WMO世界気象機関が、今年2020年1月から10月までの世界の平均気温が、産業革命以前(1850-1900)のレベルよりも約1.2°C高くなったと発表した。
今年の世界の平均気温は、観測史上3位以内の高温になるという見通しだという。4年後、2024年までに一時的に1.5°Cを超える可能性もあると指摘をする。
(画像:WMO世界気象機関)
WMOは、COVID-19(新型コロナウイルス)の封鎖にもかかわらず、温室効果ガスの大気中濃度は上昇し続け、大気中のCO2寿命が長いために、地球は今後何世代にもわたってさらに温暖化することになると警鐘を鳴らす。
常識外れな高温
通常、記録的な高温の年は、2016年にみられたように強いエルニーニョ現象と一致するというが、今年は地球の気温を冷却する効果があるラニーニャ現象が発生しているにもかかわらず、すでに2016年の以前の記録に匹敵する記録的な高温を示しているという。
最も顕著な高温は、北アジア、特に気温が平均より5°C以上高いシベリア北極圏で観測されたという。シベリアでの高温6月下旬に最高に達し、ベルホヤンスクで38.0°Cに達したそうだ。
(画像:WMO世界気象機関)
米国では、広範囲にわたる干ばつと極度の高温が原因で、史上最悪の山火事が発生した。WMOによると、7月から9月は南西部で記録上最も暑く、最も乾燥していたという。過去80年間で世界で最も高い気温54.4°Cがカリフォルニアのデスバレーで8月16日に記録された。
オーストラリア ペンリスでは1月4日、48.9°Cの最高気温を記録した。オーストラリアでの森林火災の記憶も新しい。
ヨーロッパでも干ばつと熱波が発生したが、これは2019年ほど激しくものではなかったという。それでも、東地中海では、7月下旬の熱波に続いて、9月4日にエルサレムで42.7°C、エイラートで48.9°Cに達し最高気温の記録を更新したという。中東では、クウェートで52.1°Cを記録し、バグダッドでは51.8°Cに達した。
こうした温暖化は北極圏での氷にも影響し、グリーンランドでは、今年すでに152 Gtの氷を失ったという。
海面も上昇し、平均して1993年以来、高度計による世界の海面上昇率は3.3±0.3 mm /年に達しているという。また、それに加え、海洋の酸性化も悪化を続けている。
海洋は、大気からのCO 2の年間排出量の約23%を吸収し、それによって地球への気候変動の影響を緩和するのに役立つというが、その反動で海洋の酸性化が進む。
「今年は、気候変動に関する「パリ協定」の5周年の年になるが、私たちは現在軌道に乗っておらず、さらなる努力が必要であるため、温室効果ガス排出量を削減するという政府による最近のすべての公約を歓迎します」とWMOはコメントする。
「パリ協定」は、気候変動の深刻な影響を防ぐためには世界の平均気温の上昇を1.5度以内に抑える必要があるとする。
日本の気候変動予測
気象庁と文部科学省は 2020年12月4日、「日本の気候変動2020 大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書」を公表した。日本としての気候変動対策の効果的な推進を目的として、 日本における気候変動について、これまでに観測された事実、今後の世界平均気温が2℃上昇シナリオ及び4℃上昇シナリオで推移した場合の将来予測をとりまとめたという。
(資料出所:気象庁「日本の気候変動2020 大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書」)
気温の傾向
気象庁によると、現在までに観測されている変化として、「国内の都市化の影響が比較的小さい15地点で観測された年平均気温は、1898~2019年の間に、100年当たり1.24°Cの割合で上昇している」という。また、「1910~2019年の間に、真夏日、猛暑日及び熱帯夜の日数は増加し、冬日の日数は減少した。特に猛暑日の日数は、1990年代半ばを境に大きく増加している」という。
気温が2℃上昇すると、さらに猛暑日や熱帯夜が増加するという。
(資料出所:気象庁「日本の気候変動2020 大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書」)
雨 降水の傾向
降水について、大雨及び短時間強雨の発生頻度は有意に増加し、雨の降る日数は有意に減少しているという。一方、年間又は季節ごとの降水量(合計量)には統計的に有意な長期変化傾向は見られないというのが、現在までに観測されている変化だと気象庁は指摘する。降雨日数は減るが総雨量に変化はない。それだけ豪雨が発生する頻度が高まっているということなのだろう。
(資料出所:気象庁「日本の気候変動2020 大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書」)
報告書はこの他にも、「降雪」「台風」「海面水温」「海面水位」「海氷」「海洋酸性化」の今までの変化と将来予測を示す。
国内の温室効果ガス排出の影響は
環境省が、2019年度の温室効果ガス排出量(速報値)を公表した。2019年度の温室効果ガスの総排出量は12億1,300万トン(二酸化炭素(CO2)換算)で、前年度比2.7%減(2013年度比14.0%減、2005年度比12.2%減)だったという。6年連続の減少という。
(資料出所:環境省「2019 年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(速報値)」)
温暖化原因のGHGの排出が減っても、世界の平均気温は上昇、それと同様に国内でも同じ傾向を示す。自国のことばかり考えていても、何の対策にもならない。
まとめ 気候はすべての土台、家のようなもの
「気候危機は課題ではなく、メッセージであると私は受け止めています」と語る、世界的ジャーナリストのナオミ・クライン氏の言葉をサステナブル・ブランド・ジャパンが紹介する。氏は、「地球が燃えている―気候崩壊から人類を救うグリーン・ニューディールの提言」の著者であるという。
氏は、今、われわれのシステムが危機に直面しているというメッセージが洪水や火災、干ばつなどによって語られているという。
気候はすべての土台であり、われわれの家のようなもの。
その中には、経済、健康、ジェンダー…とあらゆる問題が含まれています。家が危機に直面しているのですから、家の中にあるすべてのものも危機に直面しているということなんです (出所:サステナブル・ブランド・ジャパン)
「経済のしくみ」が今のままでいいということではないのだろう。大所からみれば、システムを変える必要がある、そういうことなのだろう。
今ある現実も過去からの積み重ねに過ぎない。何かを変える必要があるのだろう。
誰もがみな、今の経済のしくみの中で暮らしている。日々の仕事もそうであるし、消費行動もみな経済活動だ。そうした中で、何かを変えていく必要がある。わが家を守るという忠恕の心をもって。
(忠恕とは、自分の良心に忠実であり、そして、他人に対する思いやりが深いこと)
「参考文書」
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