まだ梅雨入り前だというのに、関東地方では真夏日が続きそうだ。この季節になると天気予報を聞いては一喜一憂する。暑い夏と聞くと未来を憂いたりする。
気候変動のことをあまり気にかけたくないのが本音だが、そういう訳にもいかないのだろう。
「環境白書」が公表になった。「脱炭素社会への移行」、「循環経済への移行」、「分散型社会への移行」という3つの移行に向け、その上で地方においては地域循環共生圏の考え方に基づいた新たな地域づくり、また私たち国民においては一人一人がライフスタイル・生活様式を変革する社会にリデザイン(再設計)していくことが重要、と環境白書は指摘する。
私たち自身が、大量生産・大量消費・大量廃棄のライフスタイルを変えることが必要です。私たちが変わることにより、気候変動を始めとする環境や社会、経済の問題を緩和ないし解決に導き、持続可能なより良い未来の選択につながるのではないでしょうか。 (出所:環境白書)
白書は、昨年2020年は、気候変動問題に加え、新型コロナウイルス感染症という新たな危機が出現したことを指摘し、これらが相互に深く関連し、生物多様性の保全や自然との共生がこの危機を乗り越えるためには不可欠とし、環境、経済、社会を統合的に向上する社会変革、経済社会をリデザイン(再設計)していくことが重要という。
ポストコロナ時代のワーク・ライフスタイルの在り方として、ライフスタイルの更なる変革を、「住まい」と「食」、「ファッション」、そして、「移動」に求める。
生活様式のリデザイン ~ファッション
毎日の暮らしに欠かせない衣服は、暮らしに彩りを与え、質の高い生活を送る上でもとても大切なものですと環境白書はいう。そして、「大量生産・大量消費・大量廃棄」から脱却し、「適量生産・適量購入・循環利用」に転換することが望まれると指摘する。
環境白書によれば、世界の衣料品によるCO2排出量のうち、国内に供給される衣料品によるCO2の排出割合は4.5%と推計されるという。また、国内で供給される衣料品によるCO2排出量は9,500万トンと推計されるそうだ。
オールバーズによる商品へのカーボンフットプリントの表示を「環境に配慮された素材で作られた服を選ぶ」という事例に紹介する。
生活様式のリデザイン ~食
「食」の生産から加工、廃棄に至るまでのライフサイクルにおいて、CO2や廃水の排出、化学農薬や化学肥料の使用、農地への転用に伴う森林開発、食品廃棄物といった環境負荷が生じる可能性があるため、食における環境負荷を意識することが重要という。
世界の食料システムにおける温室効果ガス排出量は、人為起源の排出量の21~37%を占めると推定され、「食」と「気候変動問題」が密接に関係し、平均的な日本人の食事に伴う1人当たりのカーボンフットプリントは年間1,400kgCO2e(温室効果ガスの種類別排出量合計を地球温暖化係数に基づいてCO2 量に換算した排出量)と試算されるという。
中でも、肉類、穀類、乳製品の順でカーボンフットプリントが高く、特に、肉類は少ない消費量に対して、全体の約1/4を占めるほどの高い温室効果ガス排出原単位で、穀類のうち、米は水田からのCH4発生等もあり、他の作物と比較して高い排出原単位になっているそうだ。日本は米を多く消費するため、カーボンフットプリントが高い傾向にあると白書は指摘する。
私たちの日常生活の一部である食において、何を食べるのかという選択、そして、食べた後の配慮の積み重ねが大切であると説く。
「代替肉」に言及し、見た目や食感も肉に近い代替食材が開発されるようになり、食の一つの選択肢として、より身近な存在になることが期待されるという。
また、 古来、一部の和食料理には、魚や肉の代わりの食材として、大豆や小麦粉を使った食材を使ってきたことも指摘する。精進料理の「がんもどき(雁擬き)」などがその例だろうか。元々、肉の代用品として作られたもので、名前の由来は、雁の肉に味を似せて作ったからといわれる。
この他にも「ジビエ」について言及、有害鳥獣駆除で捕獲されたニホンジカやイノシシ等は、その多くが未活用の状況と指摘、これらをジビエとして有効活用することで、農山村の所得向上や有害鳥獣の捕獲意欲が向上し、農作物被害や生活環境被害の軽減につながることが期待できるという。
新たな食文化の創造として、外食や小売等を始め、農泊や観光、学校給食での提供、さらにはペットフードなど様々な分野での利用が進むことで、なじみの薄い有害鳥獣をジビエという付加価値に変えていくことが期待されており、また、ジビエは低カロリーかつ高栄養価の食材としても注目されています。 (出所:環境白書)
そういえば、最近ではペットフードにも「培養肉」を利用しようとの動きもあると聞く。
1.5℃ シナリオ
白書は、将来の平均気温上昇が1.5℃を大きく超えないようにするためには、2050年前後には世界のCO2排出量が正味ゼロとなっていること、これを達成するには、エネルギー、土地、都市、インフラ(交通と建物を含む。)及び産業システムにおける、急速かつ広範囲に及ぶ移行(transitions)が必要であるという。
2050年 カーボンニュートラル
日本も、2050年のカーボンニュートラル達成を公表し、それに整合し、野心的な目標として、2030年度の温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指すことにした。さらに、50%の高みに向け、挑戦を続けるともした。
この宣言のあとでの「環境白書」。
温室効果ガス削減のため、一人ひとりが生活様式、ライフスタイルを変えるよう、呼びかけているようだ。