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【曲がり角のESG投資】期待外れの成績、グリーンウォッシュ疑惑、明らかになる問題点

 

 熱狂、ESG投資が空前のブームといわれたのはついこの間のこと。過熱し過ぎると、やはり水を差し、その熱を冷まそうとするのが自然な成り行きなのでしょうか。

 GPIF年金積立金管理運用独立行政法人の選定した7つのESG指数のうち6指数が、ベースとなる親指数や市場平均を下回ったといいます。

 ブルームバーグによれば、17年度からの4年間でみると、7指数中6指数で最大0.87ポイントの超過収益を得られていたが、20年度のESG指数の収益率は、親指数を最大5.94ポイント下回ったそうです。

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コロナ禍の株価急落局面で強さを発揮したESG指数は、20年度のリバウンド局面で「やや出遅れ」と評価。

要因を「ESG評価の高い企業は総じて急落リスクが小さい一方、バリュー株(割安株)などが買われる局面では相対的に上昇幅が小さい」と分析した。 (出所:ブルームバーグ

 

 ESGの先進地ヨーロッパでは銀行の資産運用部門での「グリーンウォッシング」疑惑が浮上しているといいます。

 その舞台は、ドイツ銀行の資産運用部門DWSグループ。「グリーンウォッシング」疑惑で、ドイツ連邦金融監督庁などが調査を進めているといいます。

 ブルームバーグによれば、ドイツの金融監督庁が、DWSの元サステナビリティー責任者、デジレー・フィクスラー氏が数週間前に「DWSが一部の投資商品についてサステナブル投資基準を誇張していた」と明らかにしたことがきっかけだといいます。

 金融監督庁の報道担当者は、「内部告発者が提供する情報を調査するのは一般的」といっているそうです。

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 単なる内紛なのか、それとも本当に「グリーンウォッシュ」まがいの行為があったのか、その事実の確認は調査を待つことになるのでしょう。

「DWSに問題があったかどうかは現時点では不明だが、こうした当局の調査も増えていくとみられる」と日本経済新聞は指摘します。

「規制強化が進むとともに、今後、運用会社がESGの看板を外したり、運用手法を見直したりする動きが広がる可能性が高い」といい、「ESG投資は淘汰の局面に差し掛かった」といいます。少し先走りし過ぎてはいないでしょうか。

 

 一方で世界2位の経済大国中国。サステナビリティー・リンク・ローン(SLL)の活用で他のアジア勢に後れを取っているとブルームバーグが指摘します。

SLLの借り手企業は自社の環境目標を達成できなければ、貸し手に上乗せ金利を支払う。こうした仕組みが借り手に環境対策の徹底を促すことになる。

中国を除くアジア太平洋地域ではSLL契約が過去最高ペースで増加しているが、中国ではほとんど実施されていない。 (出所:ブルームバーグ

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「たった1件の取引のために高水準のESG目標を定めるインセンティブが、借り手にとって十分でない可能性がある」と、その理由をブルームバーグが解説します。

SLL契約に盛り込まれる環境目標が未達に終わることで、環境問題を巡る自社の評判を落とすリスクを取りたくないと中国企業が考えている可能性もある。 (出所:ブルームバーグ

 中国では、SLLより利用が増えているのは、環境プロジェクトに調達資金を充てるグリーンファイナンスといいます。その中国がアジアで最大のグリーンボンド環境債の発行体になっているそうですが、ドイツはこれを上回るといいます。

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 ESGもまだまだ初期段階の混乱期ということなのでしょうか。何事も一直線に良い方向に向かうことはないはずです。ただそれでも、多くの人たちがESGを意識せざるを得なくなっているということは間違いようです。

「グリーンウォッシュ」、その判断の難しさもあるのではないでしょうか。もちろん虚偽は許されることはないのでしょう。

 当面の目標は、パリ協定の1.5℃目標の達成とSDGsが掲げる持続可能な社会の実現のはずです。最短距離を走っていければ、それはそれでよいのでしょうけれども、遠回りする道も許されていいように思います。たどる方策は多層であった方が実現を確実にするのではないでしょうか。

 果たして誰がその善し悪しを正しく判断できるのでしょうか。単に咎めるだけでは目標から遠退くことになりかねないような気もします。