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【ESG投資】上手にアピールする企業に潜むウォッシング行為

 

 先日、GPIF年金積立金管理運用独立行政法人が2020年度の運用収益を発表しました。

 その成績はプラス25.15%の37兆7986億円と、市場運用を開始した01年度以降で最高となったといいます。

www.bloomberg.co.jp

 ブルームバーグによると、GPIFの宮園雅敬理事長は会見で、「リスクを低水準に抑えながら超過収益を安定的に出していけるというポートフォリオの構築に一歩進んだのではないか」と説明したそうです。

 このうち、ESG(環境・社会・ガバナンス)指数に連動した株式運用は10.6兆円と、前年度の5.7兆円から増加しているそうです。

 

 

ESG投資とは、環境(Environmental)と社会(Social)、健全な企業運営(Governance)に配慮した企業への投資を促します。

 VOGUEはファッションを事例に、「環境や社会に対する企業活動の影響について注目されるようになった背景には、ファストファッションの製造過程やサプライチェーンに厳しい目が向けられるようになったことが大きい」といいます。そして、この身近な例のおかげで、一気に認知が高まったと指摘します。

www.vogue.co.jp

人々が仕事に金銭的報酬に加えてやりがいを求める傾向が強まっていることも大きな要因だ

「投資家と社員の双方が、利益を上げるだけではなく社会に貢献できるような目的意識を持った企業活動を望むようになっている」という。「働く側もただ給料をもらうだけではなく、自分の仕事に目的意識を見出したい。ESGの要素をビジネスモデルに取り入れることは、そのためのよい方法です」。 (出所:VOGUE)

 

 

 環境ばかりでなく、Social 社会にも注意が向くようになってきたのでしょうか。

 関連の管理職ポストには、女性や若手を積極的に登用する事例が目立ち、年配男性が担ってきた日本の伝統的な企業経営に変化の風が吹き始めた。 (出所:ブルームバーグ

 サステナビリティ「持続可能性」に特化した部署や役職を新設する企業が増えているとブルームバーグはいいます。

www.bloomberg.co.jp

 記事は、リクルートアデコなど総合人材サービス企業における取り組みを紹介します。

リクルートホールディングスの瀬名波文野氏(38)は女性取締役に抜てきされた一人だ。3年前に執行役員に加わり、同社が5月に発表したサステナビリティー方針の内容策定にも深く携わった。同社方針では、2030年度までにグループ全体における上級管理職・管理職・従業員それぞれにおける女性比率を約50%にすることを目指すと明記した。 (出所:ブルームバーグ

 これはこれで間違いなく善い流れなのでしょう。

 世界経済フォーラムが3月に発表した最新の「ジェンダー・ギャップ指数」では、日本は120位にとどまり、男女平等の観点では大きな後れを取っているとブルームバーグは指摘します。

 しかし、全国の自治体で働く「非正規公務員」の人たちは、年収が200万円未満であったり、またそうした現実から「給与額が低い」「将来が不安」などと待遇改善を求めているといいます。

 

 米国務省が先日発表した世界各国の人身売買に関する報告書では、日本の外国人技能実習制度が問題視され、多くの実習生が劣悪な環境でも働き続けるしかない状況に追い込まれていることが指摘されています。

 少しばかり矛盾を感じます。ジェンダー平等は極めて重要なことです。それは喫緊に改善すべきです。しかし、それだけでは、自社を善く見せることだけに終始していないかと思えてしまいます。

 自らが提供する人材サービスによって、もし誰かが「不都合」を感じることがあるのであれば、それによって成り立つ企業がSDGsやESGで高評価を得ていては、全然「サスティナビリティ」じゃないじゃんって感じてしまいます。

 搾取のようなビジネスのままでよいのか、そういことに自ら鋭く切り込み、サービスを利用するみなが「しあわせ」を感じるようにして、はじめて「サスティナビリティ」が成立するのではないでしょうか。

business.nikkei.com

合法的なら何をやってもいいのが従来の資本主義だが、そんな企業倫理に消費者は厳しい目を向けるようになった。さらに、環境や社会に負担をかけ続けて問題が生じれば、ビジネスの根幹にも支障が出る恐れがある」。

環境破壊や労働者の搾取によって、厳しい規制が発生する事態になれば、企業の減益にもつながりかねない。 (出所:VOGUE)

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「社会的課題の解決を前提とし、そのビジネスモデルによって業績が最大化されるという資本主義の新しい形を定義しない限り、持続可能な開発は実現しない」。アデコの小杉山氏がそう語ったとブルームバーグはいいます。

 綺麗なことばで済ましてはならないはずです。社会課題を解決したつもりが、新たな社会課題を生んでいるようでは、持続可能にはなり得ません。

ESG投資の内実は多岐にわたるのに、企業がそのラベルをはり出すだけで、社会や環境に十分な貢献をしているという免罪符として扱われる危険性がある

とVOGUEは指摘しています。

 こうした事例がウォッシングということのような気がします。