中国では、新疆ウイグル自治区での人権問題が発端となり、その影響がファッションブランドにも及び始めているという。
ロイターによれば、スウェーデンのファッション大手H&Mが新疆ウイグル自治区における強制労働に「深い懸念」を表明した昨年の声明が、中国国営メディアによって蒸し返されたという。
米ナイキや独アディダスなどがソーシャルメディアで標的となり、一部のネットユーザーはナイキの購入をやめ、中国国内ブランドを支援することを表明したという。そのほか、アディダスに対する中国撤退要求も出ているそうだ。
ネガティブキャンペーンが始まったのだろうか。
NIKEの対応
ナイキは「新疆ウイグル自治区(XUAR)における、あるいは同自治区に関連する強制労働の報道を懸念している」とwebページに声明を掲載したという。
ナイキはXUARから製品を調達しておらず、契約先サプライヤーからも、この地域の繊維もしくはスパン糸を使用していないとの確認を得た」としている。ただ、声明には日付が記されておらず、ナイキがいつ掲載したかは不明だ。 (出所:ロイター)
ナイキのWebページを確認してみると、ロイターが指摘した通り、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)が指摘したウイグルと関わりがあるといされた企業とは関係がないと表記している。
また、ASPIが指摘したテクァングループも、新疆ウイグル自治区から青島工場への新しい従業員の雇用を停止し、独立した第三者監査により、施設に新疆ウイグル自治区の従業員がいないことを確認したと説明する。
無印良品
ロイターは「Muji」無印良品の対応についても指摘する。それによれば、良品計画は環球時報に対し、「新疆綿」のユーザーだと説明したという。
中国のネットユーザーから「生存本能」があるとして賞賛を受けているという。(出所:ロイター)
昨年8月、HRN 国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」も、この問題を取り上げ、ASPIが指摘した関連が疑われた国内企業12社に対して、早急な対応をもとめる報告書を発表した。ただ、HRNは、「良品計画」については調査対象外とした。
その理由は、問題視された「新疆綿」が、国際労働機関(ILO)が定める、強制労働を含む労働条件の順守を条件とするオーガニック国際認証を取得したものであることによるという。
どの国際認証か定かではないが、良品計画のwebページにも、「オーガニックコットンを100%使用しています」との表記は確認できる。
国際認証とは、GOTSのことなのだろうか。GOTSの基準と認証は、SDGs︓17 の国連持続可能な開発⽬標それぞれの遵守を保証しますという。
GOTSのレポートを確認すると、2019年のGOTS認定施設の総数で上位10か国は、インド(2411)、バングラデシュ(1194)、トルコ(858)、ドイツ(565)、中国(448)、イタリア(444)、ポルトガル(301)、パキスタン(276)、⽶国(147)、英国(75)という。
GOTS(オーガニックテキスタイル世界基準)とは︓オーガニック繊維で作られた製品のためのテキスタイル製造・加⼯の国際基準。
認証の範囲は紡績、編み、織り、染⾊、縫製、その他加⼯の全ての範囲をカバーしている。
オーガニック原料(綿・ウール・シルクなど)を使⽤する事、環境的そして社会的責任への基準を持っている。
具体的には遺伝⼦組換え技術の禁⽌、アゾ染料など毒性の強い薬剤の使⽤禁⽌、児童労働の禁⽌、廃⽔処理⽅法の基準、社会規範のコンプライアンスなど。 (出所:GOTS)
ロイターによれば、良品計画はその後、声明を発表し、強制労働巡る報道を「深く憂慮」しているとし、新疆ウイグル自治区の工場への監査では大きな問題はみられなかったという。自治区の人権問題に関する欧州連合(EU)と米国の規制と法律へのコンプライアスを確実にすると表明したそうだ。
その無印良品は、「新疆綿」と表記しなくなった。
2021.4.15 追記
良品計画が、 いわゆる「新疆綿」について、「無印良品の綿とサプライチェーンについて」との声明を出した。
良品計画は事業活動において、各国・地域の法令や無印良品の思想を守り、人権の尊重や労働基準の管理に努めています。また、生産工程において法令や弊社の行動規範に対する違反が確認された場合には取引を停止する方針です。 (出所:良品計画)
一方、4月14日のテレビ東京WBSは「新疆綿」で問題を提起する。
先ほど無印良品の店舗で買ってきた、同じ半袖シャツなのですが、タグをよくみると、違いがあるんです。
一方には、「新疆綿」と書かれ、もう一方には、その記載が外されています。グローバルでビジネスを展開する衣料品ブランドに、いったい、何が起きているのでしょうか。 (出所:テレビ東京)
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情報が錯綜し、何が真実か定かでないような気もする。ただ、各社とも問題に真摯に向き合い、コンプライアンスの徹底を図るということであろうか。
たとい、その守るべきルールが国ごとに異なっていたとしても。
企業ごとで対応法が違いがあるようだが、それぞれに人権問題を憂慮していることには変わりはない。
目を国内に転じてみれば、ミスや配慮不足、不祥事、そんなニュースが増えていないだろうか。
行政では 国会に提出された法案のうち、20法案などにミスが判明しているという。
役所側にも事情があるようだ。内閣府職員は「コロナ対応のため職場の人数が少ない中で読み合わせをしなければいけなかった。リモートではやりにくい」と漏らす。(出所:JIJI.COM)
デジタル化で解決しそうなことだが、苦しい時でも前例主義に則り、人力で頑張ってしまうのだろうか。
マイナンバーカードを健康保険証として利用する先行運用が始まったが、患者情報が確認できないなどのトラブルが起こっているという。
原因は、健康保険組合などで誤入力によるものと見られているという。
新型コロナ接触確認アプリ「COCOA」で不具合があり、総務省では倫理規定が違反が起こり、LINEでは、個人情報の保護管理で配慮不足が露呈した。
ドコモ「ahamo」のオンライン手続きでも不具合が生じ、利用開始日までに修正が間に合わない可能性があるという。
ケアレスミスという単純なものではないのかもしれない。
なぜチェック機能が働かないのか、そういたミスが生まれる背景をきちんと把握できているのだろうか。
LINEでの問題で、LINEが発表した一連の対策は「応急処置」にすぎないと、ニュースイッチは指摘する。
ZHDが設置した、LINEにおけるデータの取り扱いを検証する特別委員会で座長を務める宍戸常寿東京大学大学院教授は「本当の病巣がどこにあり、どんな手術をしなければいけないかは、これからだ」と指摘。
今回の事案が発生した根本原因を追究する方針を示した。 (出所:ニュースイッチ)
その上で、「LINEの企業文化や体質まで踏み込んだ検証が求められる」とニュースイッチはいう。
こうした問題の根っこは同じところにあるのかもしれない。コンプライアンスという意識が欠けていないだろうか。それとも守るべき規則やルールがないということなのだろうか。