Up Cycle Circular’s diary

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【移行金融と脱炭素】国が作る産業別工程表は二酸化炭素の排出削減目標の根拠に資するのか

 

 国内企業の多くもカーボンニュートラルを宣言するようになり、脱炭素社会に向けて、順調か思えば、必ずしもそうではないようである。

 企業の自主性に任せたところで国際公約となるNDC(未提出)、温室効果ガスの削減目標が勝手に達成される保証はない。一方、国の関与が強まれば、計画経済になりかねない。しかし、NDC(国が決定する貢献)の科学的根拠が乏しければ、実現可能性が疑われ、国際社会からも批判を受けかねない。

 企業側にも憂慮があるようだ。

カーボンニュートラルに至るハードルの高さが改めて認識されるようになった」。

30年や50年という年限付きの目標設定への反発や、国の事情によって違うやり方を許容すべきだとの意見も大きくなっている。

とりわけ、製造業では政策や規制が特定技術の禁止に結びつくことへの懸念が高まっている。(出所:日本経済新聞

 ガソリン車の販売禁止がその典型と、日本経済新聞は指摘する。

 

 

 二酸化炭素の排出量が多い産業が特定され、そうした産業は国の監視下にあるようなものだ。

 鉄鋼、化学、電力、ガス、石油、セメント、製紙・パルプ、そうした産業が対象に上がり、自動車もそれに加えてもいいのかもしれない。

「今の延長線上に未来はない」、「製造業は時代遅れだ」

 こうした意見への反発もあるという。さらに、多くの製造業が恐れているのは、足元で温暖化ガス排出削減を進めようとしても「多排出産業」だとの理由で投資家や金融機関が資金調達に応じてくれないということもあるそうだ。

 ESG投資が活発化すれば、こうした事態になることもうなづける。ありがたいことに国が問題ある企業を特定しているようなものなのだから。

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 国は「トランジションファイナンス」を重視し、これを促進するため、投資家や金融機関が、多排出産業への融資を検討する際に参照できるロードマップをつくることを決めたという。最終的にカーボンニュートラルに到達するまでのプロセスを可視化しようという試みと日本経済新聞は説明する。

「移行金融」、まず鉄鋼で行程表 脱炭素へ設備支援: 日本経済新聞

 まず、鉄鋼が対象となったようだ。

そこでは①世界的な将来動向、国内生産量やマテリアルフロー②日本の鉄鋼業の強み、既存の製鉄プロセスの概要③二酸化炭素(CO2)排出量、プロセス別排出源単位④カーボンニュートラル実現に向けた中長期的な技術オプションの内容⑤カーボンニュートラルのために国内で必要になると想定される技術開発――について50年までの時間軸にマッピングしたチャートなどを掲載、詳述している。 (出所:日本経済新聞

「トランジションファイナンス」に関する鉄鋼分野におけるロードマップ(案)(経済産業省)

 こうしたロードマップが出来上がることで、2050年への道筋が明確になり、目標達成への説得力が増す。海外から「日本は脱炭素社会の実現に後ろ向きだ」と見られがちな印象の払拭に役立つかもしれないと日本経済新聞はいう。

 ただ、こうした数値が盛り込まれることで、鉄鋼業界にとっては自由な事業活動が制約されるという懸念があるという。

 

 

 二酸化炭素の排出量が多い産業での、CO2削減に資する技術開発が活発化しているのだろうか。

 日本製鉄が、常圧のCO2からポリウレタン原料を直接合成することに世界で初めて成功したという。

日本製鉄、常圧CO2からポリウレタン原料: 日本経済新聞

 脱炭素が鉄鋼業に重くのしかかる中、製鉄所でのCO2排出削減に寄与する技術として、注目が集まっていると日本経済新聞はいう。

 日本製紙が、セルロースナノファイバー強化樹脂の実証生産を本格化しているという。

CNF強化樹脂の実証生産を本格化|ニュースリリース|日本製紙グループ

 様々な課題はあるのだろうけれども、そろそろ温室効果ガス削減目標の根拠を明確にする必要があるのだろう。