Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

新春に思う、老舗虎屋の羊羹と新しさ 

 

 新春、年があけるとそう呼ぶ。陽射しが少しずつ力強さを取り戻し始めると、少しばかりうれしくなったりする。寒い冬はあまり得意ではないが、年が明け、春の訪れを意識すると、これからの一番寒い季節も何とかやり過ごすことができると、毎年、同じことを考えたりする。あともう少しで夜が明ける時間も早まってくる。

 そんな年始は、明るい雰囲気に包まれていて欲しいと願ったりするが、どうやら今年はそういきそうにない。いい時もあれば、悪い時もある。悪いことがいつまで続くことはないのだから、あせらず、もがかず、粛々とやり過ごし、次の機会を待つしかない、そういうことなのだろう。

 

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虎屋 和菓子作れず

 虎屋、500年近くも続く和菓子の老舗。亡くなった父も虎屋の羊羹には目がなかった。

 500年前、はじまりは室町時代というのだから驚くしかない。苦難のときを何度も経験したのだろうと容易に想像できる。Business Insiderによれば、戦後は砂糖の統制が続き、和菓子を作るための原材料が入手困難となり、1946(昭和21)年8月から2ヵ月ほど休業するなど経営環境の悪化に苦しんだという。

虎屋の長い歴史の中で最も困難と言えるかもしれないこの時期を、菓子が作れずパンを作ったり、後の虎屋菓寮の前身にあたる喫茶店を開くなどして何とかしのいだ (出所:Business Insider

 避け得ない環境にあっても、続けようとの意思なのか、それとも生き抜こうとの意志がなりふり構わずの果敢な行動につながったのだろうか。

 

 

老舗と新しさ

 TORAYA CAFÉ(トラヤカフェ)をバスタ新宿で見たときは目を丸くした。店には入らなかったが、まじまじと外から眺めたことを思い出す。

 虎屋17代目、黒川光博会長にBusiness Insiderがインタービューする。

 「あんペースト」を販売し始めたころを回想し、こう話しをされる。

実際に販売しようと決めた時は、「簡単にOKしてしまっていいのだろうか……」と逡巡しました。和菓子屋が菓子の材料をそのまま販売したわけです。父は「和菓子屋がそのようなことをやってはダメだ」と言っていましたから。(中略)

ただ、若い世代のお客様に和菓子に親しんでいただくことを考えたときに、今までどおりのやり方ではダメかもしれない、若い方に親しんでいただきやすい形にするべきではないか、と思い、「あんペースト」を販売することに決めました。 (出所:Business Insider)

  そして、この商品は虎屋の真髄である「あん」の魅力を若い世代に伝える一品になったという。

www.businessinsider.jp

 

確信と革新

 これまでの虎屋を「革新の連続」と評価する向きもあるという。しかし、黒川会長は、「私自身は「革新」と呼べるようなことは何もやっていないのです」と答え、「コアがきちんとあれば、新しいことやこれまでとは少し違うことをやったとしても、お客様には受け入れていただける。それを皆さんは「革新」とか「新しいこと」と言ってくださいます」という。

 

「和菓子屋は続いていくのだろうか」という不安をずっと持っていましたからね。和菓子の魅力を伝えるために、何かやらなければいけないという思いはあったのです。

そのような時に「あんペースト」を「よし、これだ!」と思えた。失敗、成功ということよりも、気持ちとして「やろう」という意志が固まった。そこが原動力になったと思います。 (出所:Business Insider)

 

 しかし、社内では、「あんペースト」発売前、「失敗したらどうするんだ」、「失敗して、虎屋の名前がマイナスになったらどうするんだ」など、社内では批判的な意見が多かったという。

「新しい挑戦にはやはり後ろ向きでした」と黒川会長はインタビューで答える。

 不思議なものである、同じ人であっても立場が変れば、態度も変わる。お客の立場の自分は新しさを求め、いざそれを作る立場に回ると、かんたんに否定したりする。

 やろうとの意志が勝ったとき、ことが成就し始めるということなのだろうか。

 

 

 wiredの少し古い記事にも同じようなケースが見つけることができる。

wired.jp

 

 年頭記者会見が始まるようだ。どういう話になるのだろうか。