米アマゾンで「ClimatePledgeFriendly」というプログラムが始まった。顧客がより持続可能な製品を簡単に見つけて購入できるようにするための新しいプログラムだという。また、これに合わせ、「CompactbyDesign」というアマゾン独自の新しい認証も始めた。より効率的なデザインの製品を特定するためのもので、製品の梱包が小さくなり、輸送効率が向上、炭素排出量の削減につながるという。
「ClimatePledgeFriendly」プログラムは、25,000を超える商品が対象になるという。これら商品を検索すると、「Climate Pledge Friendly」ラベルが表示され、自然界の保護に役立つ19の異なる持続可能性認証が1つ以上あることを示すという。
レインフォレスト認証やフェアトレード認証、FSC認証などが含まれる。消費者庁は、こうしたラベル認証付き商品の購入を「エシカル消費」とし推奨している。
この発表に合わせ、Amazon CEOのジェフベゾス氏は「販売パートナーに、将来の世代のために地球を保護するのに役立つ持続可能な製品の開発と販売を奨励する」と述べたそうだ。
拡がるアマゾンのサステナビリティ
この新しいプログラムの他にも、今年6月には、持続可能な脱炭素化技術とサービスの開発をサポートする20億ドルの投資プログラム「ClimatePledgeFund」を立ち上げ、スタートアップの支援を始めた。
アマゾンによれば、輸送とロジスティクス、エネルギー生成、貯蔵と利用、製造と材料、循環経済、食品と農業など、複数の業界にわたる先見の明のある企業に投資しており、その製品とソリューションは低炭素経済への移行を促進するという。
気候テクノロジーはAIのVC投資より3倍のスピードで成長する
気候変動対策に挑戦するスタートアップの支援は、アマゾンのようなCVC コーポレートベンチャーキャピタルを中心とした動きかと思っていたが、世界的にはVC投資も急成長しているという。
TechCrunchによると、「気候テクノロジー」へのVCおよび企業の投資は、2013年から2019年にかけてVC全体を上回るペースで成長しており、アーリーステージの資本は600億ドル(約6兆2700億円)に上ることが主要な最新レポートで明らかになったという。
PwCによる最新の調査「The State of Climate Tech 2020」では、VC市場全体から見ると気候テクノロジー分野へのVC投資はまだ黎明期であるが、急速に成長しており、2013年の年間4億1800万ドル(約440億円)から2019年には163億ドル(約1兆7200億円)に増加したことが示されている。
同レポートによると、これは同時期のAIへのVC投資の成長率の約3倍で、VCの平均成長率の5倍になるという。 (出所:TechCrunch)
また、TechCrunchは、CVCの比率も高まっていると指摘する。その理由に企業の脱炭素化へのコミットの動きがあり、それを速やかに商業化させる必要があるからとだいう。
企業の関与は気候テクノロジーの継続的な成功の鍵となるでしょう。新ソリューションへの需要を駆り立てるネットゼロのコミットメントと、イノベーションの商業化への投資の両方の観点からそのことが言えます。
スタートアップが新たなイノベーションを迅速に展開し、市場拡大を図るには、単に資金面の手段だけでなく、商業的なノウハウや業界の知識も必要です。 (出所:TechCrunch)
気候テクノロジーへの新規投資ではアメリカと中国が先行する。それ以外で、上位10都市に入っているのは、ベルリン、ロンドン、ラベージュ(フランス)、インドのバンガロールで、主にエネルギー、農業、食料、土地利用分野で13億ドル(約1370億円)の資金を集めているとTechCrunchは指摘する。
日本でもCVCが盛んになったと聞く。また、気候テクノロジーに関連するであろうスタートアップもあるようだが、それでも世界の動きからすれば、スローということなのであろうか。
経済産業省「クライメート・イノベーション・ファイナンス」を推進
経済産業省は、環境イノベーション・ファイナンス研究会を立ち上げ、 着実に低炭素化、脱炭素化を進めて行く、「移行(トランジション)」と「イノベーション」の取組みに対して資金供給を促進する方策について議論を行なってきた。
これまでの成果として「クライメート・イノベーション・ファイナンス戦略2020」の中間とりまとめがまとまったという。
(資料:経済産業省「クライメート・イノベーション・ファイナンス戦略2020 環境イノベーション・ファイナンス研究会中間取りまとめ」)
この中間とりまとめでは、「クライメート・イノベーション」のために、TGIFを同時推進するという基本的な考え方を提言する。「SDGs」や「パリ協定」の目標達成には、TGIF、トランジション(T)、グリーン(G)、革新イノベーション(I)の「3つの重点分野」を同時に推進していくことが不可欠であり、これらの事業に対して、公的及び民間資金をファイナンス(F)していくことが重要とする。
(資料:経済産業省「クライメート・イノベーション・ファイナンス戦略2020 環境イノベーション・ファイナンス研究会中間取りまとめ」)
また、来年、スコットランド グラスゴーで開催されるCOP26までのマイルストーンを設定、準備を進めるという。
「Road to Glasgow」 来年のCOP26を見据える
経済産業省は、来年のCOP26に向け、脱炭素化施策を矢継ぎ早に発し、余念なく準備を進めているように見える。
議論が大企業を中心にした重厚長大なイノベーションになりがちのような気もする。もう少し生活な身近なところのイノベーションに挑戦するスタートアップを応援する動きがあってもいいのではなかろうか。個人的には、CO2吸収に役立つ持続可能な森林保護や環境再生型農業などの分野に注目が集まっても良さそうな気がしている。
今回公表された「中間とりまとめ」の”おわりに”では、気候変動対策は、将来世代に影響を与える、現在の「静かな危機」と指摘する。従来型の大企業を中心にした護送船団方式から一歩抜け出るアクションが求められてはいないだろうか。