Up Cycle Circular’s diary

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【脱炭素とバイオエコノミー】経産省が示す「第5次産業革命」はバイオテクノロジー

 

バイオマス由来のブタジエンゴムで自動車用タイヤを試作したと、横浜ゴムが発表しました。

 試作したタイヤは石油由来のゴムを全てバイオエタノール由来のブタジエンゴムと天然ゴムに変更したそうです。石油への依存度低減によるCO2削減と持続可能な原料調達が促進されるといいます。

www.y-yokohama.com

タイヤは車の中で唯一路面と接する部分であり、安全性にも重要な役割を担っています。中でもタイヤが路面と接触するキャップトレッドは路面からの衝撃や外傷からタイヤ内部を守るだけでなく、グリップや摩耗の抑制といったタイヤの性能にも大きく寄与し、ブタジエンゴムは摩耗の抑制に貢献します。またサイドウォールは走行時に最も変形が大きな部分のため、柔軟で変形に追随しやすいブタジエンゴムが使用されています。 (出所:横浜ゴム

 

 石油由来の合成ゴムは天然ゴムより扱い易い素材ということだったのでしょうか。

「天然ゴム」は、ヘベア樹と呼ばれる植物から得られるゴムのことをいいます。若木を育て通常5年くらい経過しないとゴムは採取することができません。その上、25年前後経過すると、切り倒す運命にあるといいます。

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 IBMのCEOだったルイス・ガースナー氏が電子産業の次は、ゲノム編集をはじめとしたバイオテクノロジーの時代がやって来ると予測していました。その時は、何のことやら、ピンときていませんでした。

 医療分野における利用を想定しての発言だったようですが、今、脱炭素の時代が到来して、ここでもバイオテクノロジーに注目が集まっているようです。

 

 Business Insiderによれば、2030年には、バイオテクノロジーを活用する市場規模が、少なく見積もってもOECD加盟国の国内総生産GDP)の2.7%となる約200兆円にまで拡大する見込みだといいます。  

www.businessinsider.jp

ゲノム配列を解読する技術が進歩した今日でも、人類が理解し産業活用できている遺伝子の数はごくわずかです。

この先、ゲノムに関する理解が進めば進むほど、まるでパソコンにインストールするアプリケーションの数が増えていくように、DNAに組み込める機能が増えていくといえるのです。(出所:Business Insider)

 植物や微生物が持つ潜在力をゲノム編集でさらに強化するということなのでしょうか。

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(資料:経済産業省「バイオテクノロジーが拓く『第五次産業革命』

 バイオテクノロジーの具体例を経済産業省は「バイオテクノロジーが拓く『第五次産業革命』という報告書の中で、新型コロナワクチンを事例にして説明しています。

メッセンジャーRNA(mRNA)技術を活用したワクチンは、新型コロナウイルスのゲノム配列さえ分かればワクチンの設計・製造が可能であり、従来のワクチン開発で一般的であった、危険性の高いウイルスそのものの扱いは必要がない。また今回、mRNA ワクチンを開発してから実用化に至るまでの期間がわずか1年程度であったことは、例えば、麻疹ワクチンが開発から実用化に9年、ポリオワクチンでは 20 年の歳月を要したことを考えると、新型ワクチンに用いられている合成生物的手法がいかに革新的なものであるかが分かる。しかも、こうして開発された新型のmRNA ワクチンの有効性は 90%強とされ、従来の方法で製造されたインフルエンザワクチンの 40~60%を大きく上回っている。

(出所:経済産業省「バイオテクノロジーが拓く『第五次産業革命』

 

 また、「バイオテクノロジーによって、再生に長い年月を要する化石燃料由来の製品を、化石燃料よりも遙かにライフサイクルの短い植物を原料にして代替・製造することが可能である」とも説明します。

 そして、「バイオテクノロジーは、2050 年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に大いに貢献する革新的なテクノロジーである」といいます。

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(資料:経済産業省「バイオテクノロジーが拓く『第五次産業革命』」)

社会実装に向けて各種課題を解決しながら、原料にもプロセスにも石油資源を多く
使うものづくりからバイオによるものづくりへ転換すると、そこには多くの価値が生
まれることになる。バイオだからこそ作れるモノの価値、そして便利さと引き換えに蓄積される地球環境への負の影響を取り戻す価値である。(資料:経済産業省「バイオテクノロジーが拓く『第五次産業革命』

 脱炭素、それを支えるキーテクノロジーのひとつはバイオということなのでしょう。