Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

【生物多様性と脱炭素】新たな地質時代「新人世」はもう始まったのだろうか

 

 「人新世」という言葉がある。この言葉を用いた時代を、正式な「地質時代」にするかどうかの議論が進んでいるという。

 現代は、「顕生代 新生代第四紀 完新世」と呼ばれ、人類の時代。

 朝日新聞によれば、「人新世」を新たな地質時代とするには、その始まりの痕跡が残る地点を特定する必要があり、世界11カ所で調査が始まっているそうだ。

www.asahi.com

 ただ調査は進むが、「人新世」が正式に認められるかどうかは、まだ見通せないという。国際地質科学連合内で4段階の承認を得る必要があるためだという。

「承認を得るのは容易ではなく、否認される可能性も大いにある。古い地質時代を専門にする委員が、最近の変化をどう見ているかは予測できない」 (出所:朝日新聞

 

 

地質時代とは

 138億年前にビッグバンで宇宙が誕生し、46億年前に太陽系に地球が誕生した。数十億年に渡る地球の過去を考察するとき、発掘された化石や地層などから区分され、これを地質時代と呼ぶ(参考:Wikipedia

地球の過去は、岩石や地層の中に封じ込められており、幾重にも亘る地層には、本の頁のように、地球の過去の事件やその時代の生物などが記録されている。

これらの地層は、含まれる岩石や化石の放射年代測定により年齢を推定することが出来る。こうして地層の頁を紐解き、岩石という原子時計を測り、含まれる化石を見出すことにより地球の過去を知ることが可能となる。 (出所:Wikipedia

 6億3500万年前、多細胞生物が出現した時代を、新原生代エディアカラ紀とよび、エディアカラ生物群が大量絶滅した。

 5億4100年前には、「カンブリア大爆発」といわれる急激な生物の多様化があったという。海洋が地球上のほぼ全てを覆い尽くし、動物門のほとんどすべてが出現したのがこの時代だそうだ。 

 

  地質時代の区分は発見される化石による。各時代はそれら生物の時代であり、その絶滅が時代を区分している。

地質時代」は生物の繁栄と絶滅の記録であると、Wikipediaは説明する。 

「人新世」

 533万3000年前に、ヒマラヤ山脈が上昇し、寒冷化、氷床が発達した。ヒトの祖先が誕生したこの時代を「新生代第三紀 鮮新世」とよぶ。

 258万年前からは人類の時代となり、「第四紀 更新世」末に、大型哺乳類の大規模な絶滅があったという。1万1700年前からは「第四紀 完新世」と呼ばれ、現代にいたる。この間、氷期間氷期を繰り返していたという。

 この時代の後に続くのが「人新世」。「じんしんせい」や「ひとしんせい」と呼ぶ。

 Wikipediaによれば、「人新世」の開始年代について様々な提案されており、12,000-15,000年前の農耕革命を始まりとするものから、1960年代に相次いで行われた大気中核実験や、安価な原油を利用した工業化による大量生産/大量消費の地球規模の大衆化による人工物質の増大,化学肥料・農薬・品種改良等による食糧生産の増大や抗菌薬(抗生物質)等による感染症の予防などによる平均余命や人口の増加が顕著となる1950年代が区切り目ではとの意見があるという。 

f:id:dsupplying:20210607091014j:plain

 そして、過去の時代の移り変わりと同じように、今も種の絶滅が進行しているという。

 人類の活動が種の絶滅速度を加速させ、たとえば、地球の全光合成生物資源の約半分を占める海洋植物プランクトン、小さな藻類種は、過去1世紀に世界の海洋で大幅に減少しているそうだ。

 1950年からでも、藻類の生物量は約40%減少し、海洋温暖化の影響に対応しているようだとWikipediaは指摘する。そして、この減少は近年ペースが速まっているという。世界的な絶滅速度の増加は、少なくとも1500年以降は通常ペースを上回って上昇しており、19世紀およびそれ以降に加速しているようであるという。人類の影響がなければこの惑星(地球)の生物多様性は、指数関数的に成長し続けたであろう、と一部の学識者は仮説を立てているそうだ。

 その一方で、種の均一化が進んでいるのかもしれない。森は植林され、家畜が育てられ、田畑では毎年同じ作物が繰り返し作られている。

 こうした人間活動も地層に痕跡を残すことになるのだろうか。埋立地のごみも地層の一部になり、この時代の記録となるのだろうか。

 

 

 他方、この危機的な状況を憂い、「脱炭素」や「脱プラ」、「ゼロ・ウェイスト」の活動が始まり、様々なリサイクルが進められ循環型社会への移行が進められる。地球温暖化対策が本格的に始まったといってもいいのではなかろうか。

 特に、脱炭素に悪影響を及ぼすとみなされる産業では、その動きが顕著になっているようだ。産業界のCO2排出量の50%を占める鉄鋼は、今さらながら「鉄はリサイクルのチャンピオン」を証明するかのように、リサイクルを強化し始めているようだ。CO2を多量に発生する高炉での生産を電炉に切り替えようと、鉄スクラップの確保に躍起になり始める。

www.nikkei.com

 紙はリサイクルに適しているといわれるが、その製造工程では多量の二酸化炭素を排出する。作られる紙の乾燥のためには膨大な熱を必要とし、製紙業界における燃料の非化石化は急務だ。

 こうした活動が進んでいけば、遠くない未来、地球環境が良化し、生物多様性に変化していくのだろうか。

 仮にそうであれば、「人新世」という定義も不必要になるのかもしれない。過去の歴史を振り返れば、時代変遷は何百万年という単位で起こっている。人為的にその変遷スピードを早めることもなかろう。

 

 

 ただ、温暖化のスピードは顕在化しているようだ。北極では3倍のスピードで温暖化が進み、海氷が定説よりも70~100%速いペースで薄くなっているという。

www.jiji.com

 世界の湖では、温暖化の影響で酸素濃度が下がり、生物の減少や水質の悪化が進む恐れがあるという。

 読売新聞によれば、茨城県霞ヶ浦では、深層での酸素濃度が低下していたという。また、琵琶湖でも2018~19年度の冬、表層と深層の水の循環が止まる現象が観測され、深層の酸素濃度の低下が確認されていたという。

www.yomiuri.co.jp

 温暖化の影響が忍び寄っているのだろう。その温暖化の起点は18世紀に始まった産業革命だ。それとは異なる変革が今求められているのだろう。もしかして、それによって絶滅する産業があるのかもしれない。

 その一方で、かつての「カンブリア爆発」のように、あらたな産業を多く生み出し、社会構造を変え、「脱炭素」や「脱プラ」、「ゼロ・ウェイスト」を実現していかなければならないのだろう。それも生物の多様性が失われる前に、確実に、そして、迅速に、ということでもあろう。