Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

【SDGs社会の矛盾】続く不祥事、マッチングサイトの憂鬱

 

 ベビーシッターのマッチングサイト「キッズライン」に登録しているシッターが利用者宅で窃盗事件を起こしていたといいます。

 キッズラインの登録シッターの事件が絶えません。昨年、利用者への強制わいせつなどの疑いで相次いで逮捕された事件がありました。そればかりでなく、今年1月には法律で義務づけられている都道府県への届け出をしていないシッターがいるなどの問題を内閣府から指摘されていたともいいます。

www.asahi.com

 ここ最近、こうしたマッチングサイト絡みの問題がたびたびニュースになっているようです。

 利用者にとってはありがたいサービスかもしれませんが、不正の温床になりかねず、ビジネスモデル自体への危惧も指摘され始めているようです。

 

 

 「キッズライン」のようなマッチングプラットフォームは、あくまでユーザーとサービス提供者をマッチングする場とBusiness Insiderはいい、その問題を指摘します。

プラットフォーム運営会社がサービスに対する責任を直接は取らない

運営会社による、サービス提供者への審査や教育は直接契約や雇用に比べれば簡易で、ゆえに運営会社側のコストを抑えることができ、利益を上げられるモデルだ。 (出所:Business Insider)

www.businessinsider.jp

「問題を防止する努力は審査や教育にコストをかけることで実現するはずだが、マッチング型は審査や教育を簡略化することで手数料の大半を自社の利益にすることができる構造になっている」と説明します。

 また、そもそも保育の領域で、利益と質の担保を両立しえるのかと疑問も呈しています。

 

 

 「関係者が悪いことをしない前提で設計されているビジネスモデル」というのは、ITmediaビジネスオンライン。同じマッチングサイトであるウーバーイーツを事例に、こうした問題は「性善説の想定外」や「欠陥」といったワードが用いられ語られるといいます。

www.itmedia.co.jp

 従来なかったサービスが、ギグワーカーという新しい働き方を生み出しました。

 その「正」の面からすると、それは働き手にも利用者にも、双方にとって、便利で理想なものだったのかもしれません。

 しかし、時間が経つと直ぐにそれを悪用しようする人が現れます。それにしても多いような気がします。「想定外」というのも、それはそれで理解はできます。

 今まで人を抑制していた箍がなくなったことで、「不善」が顕在化するようになったのでしょうか。 

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性善説が示すのは、「人は生まれつきは善であるが、その後の人生で悪行を学ぶ」というものであり、性悪説が示すのは、「人は生まれつきは悪であるが、その後の人生で善行を学ぶ」というものだ。そうすると、性善説であっても性悪説であっても悪は生じ得るのだ。 (出所:ITmediaオンライン)

 と記事は指摘しますが、違和感をおぼえます。

性善説」も「性悪説」も前提は異なるにせよ、そのオチ、言わんとすることは同じで、「学習」の必要性を説いているにすぎません。

性善説」は、人間の本性として「善」(四端)を、努力して伸ばさない限り人間は禽獣(きんじゅう)同然だとします。

 一方、「性悪説」は人間の本性を「欲望的存在」として、学問など「偽」(人為の意)を後天的に身に付けることによって公共善に向うとします。

 両者も「人間の持つ可能性への信頼」が根底にあります(参考:Wikipedia)。

両者の違いは、孟子性善説)が人間の主体的な努力によって社会全体まで統治できるという楽観的な人間中心主義に終始したのに対して、荀子性悪説)は君主がまず社会に制度を制定して型を作らなければ人間はよくならないという社会システム重視の考えに立ったところにある。 (出所:Wikipedia

  この思想をもとに、プラットフォームビジネスを考えれば、学習なきシステムでは「私欲」が跋扈(ばっこ)してもおかしくないということなのかもしれません。

 荀子が指摘するように、システム的な工夫で私欲を抑えることが求められているのでしょう。

 

 記事は、出前館の事例を示し、雇用契約に基づくアルバイトや正社員が中心で、本人確認や教育を行き届かせようとする例もあると指摘します。しかし、その出前館は赤字で苦しむといいます。

 社会はSDGsとESGを目指し、公益と利益の両立を求めています。マッチングサイトはその流れに抗っているようにも見えす。

 システム利用者の便益が確保してはじめて、サービス事業は利益をあげられるはずです。利用者保護が優先されず、利益をあげるようであれば、それこそサービス事業の「不善」になりはしないだろうと危惧します。

 過ぎたるは猶及ばざるが如し、中庸の精神が求められているのでしょう。それはSDGsの概念に近いのものかもしれません。 

 テクノロジーはこの問題を解決できるのでしょうか。「性悪説」の荀子が指摘するようにシステムに私欲を抑制する仕掛けを設けることが求められているのかもしれません。

 

jp.reuters.com

 G20の労働相会合は共同声明で、ギグワーカーが雇用形態の分類上、「正規従業員と同等の保護と権利」が受けられないような状況を避けるとロイターが報じました。

 

 こうした声明を聞くと、マッチングサイトが搾取の温床のように聞こえます。「ギグワーカー」の保護に向けて規制を強化することで合意されています。その前に、SDGsの精神に従い、改善されていくことを期待します。