Up Cycle Circular’s diary

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【コロナ対策と脱炭素化】 カーボンニュートラルを現実に考えるとき

 

 またコロナが再拡大し始めているようだ。北海道の新規感染者数が200人になったという。やはり冬になった影響があるのだろうか。

 「急速な感染拡大に至る可能性が高い」との話が、昨日9日の政府新型コロナウイルス感染症対策分科会であったようだ。

 時事通信によれば、分科会の尾身会長は記者会見で、「全国的にも徐々に感染が増加しているのは間違いない」と強調し、感染者が急増する状況を示す「ステージ3」に当てはまると判断すれば、休業要請や感染地域への移動自粛など「社会経済活動に制約を求める強い対策を行う必要がある」と警鐘を鳴らしたという。

 

www.jiji.com

 

 またコロナのことを気にかけなければならなくなった。気が付けば、感染者の累計が10万人を超え、いつの間にか中国の感染者数より多くになっている。

 兎に角、感染が拡大しないようあらゆる手を尽くしてほしいと願うばかりだ。

 

 

 

新型コロナ対策と経済活動

 そんな中、政府の経済財政諮問会議が昨日9日に開催された。首相官邸によれば、会議では、金融政策、物価等に関する集中審議、グリーン成長に向けた投資・イノベーションについて議論が行われたという。

 この会議での首相の発言が官邸公式ページで公表となった。首相は、発言の冒頭、コロナについて言及、

「まず、新型コロナウイルスについてでありますが、先週末には新規陽性者数が1日1,000名を超えており、最大限の警戒感を持って対処する必要があります。

現在の病床利用率は感染拡大地域でも概ね3割程度にとどまっていますが、爆発的な感染を防ぎ、国民の命と健康を守り抜きます。

このため、これまでの経験を踏まえ、地域を絞った大規模・集中的な検査、専門人材の応援派遣などの対策を先手先手で講じてまいります」 (出所:首相官邸公式ページ)

と述べたという。

 

www.kantei.go.jp

 

 首相は、コロナの発言に続き、グリーン成長について、「ポストコロナの最大の課題であります『2050年カーボンニュートラル』の実現は、エネルギー供給のみならず、我が国の産業構造や資金循環など、経済社会全体の変革をもたらすものであると考えます」と述べ、「グリーン成長を推進する国際的な議論への貢献、グリーン投資の更なる普及、コア技術への重点的な資金支援、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた電力ネットワークや規制の改革などの論点を含め、今後、成長戦略会議において具体的な検討を深めていただきたい」と話したという。

まずは、新型コロナウイルスの感染対策に万全の対策を講じ、社会経済活動との両立を図りながら経済を回復させ、さらに、グリーン社会の実現、デジタル改革などにより、社会経済の大きな変革に取り組みます。

 (出所:首相官邸公式ページ)

 

 何よりコロナ対策、その優先順位を違えないで欲しい。

 

 

 

 当日の会議資料が内閣府の公式ページで公表となった。民間議員の他、黒田日銀総裁、小泉環境相、梶山経産相らの資料もそれに含まれている。

 

www5.cao.go.jp

 

「ビヨンド・ゼロ」の社会実装 経済産業省

 経済産業省は、これまで、産業革命以降累積したCO2の量を減少に転じさせる「ビヨンド・ゼロ」技術の確立を目指して検討を進めてきたという。この先は、「カーボンニュートラル」を成長戦略として取り組むという観点から、イノベーションの加速と技術の社会実装を見据えた対応策について検討していくという。
 カーボンニュートラルを目指す上で、水素、蓄電池、カーボンリサイクル、洋上風力などを不可欠な重要分野にあげ、具体的施策、政策を成長戦略会議で報告するという。

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(資料:内閣府公式ページ 「グリーン成長の実現に向けて」

 

 

 

経済社会のリデザイン(再設計) 環境省

脱炭素ライフスタイルへの転換による需要創出」と小泉環境相はいう。

 

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(資料:内閣府「グリーン成長に向けた投資・イノベーションの提案」

 

 その背景には、国内の排出量の約6割が、ライフスタイル(住宅、移動等)に起因していることによるという。それらの可能な限り早期の脱炭素化が重要だと指摘する。

● 脱炭素ライフスタイルへの転換で、個人消費の誘発と、新たなグリーンビジネスの機会創出(脱炭素製品・サービスの製造・提供へ)
● 住宅関係の省エネ機器・製品、電動車は、国内市場のみならず、世界市場への展開も期待 

(出所:内閣府「グリーン成長に向けた投資・イノベーションの提案」)

  

原発再稼働を求めた経団連

 経団連は、「2050 年カーボンニュートラル」を目指し、また、来年開催されるCOP26 も見据えつつ、取り組みを抜本的に強化する必要があると指摘する。

 経団連から示された提言は、経済産業省のそれに近い。「脱炭素化を実現するための電化・水素化、CO2の固定・再利用等のコア技術の開発・普及を加速し、イノベーションで世界をリードしていく」といい、それがわが国流のグリーン成長、コロナ禍からのグリーン・リカバリーになるという。

 また、環境省が推奨する分散化電源にも言及、「屋根置き太陽光パネルや蓄電池、さらにはEVなどをデジタル技術で結び、エネルギーの地産地消を可能にするマイクログリッドの実現や、それによって得られるデータの利活用など、電力DXの実現に向けた投資も加速する必要がある」と指摘し、「分散型電力システムの構築は、エネルギー効率の向上はもちろん、地方創生の観点からも有意義である」という。

 その一方で、原発についても以下のような提言を出す。

既設原子力発電所の再稼働が進まない現状で、大手電力会社の投資は専ら原子力の安全対策費用に回ってしまっている。合理的な規制のもと、安全性が確認された原子力発電所の再稼働を推進すべきである。再稼働によって電力会社の投資余力が増すことも重要だが、それ以上に、脱炭素社会の実現を真剣に考えれば原子力の活用は不可欠である。

足元、原子力産業を支える技術・人材の維持・確保は限界に近付いている。リプレース・新増設を含め、今後の原子力利用の方針を速やかに明確化することが求められる。

(出所:内閣府「グリーン成長の実現に向けたイノベーションと投資の創出」

 

 

 

 大方針として「脱原発」とするのかなど早急にまとめる必要があるのだろう。未曾有の事故を起こし、その災禍を苛まれてきた事実を考えれば、期限を切っての利用というのが現実ではなかろうか。ドイツは「脱原発」「脱石炭」で動き出している事実もあるのだから。

 

現実的に考える

 米国は大統領が変れば、今までの遅れを挽回するかのように、4年で210兆円という大規模な投資を行ない、強力に脱炭素化を進めることになるのだろう。

 再生可能エネルギーを強力に推進、また、自動車についてはEV化を後押しするため、EV充電施設を50万カ所設けるインフラ整備を急ぐという。危機的な気候変動、地球のことを考えれば、現実的な政策ということなのだろうか。

 

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 NHKによれば、経団連の中西会長は入院先の病院からオンラインで会見を行い、「感染拡大で、経済成長のためにやるべきことのスピードが早まっている。政府と連携しながら戦略の共有を図っていきたい」と述べたという。

 そうであるならば、あまりイノベーションだ、DXデジタルトランスフォーメーションなどといわず、こだわらずに、まず今できること、やれることをやるべきではなかろうか。イノベーションを標榜するあまり、ガラパゴス化した技術革新が起きたりする可能性もあろう。それでは今までの成長戦略と何ら変わりないことになってしまう。

 国境を越えて、技術開発に連続性が生まれれば、必然どこかでイノベーションが起きるのだから。

 国際社会と共同歩調で進めると同時に、国内産業を発展させていくことが肝要なのではなかろうか。

 もう、同じ轍を踏んではほしくない。

 

 

「関連文書」 

dsupplying.hatenablog.com

 

r.nikkei.com

 

「参考文書」

www3.nhk.or.jp