脱プラを進めなければならない。気がつけば、海も陸上もプラごみばかりになってしまっている。
循環型経済「サーキュラーエコノミー」がメガトレンドになり、脱プラ社会はそこから始まるようように語られる。多くのグローバル企業が率先、推進し、今では国内企業もこの動きに加わり、国も循環型経済への移行を目指すようようになった。
サーキュラーエコノミーとエレン・マッカーサー
2010年、一人の英国人女性が財団を立ち上げ、「サーキュラーエコノミー」を推奨し始めた。
デイム・エレン・マッカーサー、エレンマッカーサー財団の創設者である。
2005年、彼女はまだヨットに乗り海の上にいた。そして、その年の2月7日、ヨットの世界最速単独世界一周の世界記録を更新した。28歳の若さであったという。
彼女の記録は、71日と14時間18分33秒、27,354海里(50,660 km)をカバーした世界記録だという。彼女はこの航海で気づきがあったという。
At sea, what you have is all you have, stopping en route to restock is not an option and careful resource management can be a matter of life or death....
My boat was my world, I was constantly aware of its supplies limits and when I stepped back ashore, I began to see that our world was not any different.
I had become acutely aware of the true meaning of word ‘finite’, and when I applied it to resources in the global economy, I realised there were some big challenges ahead.
(出所:エレンマッカーサー財団)
(写真:Wikipedia Ellen MacArthur on her arrival in 2005)
それから10年あまり、2018年にはスイスダボスで開催された「世界経済フォーラム」に参加していた。2025年までに、100%再利用や堆肥化可能なパッケージの使用に取り組む主要なブランドのリストとその目標を「New Plastics Economy グローバルコミットメント」としてまとめ、発表した。
その企業リストには、ロレアル、ペプシコ、コカ・コーラ、ユニリーバ、ウォルマートなど11社の名があった。
最終的には使い捨てプラスチックスの必要性を無くすことが目的だという。
New Plastics Economy グローバルコミットメントの進捗
英エレンマッカーサー財団は11月5日、「The Global Commitment 2020 Progress Report」を公表し、2018年の世界経済フォーラムで発表した目標の2回目の進捗を報告した。
www.ellenmacarthurfoundation.org
使い捨てプラスチックスを無くそうとする、このプロジェクトに賛同した企業全体で、2018年から19年の間で、再生プラスチックスの使用量が22%増加したという。
ユニリーバは、リサイクル素材の使用を2018年の1%から5%に増やし、SCジョンソンやダノンでも改善が報告されたという。ウォルマートは、再生プラスチックの量を年間で0.47パーセントから9パーセントに増やしたが、ネスレはその使用率は2%のままで変化がなかったという。世界最大の消費財メーカーであるP&G プロクター・アンド・ギャンブルにいたっては、このプロジェクトに参加しないことを選択したという。
(資料:エレンマッカーサー財団「The Global Commitment 2020 Progress Report」
この報告書でエレンマッカーサー財団は、次のように警告し、提案を行う。
・今日リサイクルできていないパッケージタイプに対して大胆な行動を取る—リサイクルを機能させるための信頼できるロードマップを作成して実行するか、それらから離れて断固として革新する。
・野心的な削減目標を設定する
また、業界だけによる自発的な行動では、必要な規模とペースで変化をもたらすことはできないとし、各国政府に次のことを呼びかける。
・収集と選別に専用の安定した資金を提供するポリシーとメカニズムの確立。これがなければ、リサイクルは拡大する可能性はほとんどない。
・プラスチックスの循環経済のビジョンに基づいて、国連環境会議を通じて、グローバルな方向性と目標を設定し、行動するための国際的な枠組み、条約の締結。
エレンマッカーサー、決意と信念の人と呼ぶのだろうか。彼女の財団は個人が立ち上げた慈善団体のはずだが、今では国連にまでその影響力を行使する。
刃物の貝印が紙カミソリを発表
総合刃物メーカーの貝印が「紙カミソリ™」を発表した。2021年春に公式サイトで先行販売し、一般販売は来秋になるという。価格は未定。
使い捨てカミソリ分野においてのシェアNo.1のメーカーとしての責任から「30年までにCO2排出量の半減を目指す」と宣言したこともあり、その活動の一環として商品化するそうだ。
(写真:貝印 PR Times)
本製品は「環境に配慮したカミソリ」という価値だけでなく、「紙を使ったおしゃれで先進的なカミソリ」として独自のポジションを築いていくと貝印は表明する。
この発表は、「KAI Edge Museum 刃物で切り開く未来」というオンラインイベントで行われ、ゲストで夏木マリさんや冨永愛さんも参加したという。また、ゲストとコラボした製品の紹介もあり、その製品でも素材を工夫し環境に対し配慮する。
(写真:貝印 PR Times)
脱プラに向け、こうした活動に加え、少し違ったアプローチも必要なのではないであろう。今までにないことをやろうと思えば、今までと同じアプローチではお客様の気づきにつながらないのかもしれない。
自然や私たちが暮らす環境を守るために経済社会を変えていくには、忍耐強く、地道に活動を続け、共感を生み、理解につなげていかなければならないのかもしれない。
「関連文書」
「参考文書」
www.ellenmacarthurfoundation.org