世界の温室効果ガス排出量が今年2020年、約24億トン減少し、昨年2019年に比し7%減少するという。世界的な新型コロナによる制限によって引き起こされた過去最大の減少だったとする米国の大学の研究結果を米CNBCが伝える。
この報告書によると、排出量の最大の減少は米国で12%、続いてEUが11%だったという。コロナパンデミックにより、発電で石炭の使用量が、輸送で石油使用量が減少したことによると指摘する。自動車と航空機からの排出量は、4月のピーク時には約半分までに減少し、12月までに2019年のレベルからそれぞれ約10%と40%減少としたという。
こうした研究成果の指摘からすれば、輸送活動において何らかの対策を施せば、確実に成果が上がるとの証左になるのだろう。
大都市の責務 東京都2030年の100%非ガソリン車化を目指す
小池東京都知事が12月8日の都議会で、「自動車の脱炭素化」について言及、「都内で新車販売される乗用車を2030年までに、二輪車を2035年まに100%非ガソリン化することを目指して、世界の潮流を牽引する」と発言した。
「ここ数カ月、世界の各国や都市に加え我が国においても、自動車のゼロエミッション化に向け動きの強化や前倒しが相次いでいる」と、その背景を説明する。
世界のCO2排出のうち運輸セクターが約2割を占めております。そして、その多くは自動車等に由来することから、これらのゼロエミッション化を進めることが、気候変動に立ち向かう世界の大都市共通の責務でございます。
これを受けてのことか、梶山経産相が「具体的な内容はこれから検討される。大きな目標だけ提示したもので、産業界への影響を今の時点で答えることは困難だ」と発言したとロイターが伝える。
脱ガソリン車 課題山積
経産省は10日、「第3回 モビリティの構造変化と2030年以降に向けた自動車政策の方向性に関する検討会」を開催し、自動車の電動化の推進の議論を行った。
「市場の創出」、「ライフサイクルでのカーボンニュートラル実現」を論点とし、マンション充電や急速充電の拡大などの「充電・充填インフラの整備」、「MaaS、スマートシティ等を通じた脱炭素化への貢献」、「電源・水素の脱炭素化」、内燃機関のカーボンニュートラル化を可能とする燃料の開発・導入などの「燃料の脱炭素化」を具体的項目にあげる。
(資料:経済産業省 第3回 モビリティの構造変化と2030年以降に向けた自動車政策の方向性に関する検討会「本田技研工業 プレゼン資料」)
NHKによれば、この会議では電池の技術開発強化の必要の指摘があり、国内に生産拠点をつくりメーカの競争力を高める必要があるとの意見が出たという。また、車の走行時だけでなく部品をつくる工程や、発電所の電源も含めたライフサイクル全体で二酸化炭素の排出削減を考えるべきといった指摘もあったそうだ。
(資料:経済産業省 第3回 モビリティの構造変化と2030年以降に向けた自動車政策の方向性に関する検討会「本田技研工業 プレゼン資料」)
経済産業省はこうした意見も踏まえて、「脱・ガソリン車」の新たな目標を年内にもとりまとめる方針だという。
課題が山積しているように見える。安易に考えれば、足元ではHVハイブリッド車が現実的に見えるが、それでいいのかという議論も必要なのであろう。
(資料:経済産業省 第3回 モビリティの構造変化と2030年以降に向けた自動車政策の方向性に関する検討会「本田技研工業 プレゼン資料」)
BEVバッテリー電気自動車を選択すれば、バッテリーや充電設備という課題もあるが、一方で使用する電力が化石燃料由来のままでは、脱炭素、カーボンニュートラルに対しては意味をなさない。
テスラのように、自らの利益を度外視し、自分たちで再エネ発電し、充電設備を整備するような志が高い企業でないと、EV化は一気に進まないのかもしれない。
カーボンニュートラルへのアプローチ
ここ最近、経産省脱炭素絡みの報道が増える。大方針に変化があったのだから、エネルギーに始まり、関連する様々なことについて検討しなければならなくなったのだろう。
上位下達、下位下層に伝わっていくうちに、何か目的が入れ替わったりしないだろうか。梶山経産相の発言を聞くと、そんな心配も出てくる。
カーボンプライシング
梶山経産相が11日の閣議のあとで、「カーボンプライシング」について言及したという。「カーボンプライシング」とは、炭素の排出量に価格付けを⾏うことで、明示的な施策として、排出量取引と炭素税がある。
この中で梶山経済産業大臣は「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする目標は成長戦略として実現するものであり、あらゆる政策を総動員することが必要だが、成長戦略に資することがない制度を導入することはない」と述べました。 (出所:NHK)
ロイターは、「産業の競争力強化やイノベーション、投資促進につながるか引き続き検討していく」と述べたと伝える。
誤解を生みそうな発言のように聞こえる。「カーボンニュートラル」と「成長戦略」のどちらが優先されているのであろうか。
「カーボンニュートラルの実現」のために必要な制度は導入する。それが成長を阻害する要因になり得るのであれば、その解決を目指すのではないか。
経産相の発言では、今までと同じ経済社会に舞い戻るように感じる。
真に環境や社会、そこに暮らす人々の役に立つことを実践できれば、自ずと利益や成長という結果は後からついてくるのではなかろうか。
政治、経済における基本中の基本を忘れていないだろうか。そろそろそれに気づかなければならないような気がする。
率先垂範、目標値の高い低いはと別として、まず自ら率先することから始めてみるのがいいのかもしれない。
河野行政規制改革相と小泉環境相が10日、そろって記者会見したという。読売新聞によれば、国の施設で来年度使用する電力の3割以上を太陽光や風力といった再生可能エネルギーで賄うよう各府省に要請したという。
小泉環境相が「まずは政府自身が変わらないといけない」と述べたという。そうしたことの具体化が成長戦略につながっていくのかもしれない。
「参考文書」