Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

変化する世界 菅首相が掲げた社会像と「自助論」

 

 ここ最近の世界の変化に目を丸くする。少しばかり驚いたの国連総会の米トランプ大統領の発言だろうか。

 時事通信によれば、ビデオ演説で、「中国は廃棄物の海洋投棄や他国の領海で魚の乱獲を行っている」と述べ、環境問題でも中国批判を展開したという。 共同通信は、「中国の排出量は米国の2倍近く、しかも急増している」と主張した上で「パリ協定から離脱後の昨年、米国はどの協定参加国よりも排出を削減した」と誇示していたと伝える。

 米中対立の影響あってのことだろうが、環境問題に後ろ向きと思われるトランプ大統領が、あえてそれを話題にしたことに変化を感じる。

 

 

 

米GE 祖業のひとつ火力発電事業からの撤退

 米国では、GE ゼネラル・エレクトリック社が祖業のひとつともいえる石炭火力発電事業から撤退するという。

 この10年で石炭発電のシェアが下落を続け、20年の1-6月期に20%を切ったという。日本経済新聞によれば、天然ガスや再生エネとの価格差が広がり、全米で石炭発電所の閉鎖が相次いだことが理由のようだ。こうした背景もあって、GEは撤退を決めたのであろうか。

 化石燃料産業保護に動いたように見えたトランプ大統領であったが、米国社会がそれに反して、気候変動対策を着実に実行してきた現実を垣間見る。

 

r.nikkei.com

 

 世間を騒がせた日本の石炭火力の輸出政策、その対象になっていたのはベトナムに建設予定のブンアン第2石炭火力発電所。三菱が主導していたことで問題視されていたが、そのプラントはGEが担当する予定だった。GEの火力発電からの撤退は、このプロジェクトにも影響を及ぼすのだろうか。三菱は撤退する口実にできないのだろうか。

 

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 GEに逆風が吹いているようだ。期待していたGE得意の航空機のジェットエンジンはコロナ渦で打撃を受け、GEの主力事業がまたひとつ苦境に陥るように見えてしまう。

 

 米ゼネラル・エレクトリック小史

トーマス・エジソン。あの白熱電球を世に送り出したのは1879年。わずか3年後には“パール・ストリート・ステーション”という大規模な中央発電所をニューヨークに開設して本格的な「電気の時代」を幕上げ。その後、1892年に競合メーカーであったトムソン・ヒューストン・カンパニーと合併、ゼネラル・エレクトリック・カンパニー(GE)を設立しました。 (出所:GEジャパン公式サイト)

 

www.gereports.jp

 

 エジソンとGEが開発し実用化してきたものが、人々の生活をより便利にしてきた。電球は暗かった夜を明るくし、様々な家電が家事を楽にし、ラジオやテレビがそれまでの娯楽を変えた。電力を利用するための発電機は航空機のエンジンの開発につながっていった。また、多くの高機能プラスチックスがGEで開発され、人々の生活に役立つことにもなった。今、それらが変化の波に晒されている。

 

 

 

欧州で勢いづく水素関連事業

 欧州は、水素活用の動きを加速させていている。航空機のエアバスは、水素ハイブリットのゼロエミッション航空機のコンセプトを発表し、2035年の初飛行を目指すという。独ダイムラーは、燃料電池で1000km走る大型トラックを2023年には走らせるという。

 

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 (写真出所:エアバス公式サイト

 

中国はカーボンニュートラル 「実質ゼロ」へ

 中国は、2060年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする脱炭素社会の実現を目指すと国連のビデオ演説で表明した。時間はかかるが、世界一の温室効果ガス排出国が「実質ゼロ」を宣言することの意味はあることなのだろう。

 

this.kiji.is

 

 世界で、様々な変化が始まっているように感じる。

 

国内はどうなるか、菅新政権が掲げる社会像「自助、共助、公助、そして、絆」

 日本では菅政権になり、目指す社会像として「自助、共助、公助、そして、絆」が掲げられた。 「経済優先」の社会から変化があるのだろうか。

 

 サミュエル・スマイルズの「Self Help(自助論)」を思い出した。

「天は自ら助くる者を助く」

 「我々は制度を重んじすぎる。もっと個人に目を向けなければならない」。

 「自助」、...「人がそのような生き方をすることで、社会に活力がうまれて強い国になります」。

 

 いつの時代にも、自分で努力するのではなく、制度され整えば豊かで幸せな境遇が手に入るものどと信じるいるものが多いのです。そのことから、よい法律さえ作れば人類は進歩するのだという誤解が生じます。

(中略)

 政府は主として、保護こそがその役割であると心得るべきです。政府の果たすべき仕事しては、生命を守り、自由を守り、財産を守る、それで十分なのです。(引用:イギリス流大人の気骨 スマイルズの「自助論」エッセンス版 P18)

  

 

 

 

 「社会問題」についても、この本は指摘し、「それは、個々の人間の人生のなかの歪みが大きく育ち、生い茂ったものに他ならない」という。

 法律では根絶できず、「改めるべきは、ここの人間の生き様であり、人間性だ」という。そこから攻めいないと「社会問題」は解決しない。

 

 また、「すぐれた強い人ほど、他人の助けを易々と認めるものです」という。

雄々しき依存と雄々しき自立、

雄々しき依頼心と雄々しき独立心、

この二者は互いに矛盾するように見えるが、どちらも必要なものだ (引用:スマイルズの「自助論」エッセンス版 P25)

 

 菅首相がいう「自助、共助、公助、そして、絆」と相通じるものがあるように思う。

 そして、それはSDGsのダイバシティ&インクルージョンの考えにつながらないだろうか。

 

現代という時代は、様々なメディアやインターネットが普及したことなどにより、人間の卑しい面が拡大して現れるといことが大きな問題になりつつあります。また現代社会には、弱者につけこもうとする詐欺、一攫千金をねらった金融操作、さらには企業による偽りの表示や広告など、安易にお金を稼ごうという発想から、様々なかたちの不正が横行しています。

しかし、その一方で、地味ながらきちんと仕事をし、営々と信用を築きてきた人間や企業がいささかの揺るぎもなく堂々と立っている頼もしい姿もまた、我々の目にあります。

(引用:イギリス流大人の気骨 スマイルズの「自助論」エッセンス版 P4)

 

 この「自助論」のエッセンス版の訳者の山本史郎氏は、まえがきでこう書いた。この本が発刊されたのは12年前のこと、それだけの時間が経過しても何も改善していないように思う。

 そう思うと、菅首相が掲げた社会像に新鮮さを感じる。社会の変化につなげて欲しい。

 

 早速、様々な批判もあるようだ。時間が経過すれば、見えてくるものもあるのではないか。批判はそれからでも遅くないように思う。

 

 

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