ナイキの動画広告が話題になっているという。AFPによれば、日本語で制作された動画は「動かしつづける。自分を。未来を。」と題され、片親が外国人、または日本人ではない少女3人が学校でいじめを受けながらも、サッカーを通して自信をつけていくというストーリーだという。
動かしつづける。自分を。未来を。#YouCantStopUshttps://t.co/EEkOkOOeLt pic.twitter.com/aPnZcPAO05
— Nike Japan (@nikejapan) 2020年11月28日
2日までにナイキジャパン(Nike Japan)のユーチューブチャンネルでは「いいね」が5万を超えた一方で、3万人以上のユーザーが低評価をつけ、その多くが同社を「反日的」だと非難している。
....... 広告に添えられた発表には、ありのままの自分を受け入れられないことに悩むスポーツ選手の体験に基づいており、差別やいじめを受ける10代の少女3人に焦点を当てたと書かれている。 (出所:AFP BB NEWS)
AFPによれば、ナイキのシニアマーケティングディレクターのバーバラ・ギネ氏は「ナイキは長い間、少数派の声に耳を傾け、支え、ナイキの価値観にかなう大義のために意見を述べてきた」と記しているという。
(写真:NIKE)
NIKEと人種差別という問題
ナイキは過去においても問題提起する広告を出していた。BLM運動のときもそうだった。AFPによれば、米国で警察に拘束された黒人男性が死亡した事件を受けて全土に抗議デモが広がる中、Nikeが、世界的に有名なスローガン「Just Do It(とにかくやってみよう)」を元にした「Don't Do It(それをするな)」というスローガンを使った反人種差別キャンペーンを立ち上げたという。
Let’s all be part of the change.#UntilWeAllWin pic.twitter.com/guhAG48Wbp
— Nike (@Nike) 2020年5月29日
ナイキは、「もうこれっきりでやめよう…アメリカに問題がないふりをするのは」と呼び掛けるキャンペーン動画をツイッター(Twitter)に投稿した。
動画では続けて、「人種差別に背を向けるな。無実の命が奪われることを認めるな。もう言い訳はするな。自分には関係ないと思うな」と訴えている。 (出所:AFP BB NEWS)
一企業のナイキの勇気ある行動に敬服する。なぜ、NIKEはそこまで自分たちの大義にこだわることができるのだろうか。
NIKEと日本庭園
そのナイキの米ポートランド郊外ビーバートンの本社には日本庭園があるという。広大な敷地の中心には、広々とした池があるそうだ。
ナイキの創業者フィル・ナイト氏と日本との関わりは意外と深い。
ナイキ創業間もないころの恩義を、その日本庭園に込めていると語るフィル・ナイト氏の言葉を東洋経済ONLINEが紹介する。
「我々はキャンパス中に、ナイキとともに歴史を作ってきたアスリートの名前を冠するグラウンドを設置しています。
日商岩井はナイキの歴史の中で、非常に、非常に重要な位置を占めます。そこで、キャンパスの中心に日本庭園を設置しています」 (出所:東洋経済ONLINE)
その庭園は、「Nissho Iwai Garden」(日商岩井ガーデン)という名がついているそうだ。春になると桜並木が満開になり、中心にある池を望む場所は社員が憩うという。
NIKEとSDGs
BLM運動のときに、ナイキは、「ブラックコミュニティへの取り組みに関する声明」を発表し、多様性に関して、包摂的な環境を育て、より多様な労働力を採用する独自の取り組みと説明責任への対策を強化してきたという。
米企業のNIKEといえども、SDGsへの貢献を忘れない。専用ページを立ち上げ、ナイキが取り組むSDGs項目を謳う。もちろん、それには、ゴール#5に記されるジェンダー平等も含まれる。
SDG 3: 健康と幸福
SDG 5: ジェンダー平等
SDG 8: 働きがいのある仕事と経済成長
SDG 12: 責任ある消費と生産
SDG 13: 気候変動対策
SDG 17: 目標のためのパートナーシップ
そして、ナイキが目標とするのは、
「スポーツを通じて世界を一つにし、健全な地球、活発なコミュニティ、すべての人にとって平等な社会を創り出すこと」
ナイキの存在意義なのかもしれない。
今回の広告動画も、こうした目標があってのことだろうか。ゆかりの深い日本のことを忘れず、米国と同じように問題提起してくれたのかもしれない。
センシティブな問題なだけに様々な意見があって不思議ではない。その違いを認めつつ、理解を深めていくべきなのだろう。
SDGsと企業の役割
「SDGsに関する動きなんかを見ていると、国の方が動きが遅れていると思います。日本もそうですけど、民間の方が進んでいます」と話すのは、慶応義塾大学大学院の蟹江憲史教授。GLOBE+が同氏にインタビューした時の言葉だ。
国が音頭を取って調整するというのも一定程度大事だと思いますが、
それよりも個人レベルの動き、一つ一つの企業の動き、そういったものが連携して組み合わさって世の中の動きが変わっていくんじゃないかなと思います。 (出所:The Asahi Shimbun GLOBE+)
ナイキのように問題提起する企業が増えればいいのかもしれない、そう感じる。
そして、このコロナ渦における社会のことやSDGsのことも考えるきっかけになればいいのかもしれない。
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