鉄鋼、繰り返しリサイクルすることが可能で、リサイクルのチャンピオンという。しかし、その生産では多量の二酸化炭素を排出する。
鉄鉱石を鉄として利用するためには、鉄鉱石から酸素成分を除去する必要がある。そのために石炭を使い還元する。今利用されているこの方法では、1tの鉄を作るために、約2tのCO2を排出することになるそうだ。そして、その排出量は国全体の15%近くを占めるまでになっているという。
その負担を社会全体に求める日本製鉄のカーボンニュートラル
国内鉄鋼の雄、日本製鉄が2050年「カーボンニュートラル」を目指すと発表し、2030年 30%CO2総排出量を削減することを目標にしたという。
歓迎されるべきことであろう。鉄鋼はエネルギー産業に次いで多くのCO2を排出している。
早速、日本製鉄の資料を確認してみる。「⽇本の鉄鋼業が引き続き世界をリードし、⽇本の産業全般の競争⼒を維持・強化するために必須である、ゼロカーボン・スチールの実現に向けた超革新技術の他国に先駆けた開発・実機化に、経営の最重要課題として果敢に挑戦」とある。そして、そのコスト負担を社会全体に求め、グリーン電力とグリーン水素の提供を外部課題にあげる。
「社会全体でコスト負担するコンセンサスの形成」
「研究開発や既存設備の転換を伴う設備投資、大幅な製造コスト上昇等、ゼロカーボン実現に伴うコストを社会全体で負担するしくみの構築」 (出所:日本製鉄)
良いのやら悪いのやら。どうも日本製鉄の資料には反発したくなる。社会全体にコスト負担を求めるのであれば、まずは自ら身を切る改革を断行する必要があろう。第一義が、「世界一を狙う」ではなく、「社会のため」に置き換われば、必然中期計画の投資内容も変化し、期待効果が明確になりKPI化されるのではなかろうか。
国内雇用を守るために再生可能エネルギーを = 自工会
日本自動車工業会の豊田会長(トヨタ自動車)が11日に会見したという。
ロイターによれば、豊田会長は2050年の「カーボンニュートラル」の達成は「自動車業界単体では難しい。エネルギーのグリーン化が必要だ」と述べ、「自動車をど真ん中に置いてエネルギー政策を考えてほしい」と話したという。
原材料調達から廃棄までのライフサイクル全体でみると、日本で再エネ導入が進まなければ輸出向け国内生産は難しくなるとの見方も示した。 (出所:ロイター)
自工会も日本製鉄同様にグリーンエネルギーとグリーン水素の必要性を力説したようだ。
ただ、その目的に違いはあるようだ。自工会は国内雇用を守るためという。
もしかしたら、「脱原発」についても差があるのかもしれない。
「カーボンニュートラル」を口実に原発容認の声が漏れ始める。
それでいいのだろうか。震災から10年が経過して改めて「脱原発」を進める必要性を感じる。
震災からの学び
あの震災が発生し、サプライチェーンが寸断され多くの産業がその影響を受けた。
自動車産業も生産停止に追い込まれ、そして、その震災から学びも得たとロイターは指摘する。
豊田氏は、震災当時はサプライチェーンの問題把握に3週間が必要だったが、今は半日から1日で把握できると説明。当時は完成車メーカーが一次取引先を通じて二次・三次取引先に連絡していたが、今では直接「二次・三次(取引先)に依頼したり、部品メーカー同士でも助け合っている」という。 (出所:ロイター)
苦しい難局も、目的を一にする皆が手を携え協力し合えば、乗り越えていくことができるということなのだろうか。
豊田会長はそう述べた会見で、米アップルの自動車産業への参入についても言及し、「自動車産業に将来性があるということ。顧客にも選択肢が広がる」と歓迎の意を示したという。
ただ、車は生産した後も40年間は市場に存在するとし、「ユーザーのいろいろな変化に対応する覚悟」が必要との認識も示した。 (出所:ロイター)
自信の表れなのだろうか。それとも、いずれは協力し合う仲になるとでも考えているのだろうか。
鉄鋼業界も競い合いばかりでなく、こうした協力体制を築くことができれば、難題とする「カーボンニュートラル」達成の重荷を少し軽くできるのかもしれない。
鉄鋼ばかりでなく、「脱原発」も同じことが言えるのかもしれない。
「参考文書」