Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

【SDGsの真贋】新幹線再生アルミ、パーム油、外国人技能実習制度

 

  新幹線をリサイクルする。ちょっと大げさな話かもしれないが、JR東海が、環境負荷低減のため、東海道新幹線の車両に使用していたアルミをリサイクルしている。

 その「新幹線再生アルミ」を英国生まれの自然派化粧品ブランド「ザボディショップ」に提供しているそうだ。

新幹線再生アルミ

 新幹線車両に使われていたアルミから付着物を取り除き、高純度のアルミ合金のみを抽出する手法をJR東海が開発し、新幹線車両に使用されていた強度の高いアルミの再生素材のため、装飾だけでなく、建築材料や精密機械にも使用することができるそうだ。

 

 

 JR東海によれば、新幹線再生アルミは、アルミを新製する場合に比べて、製造時に必要なエネルギーを抑えられるため、CO2排出量を97%削減し、環境への負荷を軽減することができるという。

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(資料:JR東海

新幹線再生アルミに吹き込まれる新たな命

「ザボディショップ」によれば、名古屋のタカシマヤ ゲートタワーモールに今年4月にオープンした「アクティビストワークショップ」の店舗で、レジカウンターやウィンドーフレームなどの一部什器に、引退した東海道新幹線の車両の再生アルミが使われているそうだ。

 東武百貨店 池袋本店に2021 年9 月16 日、この新しい「アクティビストワークショップ」がオープン、今後もリニューアル予定の店舗で展開していくという。

役割を終えた素材に新しい命を吹き込むことで、よりサステナブルな店舗内装の開発が叶う」と、ザボディショップはいう。

 また、店内什器だけでなく、スパチュラ(定価:350円税込)にも新幹線再生アルミを採用したという。この再生アルミ スパチュラも9 月16 日から販売開始になったそうだ。

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(写真:ザボディショップ

「ザボディショップ」エシカル消費を体現する店舗の出店加速 詰め替えサービスなど提供

 FASHIONSNAP.COMによれば、ザボディショップの「アクティビストワークショップ」では、この他にも、プラスチック削減のための詰め替えサービス「リフィルステーション」も併設、専用のアルミボトル(300g)とポンプを購入し(中身とのセット価格2255円)、中身を充填してボトルを再利用することができるという。

 

 

 サステナブルSDGsのニーズの高まりで、こうしたサービスが拡充されてきたのだろうか。一方、SDGsの根幹をなす人権問題は、改善されているのだろうか。

花王のトレーサビリティ

 花王は、「調達に関わるサプライチェーンESG推進ガイドライン」を策定、公開し、取引先と共に、サプライチェーン全体のトレーサビリティ確保や、資源保護・環境保全や安全、人権などの社会的課題の解決に貢献していくという。

花王 | 「調達に関わるサプライチェーンESG推進ガイドライン」を策定 取引先に対し、第三者監査を実施

 その一環として、取引先への第三者監査等を実施、サプライチェーンが抱える社会課題上のリスクの特定していくという。

 人権問題というと、パーム油のような海外での問題に思われがちだ。実際、花王もアブラヤシ農園を調べてシステム上で管理するという。

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(出典:花王 花王が調達するサプライチェーン上で人権・環境リスクが想定されるエリア)

 しかし、国内にも人権問題が存在しているのではなかろうか。外国人技能実習制度が問題視され、度々ニュースとなって報道される。

外国人技能実習制度

 リサイクルポリエステルなどを手がける繊維商社「帝人フロンティア」は、実習生失踪の原因のひとつともいわれる送り出し機関による高額な手数料や保証金等を負担するようにしているという。

多額の借金抱えて、来日…。外国人技能実習生の人権を守るため、日本企業がはじめた取り組み | ハフポスト

「そもそも手数料はリクルートにかかるフィー(費用)であり、日本では求人する側が負担している。実習先が払うべきだ」と判断。

借金が失踪などのトラブルにつながる可能性もあることから、2020年から同社側で手数料を負担するようにしたといいます。 (出所:ハフポスト)

 帝人フロンティアによれば、「顧客からの要請もあり、取引先に留まらず、自らより上流の関係者は全て調達先として把握する必要がある」という。

 調達先における「労働・人権・環境」への配慮を推進していく必要があるが、自社のみでの推進は限界があり、直接の取引先から上流に向かって調達チェーンをつなげる必要がある」と指摘する。

 

 

 それぞれの企業がそれぞれの特色を活かし、SDGsやサスティナビリティに取り組む。中には、ウォッシュといわれそうなまがいなものもあるといわれるようになっている。使う側が真贋を見分ける必要があるのかもしれないが、やはり企業側の努力によってトレーサビリティを向上させ改善していかなければならないのだろう。

 ついつい日本は大丈夫と思いがちだ。外国人技能実習生の人権は守られているのだろうか。経済産業省が人権デューデリジェンス法の制定を検討しているという。こうしたことも考慮されるのだろうか。

「新幹線再生アルミ」はどうなのだろうか。リサイクルばかりでなく、人権についても開示があるといいのかもしれない。