Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

コロナと安心・安全 首相の記者会見から

 

 菅首相が昨日4日、記者会見を行った。足元で拡大するコロナについての言及を期待したが、大きな変化もなかったとの印象をだった。

 首相からは改めて、「マスクの着用、手洗い、3密の回避といった基本的な感染対策を徹底していただきたい」とのお願いがあった。それが科学的にも効果が立証されているという。感染対策、感染予防は私たち一人ひとりに託されているということなのだろう。

 新規感染者数や重症者数が過去最多となり、極めて警戒すべき状況が続いている、重症者向けの病床が逼迫し始め、強い危機感を持って対応していると首相はいう。

 「国民の命と暮らしを守る」

これが最大の責務だという。コロナの感染が続く中で、大事なのは安心感、そして、将来への希望だともいう。

 

 

 

優先される経済対策 コロナ対策は二の次

 しかし、第一波、第二波、第三波と続けば、安心感を得ることが難しいし、将来の希望も霞んでしまう。

「当面は何が起きても対応できるように、十分な額の予備費を確保します。これらの措置により、国民生活の安心を確保し、将来の成長の基盤をつくります」

お金を積み増すと言われても、感染してしまったら元も子もない。感染がある一定の範囲でコントロールされていれば、こうした話で少しは安心感を得ることができるのかもしれないが。

 

 朝日新聞は、新型コロナウイルスを抑え込むための具体策には、これまで以上に踏み込むことはなかったと指摘する。

 

digital.asahi.com

 

 一方で、首相は、新型コロナの分科会が感染リスクの高い場面として指摘するのが「飲食」だと明かし、お店の時間短縮は極めて重要と考えているという。

 それを受けて、Go Toイートの新規発行の停止、人数制限などを要請し、Go Toトラベルでは、一時的に札幌市や大阪市に向けた旅行を対象外とし、これらの地域からの旅行、また、東京都の高齢者、基礎疾患をお持ちの方々については、利用を控えるように呼び掛けたという。

 分科会が指摘した「感染リスク」を、すでに始まってしまった「飲食」を推奨する経済対策の運用で切り抜けようとしているように聞こえる。無理はないのだろうか。

 

「検査や感染者への対応を行う保健所、軽症者用のホテル、重症者用の病床、それぞれについて、更に体制を整えてまいります。

各地の保健所に派遣する専門職、これまでの倍の1,200名、確保いたしております」。

(出所:首相官邸公式ページ)

 

 政府のコロナ施策は後追いになっていないだろうか。それでは予防でもなければ、対策でもでない。

 国民一人ひとりの努力が感染拡大を抑えてきたとしかいえない。

 

 

 

コロナと観光産業とGo Toキャンペーン

 発言を終えた首相に記者たちが質問を投げかける。Go Toトラベル事業の見直し、特措法改正について質問したのはTBSテレビ。その記者は、さらに、

「政府は、現在、感染状況のステージの判断を各都道府県の知事に委ね、その判断に基づいて、最終的に政府が運用の見直しなどについて決定をする」と指摘、「今後より迅速な対応を行うためにも、政府が感染状況の判断等も含め、より主体的に関わるよう、意思決定のプロセスを見直すお考えはありませんか」と問う。

 首相は、「Go Toトラベルの見直しですけれども、地域の感染状況を踏まえて、各都道府県知事の意見を伺いながら国が最終的に判断する、このようになっています」と淡々と答える。 

 

 記者会見最後の質問は、フランスの公共ラジオ局のラジオ・フランスの特派員西村氏だった。氏は、「Go Toトラベルキャンペーンを強く推進する自民党の二階幹事長は全国旅行業協会の会長を務めている」と指摘し、「結果的に他の業界に比べて自民党はこのトラベル業界を優遇するのではないかと思う国民がいるのでは」と、首相に質問をぶつけた。そして、菅首相はこう答える。

そもそも日本には観光関連の方が約900万人おります。全国にホテルや旅館、さらにはホテルや旅館で働く従業員の方、そしてお土産を製造する、あるいは販売をされる方、農林水産品を納入する方、そうした、まず地域で活躍されている方が観光を支え、観光に従事されている方が地域をしっかりと支えていただいているということもこれ、事実だというふうに思っています。そういう中で、このGo Toトラベルを政府としては実行に移してきているところであります。

 地域の中でそうした生活をしている人が当時は5月、6月は稼働率が1割とか2割だったんです。そうした人たちはもう、このまま行ったら正にこの事業を継続することができないというような状況の中で、私どもはこのGo Toトラベルをさせていただいて今に至っています。 (出所:首相官邸公式ページ)

 

  雇用調整助成金の特例措置の延長を語り、さらに、公庫による最大4,000万円の無利子・無担保融資も来年前半まで続け、手元資金に困る人々に緊急小口資金し、所得の減少が続いている場合には返済も免除し、これらの措置も延長するという。

 こうした措置を施し、観光産業以外には救済すべき産業はなかったのだろうか。

 

www.kantei.go.jp

 

 

 

コロナという悲しみ

 感染者の数字の多寡に関係なく、コロナに感染し辛い思いをする人たちがいる、コロナで亡くなられた人の回りには計り知れない悲しみが存在する。

 この状況下で、医療従事者は日夜奮闘し、介護や福祉の現場も感染予防、感染対策に気をつかい、感染を抑え込もうとする。

 安心・安全を真に願う人たちがいる。

 そう思えば、「国民の命と暮らしを守る」、これが最大の責務だといい、コロナの感染が続く中で、大事なのは安心感、そして、将来への希望だという首相の言葉に齟齬があるように思えてならない。

 

 大雨による甚大な被害が続くようになり、空振りになってもいいからといって、避難指示を躊躇せず発信すべきといい、大雨が予想されれば、早め早めの避難と、命を守るようにと呼び掛ける。

 コロナも大雨と同じように早め早めに注意を呼び掛けるべきではないのであろうか。命を思えば、何ら差はないはずである。国自ら空振りしたっていいではないか。

 感染者数は中国のそれを大きく上回り、死者の数も日々増えるばかりである。

 

寄り添う

 記者会見で質問に立ったフリーランスの安積氏は、首相に、「国民の命と暮らしを守ることが政府の責務だというふうにおっしゃいました。ただ、この2か月間、総理はですね、国民に対して直接もう少し頑張ってくれとか、そういった励ましの言葉を掛けられることはありませんでした」と指摘する。

 そして、「これからなおまだ厳しい状態が続くと思いますけれども、これからやはり国民に対してそういう言葉を掛けてくださるのか」と質問する。

 これに対し、首相は「これから政権として、そうしたコロナを始めとする対応策についてというのは、もっとしっかりと発信できるようにしていきたい、こういうふうに思います」と答える。 

 

 こういう時こそ、大事なことは伝達手段である言葉だ。

 そして、齟齬が生じないように行動をコントロールするべきなのであろう。

 経済対策も感染状況を見て停止したり、必要に応じ見直したり、もっと機動的で、メリハリがあった方がいいのではなかろうか。極めて困難なことであることは重々承知してのことだが、緊急事態であれば、それを国が率先してやらずして誰が実行できるのだろうか。そうしなければ、国民の命と暮らしを守れるはずもない。

  

 

「関連文書」 

www.tokyo-np.co.jp

 

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