コストという大きな壁があるものの、既存設備をそのまま活用することができる。こうしたことの理解が進めば、普及のきっかけにはならないだろうか。 

 

  石油メジャーのBPがこの先の石油需要について大胆な予測を立てたとブルームバーグが報じる。

「石油需要拡大の時代終焉」-スーパーメジャー初めて認める

BPのエネルギー見通しは、2050年までに消費が50%減少するシナリオのほか、約80%減るシナリオも想定。「旧態依然」のケースでは、需要は回復するものの、その後は日量1億バレル近くで20年間横ばいの状態が続くとみている。 (出所:ブルームバーグ

 

 ブルームバーグによれば、BPのバーナード・ルーニー最高経営責任者(CEO)は、新型コロナのパンデミックと規制強化、消費者の行動変化の結果として、石油消費が既にピークに達したのではないかと考え、今後10年で石油・天然ガス生産を40%減らし、世界有数の再生可能エネルギー事業に多額の投資を行う方針を先月明らかにしたという。 

www.bloomberg.co.jp

 

まとめ

 こうしたレポートを考慮すれば、いつまでも石油由来の燃料に頼っていてよいのだろうかと思う。

 ディーゼル燃料を使う移動体は数多くある。これがすべてが電動化や水素利用に変わっていくには設備更新を待って長い時間がかかるのことになるのだろう。

 物流業界、公共交通機関などで、バイオ燃料への転換を進めていくことはできないのだろうか。

 何か変化が始まり出そうとしているような気がする。乗り遅れないほうがいいのかもしれない。

 

「関連文書」

dsupplying.hatenablog.com

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「参考文書」

r.nikkei.com